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プロフィール
コメント数 210
性別 男性
ホームページ http://mixi.jp/show_friend.pl?id=8512182
年齢 49歳
自己紹介 映画は娯楽である。笑ったり泣いたり学んだり、空想という鑑賞時間を過ごす「芸術作品」である。実際に映画づくりを体験していない人間に、映画批評が出来るとは思えない。プロの批評家でもなく映画を作った経験も無いのだから、作品のシナリオや背景など、基本設定に理屈っぽくケチをつけるようなナンセンスな行為はなるべく止めにしたい。映画好きのハシクレとして、作家が作った作品を、素直に楽しみ、感動できる姿勢を何よりも大事にしたいと思う。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12345678
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1.  アマデウス ディレクターズカット 《ネタバレ》 この映画の音楽は素晴らしい。オープニングの凄惨な絵の中で軽やかに始まる魔笛の序章、シーンごとの巧みな活かし方だけでなく、演奏そのものの質も個人的には大好きで、この映画以上に美しい「夜の女王」やフィガロの序曲を聴いたことがない。この映画の映像は素晴らしい。ひとつひとつの場面のまるで絵画のような美しさ、前半部分の華やかさとはまるで対照的な後半部分の寒々しい陰惨さが、没落していく孤独な天才のみじめな寂しさを際立たせる。……誰よりも一番惨めな思いだったのはサリエリ本人だっただろう。この彼の心情の描き方が実に見事。天才であるが故に世の中に受け入れられず、孤独であらねばならないアマデウスと、そんな彼に嫉妬する凡才。おとしめようとするたびに思い知らされる自分の無力さと、そんな彼に憧れていることを認めたくない彼の痛みが嫌というほど伝わってくる。……神の嘲笑に打ちのめされ、卑劣な手を使ってでも神の申し子を殺めようとした自分の罪を自覚している以上、彼は基本的に良心の人だっただろう。「汝らの罪を許そう」と皮肉げに笑う彼の心を理解できる人が居ただろうか。サリエリほどのストイックな努力もしていないけれど、神父と同じ「ただの凡才の一人」として、そんな彼にどうしても共感してしまうのだ。[地上波(字幕)] 9点(2008-02-17 22:39:13)

2.  硫黄島からの手紙 《ネタバレ》 この映画が、戦争映画として従来の映画と一線を画しているところは、徹底された戦争の客観視にあると思う。一方の悲惨や戦争犯罪を追いかけるのではなく、日本人が米兵に対して行うリンチ、米兵が日本人捕虜に対して行った処刑など戦時下の狂気の中で発生する残虐行為に加え、双方の立場の人間にも対等に、「愛する家族の存在」を描いている。……バロン西が捕虜の米兵の手紙を読んでいるところで思わず涙腺が緩んでしまった。「若造。お前はアメリカ人に会ったことがあるのか?」そりゃそうだ、戦時下で会ったこともない相手だからこそ敵軍として抽象的に憎めるのだ。相手にも自分達と同じ家族のある人間に過ぎないことをリアルに知ってしまったら、情も移ってしまうだろう。……下のレビューにも描かれていたように残念なのは、今までこんな映画を日本もハリウッドも撮る事ができなかったことだ。分っていながら誰もが踏み込むことのできなかった世界に、「父親たちの星条旗」に続いて見事に一歩を踏み出したクリント・イーストウッド監督に、心から敬意を表したい。……皮肉ではなく、この映画はまるで戦争映画撮影の教科書のようだ。物語はともかく、戦争映画を撮影するなら、この映画のような視点で撮影しなければならない。数年前に遊び半分で撮影されたとしか思えないような尻軽女のラズベリー戦争映画とは対極的だ(比較するのもイーストウッドに失礼だが)。今回、中国が国策からハリウッド撮影決定に成功した南京大虐殺の映画も、完成すれば目を覆わんばかりの歪んだ歴史認識が溢れていることだろう。芸術を国策に使い汚す人間には、イーストウッドの爪の垢でも煎じて飲めと言いたい。……たった一つ、どこの国にも立場を越えて共通していることは、これら先人達の累々たる犠牲の上に、自分達の享受している現代の豊かな生活があるという事実。でも栗林中将、常識であるハズのそんな事実を受け継がず、尊い歴史の犠牲となったあなた達への感謝の念すら忘れ去られていることを、他の国の映画に諭されなければならない現実があまりにも悲しいのです。[映画館(字幕)] 9点(2006-12-30 00:11:14)(良:1票)

3.  ピエロの赤い鼻 《ネタバレ》 戦争が来るまでは普通に大人となり、普通に酒を飲み、普通に女を愛する平凡な一生を送っていた男たち。捕われ泥まみれの穴の中、エゴむき出しで罵り合った彼らも、やがて次に生まれ変わるものに思いを巡らす。そんな絶望の状況の中でひとりの兵士が与えた「笑い」という一筋の光は強さとなり、やがて彼らを生還へと導く。希望を持てと言うのは容易いが、希望を産み出すには、それだけの「強さ」が必要だ。映画の冒頭に「笑いは最強の兵器」という言葉が出ていたように、笑いとはその人間の「強さ」そのものであるということを教えられる。笑いとは人間だけが持っている行為だが、戦争という人間らしさを拒否される状況の中で、この人間らしさの象徴である行為を忘れないからこそ希望が生まれる。銃を下ろし、赤鼻をつけて上官に逆らったあの兵士は、銃以上に強さを持った人間らしい男であった。激しい戦争シーンも飛び散る血飛沫もないが、それ以上に人の強さ、戦争の哀しさ、笑う行為の尊さを、一市民や一平氏という一個人の立場から美しく人間臭く描いた秀作であると思う。9点(2005-02-12 03:31:15)(良:1票)

4.  グッバイ、レーニン! 《ネタバレ》 登場する全ての人物が、みな温かさに溢れている。母を苦しませまいと必死の芝居を続ける主人公、それに自分の夢を重ねて手伝う友人、一生懸命に芝居を続ける近隣の人々。そして何よりも、母の愛。母は主人公からではなくララから壁の崩壊を知らされ、にもかかわらず映画は終始母を騙そうと演技を続ける息子の視点のまま、観ている観客は巻き込まれて主人公と一緒に芝居をし、淡々と最後まで進んでゆく。「素晴らしいわ」テレビの演説ではなく、一生懸命に自分に芝居をしている本人の姿を理解して微笑んだ母。彼の芝居は母への無上の愛のかたちであったことを、間違いなく母は理解していた。芝居であることを知っていたのを隠したまま死んでしまうことで、息子への愛に最大の形で報いた母の姿。それを最後まで知らない息子の姿が胸を打つ。最大の親孝行、そして最大の母の愛。なんて温かで、ユーモアに溢れた映画だろうか。9点(2004-05-09 03:25:13)

5.  イントゥ・ザ・ワイルド 《ネタバレ》 昔、「生きている意味が分からない」とベトナムに出征し、片足と手の指を失ったアメリカの若者が居たそうだが。彼にとっての幸福とは、純粋な「生きているという実感」だったのではないかと思う。……いかに裕福な家庭や才能に恵まれていても、嘘まみれの社会や偽善的な家族の中では生きていることを実感できない。彼は何にも邪魔されることなく、純粋に「幸せ=生きている実感」を感じたかったんじゃないか。だから、自分ただ一人の命を純粋に向き合える環境、つまり「アラスカの大自然の中」を目指したんだと思う。……幸せも、生きている実感も、結局、自分一人だけでは実感できない。最後にそう悟れた彼の一生は、皮肉だけれど、幸せで悔いはなかったのではないか。木版に刻まれた、彼の最後のメッセージのように。 「世界中のみんなが、幸せでありますように。僕の一生は、幸せだった」[映画館(字幕)] 8点(2008-10-19 23:39:16)

6.  鉄コン筋クリート AKIRAを観た時以来のインパクトがあった。スピーディーなテンポ、確かなデッサンに裏打ちされた独特の構図、その空間を飛び回る子供たち。クロ・シロの心象表現も素晴らしく、どこか哲学的な台詞も変にクサくなくシラケることもない。原作は未読だが、おそらく極めて忠実に世界観を再現しているのではないだろうか。‥‥‥シロやネズミが話す言葉の数々は、現代社会にも存在する者達そのままの代弁だ。ひとつひとつの言葉が格言のように重みがあって心に染みる。久しぶりに見応えのあるアニメーションだった。[DVD(邦画)] 8点(2007-07-24 00:59:14)

7.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 前を向いてマッチョ、右を向いてマッチョ、左を向いてマッチョ。2時間たっぷり暴れ回るマッチョな男達。ザラついたセピア色の油彩のような画面に、独特の濃淡で描いたこの映像は、なんという手法なのだろうか。裸の漢(おとこ)たちの闘争を描く舞台としては、誠に最適な手法だと思う。統率の取れた動き、舞踏の様な殺陣、騎士道や武士道とも異なる、東洋の繊細な美しさとは対照的な、無骨な肉体至上主義。‥‥‥もともと私は残虐シーンで飾り立てた映画は受け付けないタチだが、この映画は別だった。残虐の映像度をモノクロームの映像で軽減する手法は「シン・シティ」も同じだが、この映画は、全ての場面を映像と構図で美しく見せようとする作り手の熱意と意図が感じられる。これを実写そのままに見せていたら、それこそ観られたものではなかっただろう。この映像手法は、物語の多くを占める残虐な画面をすら芸術として魅せようとする、作り手の明確な意思表示、覚悟だったのかもしれない。ラストシーン、矢の中に横たわる男たちを俯瞰から撮影した場面は、まるで教会のステンドグラスのように見えた。‥‥‥ペルシャの王を中性的に描いたことで、この映画もまた随分バッシングを受けたようだが、そんな物語や歴史観など、作り手にとっては何と批評されようが関係なかったに違いない。描きたかったものは、躍動する肉体美と、全ての画面の魅力を倍増させる、この映画にはこの上なく適した映像美。そして、余計なモノを一切挟まないシンプルな物語。ただ作り手のこだわりだけに徹底された、良い映画だった。[映画館(字幕)] 8点(2007-06-04 00:49:05)(良:3票)

8.  ブラッド・ダイヤモンド 《ネタバレ》 物語の終盤、ショーウィンドウに飾られたダイヤモンドのネックレスの輝きが血に染まって見える。「白人がダイヤを欲しがるのは分かる。しかし、なぜ、アフリカ人同士が争わなければならないのだ?」たき火を見つめるソロモンが呟いた言葉が胸を突いた。‥‥‥ダイヤしかり、石油しかり、象牙しかり。先進国の都合によって、ただ愛する家族と穏やかに生きていくことだけを願っていた人々が引裂かれ、殺されていく。ラストの壇上に向かうソロモンを拍手で見ている人々や、それをエンターテインメントとして鑑賞している私は、そんなアフリカの悲惨な現実を受け止める資格があるだろうか。‥‥‥今までも数々のドキュメンタリーや映画で思い知らされてきたことだけど、所詮海の向こうの他人事と目を背けてしまう自分が嫌になる。そんな自分達に気付いても、何をしてやれる?その無力さに、ただただ虚しい気持ちになるだけだ。需要と人間の欲望ある限り、こんな悲惨は決して消えることはない、その厳しい現実。それでも、どんなキレイごとよりも、まずは行動。たとえ偽善でもイイから、まずは行動。できるだけのことは、やっていくしかないではないか。‥‥‥のっけから始まる血生臭い襲撃シーン、グイグイと画面に惹き付けられてしまい、テンポよく進む物語は2時間半の長丁場ながら観ている側を飽きさせない。この映画に至って、ようやくディカプリオは「タイタニック」の亡霊から脱する事ができたように思う。役柄が良かったのは勿論だが、無精髭を生やしたワイルドな演技はイイ味を出していた。[映画館(字幕)] 8点(2007-04-15 23:09:46)(良:1票)

9.  武士の一分 《ネタバレ》 現代版のクールな若者を演じることの多いキムタクのこと、時代劇の配役がどうなのか不安だったが、予想以上にハマり役で彼の確かな演技力が証明された気がした。「目が見えないと思って侮るな」と使いに追加の伝言を託すときの表情は、鬼気迫る凄みがあって素晴らしかったと思う。彼の自然な演じ方を、庄内弁の軽口に活かすあたりが大変上手い。剣道の経験があるから殺陣も変に美しくなく、実践的でサマになっている。現代風の役者を時代劇に起用するときに有りがちな、不自然な雰囲気がほとんど感じられなかったのが見事だった。……食い扶持を絶たれて飢えてしまうことになるかもしれないけれど、お咎めでお手打ちになるかもしれないけれど、目が見えないから果し合いしても勝てるとは思えないけれど、それでも譲れない、見得やプライドよりももっと深く、生命のやりとりに及ぶまで絶対に譲れない一線、それが「一分」。言うにはカッコイイけど、自分にあるかと言われれば、やっぱり、無いな。……倒れた病に伏した新之丞を見舞う、桃井かおり演じる以寧が家に上がりこむ時、その足袋の裏が生活に汚れている。そんな山田洋次監督独特のリアルな生活模様の演出に加え、奥方の壇れいや、徳平演じた笹野高史の演技も、キムタクに負けずに素晴らしいと思う。脇を固めた俳優陣と、主演のキムタクの息が噛み合った良い邦画だった。[映画館(邦画)] 8点(2007-01-03 00:26:28)

10.  ホテル・ルワンダ 《ネタバレ》 民族同士の争いには無縁の生活を送っている島国に育った私たちには、下のレビューにもあるように「『怖いね』と言ってディナーを続けるだけ」の人間でしかない。単なる集団ヒステリーでは片付けられない、凄まじい憎しみがあるのだろう。理想を説いて聞かせるだけの薄っぺらで能天気な平和論など、厳しい現実の前ではかき消されてしまう。……イラクに派遣されている米軍の目的が世界平和でなく石油の利権にあるように、大国が軍を駐在させているのは決して「守ってあげるため」ではなく、所詮利益目的でしかないのが現実だろう。……平和を語る理想より、手段はどうあれ救われるだけの現実にすがりつきたいのに、賄賂も、人脈も無い、助けも来ない。そんな極限状況の中で家族や人々をよく守りきったものだと思う。臆病者の私には決して真似できそうにないその勇気に敬意を表したい。[ビデオ(字幕)] 8点(2007-01-01 16:52:40)

11.  007/カジノ・ロワイヤル(2006) 《ネタバレ》 最近の007シリーズは、物語が始まって女が登場するや「もうエッチかよ!」というような脈絡の無いベッドインが嫌いだった(いくらセクシーな優男なのがボンドのキャラだといっても)……しかし本作のボンドは、色男でありながら骨太で硬派でマッチョで一本ビシッと筋が通っており、男から見てもカッコいい。007シリーズを全て観ているわけではないが、ボンドガールが裏切り者というのは他のシリーズにあったのだろうか?スパイのプロ意識から職務を遂行し、女性を愛し、やがてまた独りに戻っていく。本作だけ観ても、ひとつの作品として、十二分に楽しめる映画に仕上がっていると思う。カジノに掛けたオープニングのアニメのセンスの良さ、前半のアクション、後半の心理戦と物語の積み上げもひとつひとつが丁寧だ。……極端に現実離れした道具もなく、観ていて痛いほどのアクションの連続、手に汗握るポーカーゲームで追い詰められ、一瞬我を忘れてナイフを握る様子など、何よりボンドが非常に人間くさい。これが物語をとてもリアルに見せている。初代ボンドに匹敵するとの高い評価も頷ける、スパイ映画の原点のような映画だった。[映画館(字幕)] 8点(2007-01-01 15:17:14)

12.  父親たちの星条旗 当たり前のことではあるけれど、戦争は「全ての国民同士」ではなく「国と国のご都合同士」がやるものなんだな、と思える作品でった。2部作の「硫黄島からの手紙」とは異なるアメリカ側からの視点だが、徹底的な戦争の客観視という姿勢は同じく一貫していた。国のために勝負の駒となるしかない兵隊の立場から、戦争の悲しさをよくもここまで描ききったと思う。…国のため、故郷のために戦い、力を尽くし、傷ついて帰った彼らを待っていたのは、戦争の現場を知らない役人や民衆からのご都合主義。彼らのやるせない気持ちが痛いほど伝わってくる。純粋に故郷を想って戦い傷つき死んでいった仲間達の、自分たちだけがその真実を伝えられるのに、国の都合の前でそれも叶えられない現実が悲しい。…国の為に尽くした人への畏敬の念を疎んじる。この映画と全く同じことが、現在の日本にはまだ続いている気がする。言葉だけの幼稚な平和主義や教育の前に尊い犠牲は封殺され、この映画を観た存命の旧日本軍帰還兵の方々は、何を思うだろうか。戦争の悲しさと一緒にイーストウッドが言いたかったのは、現代の社会の為に歴史の犠牲となった人々への畏敬の念、そんな気がしてならないのだ。[映画館(字幕)] 8点(2007-01-01 01:22:02)

13.  アンジェラ(2005) 自分自身を肯定することで、主人公が生きる希望を見出していくまでの展開が、ただただ素晴らしい。もしも自分にフランス語が分かったら良かったのに。日本語に訳されてはいるが、そう思わせるほど言葉の運びがうまい。人の弱さの描写がうまい。相手が天使である事実を知らされ、「なぜ、俺だ?」と浮かべる涙。鏡を前に「愛している」とつぶやく時の涙。全てのシーンの涙に共感できる。それに併せて、鏡の中や空の上など、主人公の心理描写に合わせて繊細に撮られた、古典的な匂いのするカメラアングルも秀逸。こんな時代に、こんな映画にお目にかかれるとは思っていなかった。・・・・・・ああそれなのに、なぜベッソン、あなたは余計な興醒め演出を好むのか?なぜ繊細な高級料理に蜂蜜をぶちまけるのだ?翼を描く必要がどこにある?超能力を描く必要がどこにある?主人公の素晴らしい台詞、表情だけで、ただシンプルにそれだけで、彼女は素晴らしい天使なのに!モノクロームの繊細な心の世界から一転、最後の最後に余計でガサツな演出が入ってしまい、それだけが悔しくて悔しくてならない。それがなかったら、近年にない完璧な映画なのに!・・・・・・エンターテインメントに走った(それは別に悪いことじゃないが)リュック・ベッソンには、もうこんなレオン・二キータ時代の映画は撮れないのかと思っていた。個人的に大変惜しまれる部分はあったが、次の作品に大きな期待が膨らむ一作だった。[映画館(字幕)] 8点(2006-05-15 08:43:38)(良:1票)

14.  戦場のアリア 戦争の悲惨をドンパチ画面だけで説明しようにも、所詮戦争を体験していない私たちには実感として分かるはずもない。ただ悲惨を観念だけで捕らえるだけだ。この映画では、戦争の悲惨を「血や痛み」というマイナス面ではなく、人々の「交流」というプラス面を通して語られているから、大変現実味があって感情移入できた。・・・・・・冒頭の突撃の前、司令室の片隅でただ一人、恐怖のプレッシャーに嘔吐する司令官の姿。目的が公的な死であれ、私的な死であれ、死を目前にした人間の心境なんてそんなものだろう。国としての義務から戦争には参加するけど、誰だって出来ることなら殺し合いなんてしたくない。そんな極限のプレッシャーの中、クリスマスイブという「共通の観念」が入り込んだ時、そこに歩み寄ることでお互いに救いを見出そうとした心境は、とてもよく分かる。どこか滑稽で心温まる場面に光が当たっているから、「戦争の悲惨」がその影で際立っていて心に染みた。・・・・・・敵同士とはいえ、一度お互いが「ホンネでは殺し合いを望んでいない」ことを確認しあった時、情が移ってしまうのは当たり前だ。相手を敵として憎んでいるのは、国の上層部やこれから出征する兵士など、戦う相手の顔を見たこともない人間だけ。戦争なんてものは、国レベルの損得でしか勘定できないことであるのを思う。・・・・・・悲惨な状況の中で、唯一の共通観念であり正義であるはずの宗教さえ、戦争のための道具にしかなりえない。何かを諦めたようにロザリオを外し、去っていったあのバッグパイプ吹きの優しい神父さんの行方が気になって仕方がなかった。[映画館(吹替)] 8点(2006-05-01 16:08:56)(良:1票)

15.  SPIRIT スピリット(2006) 「武」とは「戈を止める」と書く。よく武道を学ぶにあたり「礼に始まって礼に終わる」だとか「本当の敵は自分自身」とか、実力よりも優先した言葉が説かれるが、この映画は本当の意味での武道というものを、ベスト・キッド同様に極めて的確に描いている。まず第一に強くなければ意味が無く、鍛錬を積み「他人の戈を止める」力を極める上で「自らの戈を止める(抑制しコントロールする)」力も養われていく。その強さの探求を通じて、それを基軸に豊かな人生を築いて行くという「道」という人生観。「全ての武道に優劣はなく、使う人間の実力による。互いに技を競い、真の敵である自分自身と向き合う」強さを極め復讐の連鎖に陥り、その誤った末路を見た霍元甲だからこそ、彼の説くひとつひとつの言葉に重みが感じられる。‥‥‥ラストサムライにも描かれていたが、西洋の物質主義に染まる前に、西洋文明にはないこの精神(スピリット)主義を、日本を含むアジアは教育に重んじ、もっと誇るべきだった。この映画の「SPIRIT」というタイトルはまさに的を得ている。単なるアクションエンターテインメントというだけではなく、世の中が物質的に飽和し求める行き場を失った欲望がドス黒く噴出した事件が起こっている今日の日本に、この映画は「物質を求めるのではなく、自分という人間の肉体的・精神的な完成を求める生き方」を痛烈に示している気がする。私個人も格闘技は細々続けて12年、無論実力は伝説の達人霍元甲や黄飛鴻、李書文ら先人達のツメのアカにも及ぶはずもないが、武道の末席に学ぶハシクレとして、この映画の発するメッセージには共感でき、諭されるものが多かった。‥‥‥中村獅童の身体は薄いものの、動きは思ったより素人臭くなかったのが嬉しかった。日本人の立ち居振る舞いの品格という点で、歌舞伎役者である彼のキャスティングは決して間違っていないと思う。ジェット・リーのアクションの冴えは相変わらず、この先もスクリーンで観ることができるのを期待したい。[映画館(字幕)] 8点(2006-03-19 12:44:24)(良:5票)

16.  THE 有頂天ホテル 多くの登場人物の中で副支配人としてプロの義務を果たしていた新藤だからこそ、自分を偽ったことに落胆する彼にかけられた「自分らしくて、何故いけないの?」という言葉が重く感られる。「自分らしく生きる」こととは「義務を果たした上に、自分の信条に正直に生きる」ことであり、「身勝手に生きる」ことや「無理をしないで生きる」こととは違う。生きる舞台が表でも裏方でも、自分らしく生きるためには、政治家であれホテルマンであれミュージシャンであれ、自分に出来る義務を果たした上に、シッカリとした目標が要る。政治家としての義務を果たせずに逃げ出した武藤田や、夫婦としての義務をほったらかして不倫相手と結婚する心づもりの坂東には共感出来ないし、それをもっともらしく後押ししている竹本ハナにも納得出来なかった。‥‥‥しかしそれでも人の生き方なんて十人十色。政治の世界に生きる理由を見つけだした武藤田は、これから政治家としての義務を果たしていくだろうし、ミュージシャンを目指す只野は、その目標のためにベルボーイとしての義務を果たしていくだろう。シッカリとした目標=生きる理由さえあれば、果たさなければいけない義務はそこから生まれてくるもの。そう考えれば、新しい年を生きる理由と共に迎えた彼ら全てを肯定し、幸せを祈る気持ちも生まれてくる。大晦日、誰もが来年こそはと自らの生き方を思う格好の機会「年の瀬」に、イチモツを抱えた多種多様な登場人物が絡み合う実に楽しい映画だった。‥‥‥これだけの強烈なキャラクターを揃えながら、複雑な人間関係をよくも見事にまとめあげたと思う。ラストシーン、You演じる桜チェリーの歌はコミカルなリズムにあの独特の声質がマッチしており、いっそ彼女の持ち歌にしてもいい気がする。篠原涼子演じるコールガールのブリッ子を心の底で可愛いと思ってしまった自分にオジサンを感じ、最後の歌声に自然に身体が揺れ、自分もホテルの宿泊人になっていたような、観た後はとても爽やかで楽しい気分になった。[映画館(邦画)] 8点(2006-03-05 02:46:34)

17.  ジャーヘッド 《ネタバレ》 国の大義名分は分かっていても、戦争に行くということは人殺しをしに行くに他ならず、行ったはいいが実際は銃撃戦や白兵戦をするような次元の戦争ではなく、「人殺し」という目的を達成できずに欲求不満ばかりがつのっていく。そして武器を手に戦場で戦う海兵隊も、国へ帰れば良き父親であり、ビジネスマンであり、スーパーの店員であり、ただの人間にすぎない。カラッポの頭、ジャーヘッドで軍に統率され、狂気に足を踏み入れる兵士に誰もがなり得ると言う現実が、手抜きをすることなく描かれていて面白かった。‥‥‥国が世界の平和だ、大量破壊兵器だと薄っぺらな大義を振りかざしても、国の大義名分なんか、末端の兵隊には関係ない。ベトナムでもどこでも、生き死にの究極を争う現場では、兵隊は「殺したいから殺す」。そんな獣性を発揮しなければ生き残れないだろうし、そんな獣性を持っている自分自身に気付いて、後になって苦悩する。ベトナムからの帰還兵の人々も、きっと同じ悩みを抱えたことだろう。戦場の中では誰しもが獣になるが、そんな獣になった自分を認めたくはないものだ。‥‥‥ハデな殺戮シーンや、悲惨さを訴えるために陳腐な凄惨シーンを描いたりすることなく、近代戦の中を人間の視点から、妥協せずに描き抜かれているのが面白い。戦地に赴く訓練の過程で、画面を見ながら不覚にもワクワクしてしまったのは、私自身の中にもそんな獣性が存在するからだろう。[映画館(字幕)] 8点(2006-02-13 12:46:47)

18.  ミュンヘン 「11人殺せば、本当に終わるのか?!」最初にはターゲットを前に、殺害することにためらいを見せていたメンバーも、やがて自らの信条を見失い冷徹な殺し屋になってゆく。「本人以外は殺さない」としていた最初の信条も、相手からのオランダ女による復讐によって崩れ去る。やはて復讐は復讐をよび、殺し合いの連鎖はとまることなく、最初は笑い話だった「クローゼットで寝る」話も現実となる。相手に復讐する為の爆弾作りと、相手からの復讐におびえるベッドでの爆弾探しのシーンが交互に繰り返される皮肉。止めることのできない狂気の連鎖、殺戮の螺旋。‥‥‥信じるべき国をもたず、家族と金こそが信条の情報屋。国こそが己の信条であったはずの主人公達。ユダヤ民族でありながらも国としての在り方から復讐を貫く政府。国土を持つ民族、持たない民族。復讐する相手を悪と捉えず、これら全ての登場人物の家族や仲間や日常の生活を描き、その誰しもを一人の人間としてとらえている姿勢が印象的だ。‥‥‥復讐は民族の為なのか、政府の為なのか、己の信条の為なのか、分からないままやがて「情報として売られる」立場になる主人公達。その疑問を抱えたまま最後まで生き残った主人公が、ユダヤ民族としての義務から招待した食事も、国としての立場から相手は拒否した。‥‥‥それぞれの立場と信条で争う抗争に、正義も悪もありはしない。国や民族や家族、それぞれに有る守るべき立場や信条。そしてその矛盾の上に果てしなく続く復讐。ここがシンドラーのリストのような偉人伝的な戦争記とは一線を画する。これら全てを否定も肯定も逃げも妥協もせず、真っ向から描き切った勇気に価値がある作品だったと思う。[映画館(字幕)] 8点(2006-02-07 13:02:33)(良:3票)

19.  ALWAYS 三丁目の夕日 《ネタバレ》 銀玉鉄砲の駄菓子屋、湯たんぽ、ポンプ式の井戸、ガラス障子の軒先、ゴム仕掛けのプロペラ飛行機。私の生まれた時代には当然集団就職なんか無く、この映画に登場するものの最後の断片が残っているだけだったけど、同世代の人々にを感動させるだけのディティールの凝り方だけでもかなり印象深い。ご近所付き合いに象徴される人と人との繋がりが強く、幸せに至る過程こそが幸せなんだということも気付かずに、便利で豊かになっていく生活を日々喜んでいた時代。私もチューブの中を車が飛んでいる21世紀を思い描いていたっけ。‥‥‥私もそれなりに毎日一生懸命働いてるつもりだけど、豊かな現代の飽和しきった閉塞感を思えば、この映画の中の人々の方がよほど楽しく生きているように見えてしまう。若輩で豊かな時代しか知らない自分だし、贅沢を必ずしも悪いことだとは思わないけど、本当に大切だったのは、モノの豊かさの裏にある「ゆとり」という心の持ち方だったんじゃないか。「心のゆとり」を超えた贅沢は、単なる浪費になってしまう。心に平安をもたらさず、更なる浪費を求めるものなのに。‥‥‥堤真一、吉岡秀隆をはじめ、この映画のキャスティングは満点だ。お涙頂戴な筋書きも、要所に笑いを盛り込んでホノボノとした物語に仕上げてあるのが、素直にとてもいいなと思えた。完璧なハッピーエンドを期待する私は歌い子のヒロミが戻ってきてくれることを期待したけど、いいじゃないか、みんなプラスの方向へ力強く歩んで行く様な、そんなエンディングだった。[映画館(字幕)] 8点(2005-11-25 13:00:19)(良:1票)

20.  ヒトラー 最期の12日間 ドイツではタブーとされているヒトラーを描いたことで、賛否両論あったそうだが、評判ほどヒトラーの「人間性」に重きを置いて描かれているようには思えなかった。史上最も悪名高い男の「カリスマと狂気と苦悩」が描かれているかと思ったが、自尊心から現実を受け入れられず部下を罵る彼の姿は、単なるヒステリーな夢想家にすぎなかった。しかしそれこそが一人の人間として描いた場合の彼の実像だったのかもしれない。「アレキサンダー」を観た時のように、倒産する会社を観ているような感覚、カリスマの権力者を中心に集まった集団が滅び行くさまをまざまざと見せつけられた感じがした。‥‥‥鍵十字のナチ自体を忌み嫌い、それに触れることすらタブー視するのが今のドイツなのかもしれないが、この映画はヒトラーを描いたことが問題にされているのではないように思う。ヒトラー=悪という大原則のに思考停止するのではなく、ヒトラー=ナチスという団体の中に居た先祖の人々の人間模様を真っ正面から描き切ったことが問題であり、評価に値するのではないか。ナチスの犯した罪は大きい。しかしその中にも、軍人としての立場を超えて奔走した医師のように市民を守ろうとした真の愛国者も居れば、歪んだ民族主義を抱きユダヤ人を虐殺した者も居たことだろう。その当時の様々な状況を見据え、現実をとらえて考えることが大事なのだ。これは同じ敗戦国であり、戦争犯罪という「言葉」の前に思考停止している我々日本人にも共通するべき点なのではないだろうか。[映画館(字幕)] 8点(2005-11-17 13:47:37)(良:3票)

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