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1. 灰とダイヤモンド
第二次大戦勃発直後、そもそもポーランドはドイツとソ連によって半分ずつ
分割占領されるのです。ソ連はヒトラーと一緒にポーランドの東半分を軍事
占領したのです。
それ自体ポーランド民衆への裏切りです。
ソ連の意に染まない勢力は文字通り抹殺されました。
(ポーランド軍将校の大量虐殺がカチンの森事件です。)
大戦終了間際、ドイツ軍がまだポーランドの首都ワルシャワを占領していた
のですが、ソ連軍が段々迫っていました。イギリスにあった亡命政府は、
このままソ連軍にポーランドをドイツ軍から解放されたら、ポーランドはソ連の
軍事支配下に入ると正しくも考えました。
その為、ソ連軍にワルシャワを解放される前に自力で武装蜂起をワルシャワ
民衆に訴えました。ワルシャワの民衆は武器を持ち、立ち上がりました。
しかし、圧倒的なドイツ軍の軍事力の前に壊滅的敗北を蒙りました。
一部の人々は地下水道に逃げます。その出口では鉄の柵があり、出口なし
でした。その川の向こう側の風景を映し出す....
...これが「地下水道」のラストシーンです。
その川の対岸にはソ連軍が実はもう到着していたのです。
ソ連軍はワルシャワの民衆が虐殺されるのを待っていたのです。
米英仏の帝国主義国側の影響力のあるワルシャワ蜂起が成功すれば
戦後のポーランドで彼らに政治的主導権をとられてしまうと正しくも考え
たのです。
米英仏とソ連の政治的対立...
そのためにワルシャワ民衆は、米英仏から政治的に利用され、ソ連から
見殺しにされたのです。
その地下水道を這い回った残党の一人が、「灰とダイアモンド」の主人公
マチェックです。彼は戦後のポーランド共産党幹部を暗殺します。
10点(2003-11-01 05:15:24)《改行有》
2. GO(2001・行定勲監督作品)
《ネタバレ》 「GO」は、青春映画ですね。
とってもテンポの良い、ハイ・スピード活劇という感じですね。
冒頭のスーパー・グレイト・チキン・レースからしてノリが良いです。
しかし、この作品の底流にある、ずっしり重いテーマは
『在日』の問題です。
いや、それが必ずしも第一のテーマでなくともよいとは思うの
ですが、私にとっては第一のテーマです。
私にとっては、それなしには、この作品に意義を感じ取れ
ない基底的モメントです。
『在日』と書くことにすら、その背後には色々な意味、背景
が横たわっている、そういうものとして書くということ、
そんなこともほとんど考えたこともありませんでした。
ラスト近くの校庭でのシーンで、「おまえら、どうしてなんの
疑問もなく俺のことを<在日>だなんて呼びやがるんだ?」
というせりふには衝撃を受けました。
今でもその衝撃は私に内在して、私を衝き動かします。
私にとって、『在日』の問題は、近くて、遠い問題でした。
同じ日本に存在しているのに、
『在日』の方の多くの小説や評論があることは知ってはいました。
しかし、私にとって、それらは、何か「敷居」が高く感じられ
ました。
その為、一切読んだこともありませんでした。
『在日』の方たちの、ごく普通の日常生活とか、日常的にどんな
生活を営み、どんなことを悩み、考えているのか、そういう
身近な次元で、『在日』の方たちの内面世界を垣間見ることができたという感じです。
民族的な差別に対しては、屁とも思わない、強靭な主人公。
しかし、恋した彼女に拒絶されたことが、初めて心底こたえた
んですね。
『在日』の方にとって、そういうことこそが、民族的な壁なんですね。
そういうことを学べたということが、私にとって一番大きな
意義でした。
民族学校内での実際の様子を、その一断片でも垣間見れました。
また、北朝鮮や朝鮮総連を必ずしも全面的には、最早信頼し
てはいないこと。
それでもやはり、ある人は、民族団体の側で生きて
いくという考え方。
また、ある人は、それを超えるものを探し求めるという生き方、
北朝鮮による拉致事件、核開発、朝鮮総連への批判と幻滅、
とっても難しい、苦しい時期だと思います。
それでも、生きていく、その基本的な方向性、基底的なことを、
この「GO」から学べたような気がします。
9点(2003-11-01 05:41:33)(良:2票) 《改行有》
3. コーカサスの虜
《ネタバレ》 トルストイの同名小説をチェチェン戦争に置き換えた作品。
原作同様、ロシア兵がコーカサスで捕虜となる。
息子がロシア軍に捕虜となっている老人は、ロシア兵捕虜二人を自宅で監視する。
息子と捕虜交換を行う為だ。しかし、捕虜交換はうまくいかず、ロシアの母親に手紙を書く。
母親はチェチェンまでやって来る。しかし、老人の息子は殺されてしまう。
従って、ロシア人捕虜も当然報復として殺されるはずというストーリーだ。
主人公が木の細工を娘に作ってやり、心が打ち解け始める。
時計を直す、娘が主人公を逃がす所。
一度は逃亡に成功するがまた捕まるという設定も同じだ。
原作にはないが、老人の娘との淡い恋も描かれている。
プーシキンの同名詩も同様の設定になっている。
映画「チェチェン・ウォー」でもロシア人捕虜という設定だ。
どうもロシアの伝統なのだろうか?
勿論、戦争なので人も次々と死ぬのだが、全編を通して、どこか牧歌的な雰囲気が漂っている。
96年の第一次チェチェン戦争後に創られた映画だからなのだろう。
第一次チェチェン戦争のある時期では、そういう牧歌的な要素も残っていたのかもしれない。
しかし、第二次チェチェン戦争は、そんな牧歌的な要素などどこにもない。
凄惨で陰惨な掃討作戦が繰り広げられている。
文字通りチェチェン民族絶滅の危機に瀕している。
撮影は、チェチェンで行いたかったそうだが、不可能なので、隣国ダゲスタン
の山岳地帯で行われた。
ハッサン・バイエフの「誓い」に出てくる山腹にへばり付くように散在する集落。
ラストで、老人は、主人公を銃で撃つ為に、人里離れた山に連れて行く。
老人は主人公を撃たなかった。
ロシア軍の攻撃ヘリ4機が、主人公が逃れてきた村への攻撃に向かうようだ。
「止めろ!」主人公は叫ぶが、そんな声は届かないかのように、ヘリは村への攻撃に向かうというラスト・シーンだ。
老人は、主人公を殺すべきかどうか最後に撃つまで迷ったのではないだろうか。
主人公の母親と直接会い、話をしている。
母親は教師で、老人の息子と同じ職業だと話しても、
「だから何だ。敵同士だ」と素っ気なく答えている。
そう言いながらも、親の愛と親の愛という点では同じだと認め合ったのかもしれない。
しかし、<個々人の想い>というレベルと、<政治・戦争>というレベルとは、
どうも噛み合わないようだ。
7点(2004-11-01 02:26:48)(良:1票) 《改行有》
4. クロムウェル
《ネタバレ》 斬首されるチャールズ1世役は、アレック・ギネスでした。
STAR WARS の時よりも少し若かったですね。
映画を観た後、「イギリス史」(山川出版)の当該箇所を
読んでみました。
清教徒革命(ピューリタン革命)は、中学の教科書では市民
革命として、教えられるんですが、まあ確かに市民革命では
あるんですが、フランス革命のような典型的なブルジョア革命
とは言えないモメントもありますね。
つまり、国王側=封建勢力 対 議会側=ブルジョアジー
とは、そう単純にはきれいに分かれてはいないということです。
ジェントリー階層=地主階層のうち、産業ブルジョアジーを
も兼ねていた層は、比較的多く議会側に加担し、議会側とは
いっても貴族も多く参加していました。
つまり、基本的には、封建勢力対ブルジョアジーなんですが、
同じ階級間での利害対立で、ブルジョアジーや貴族も双方に参加
していました。あと、地縁・血縁でのしがらみも大きかった
ようです。
最も驚いたことは、クロムウェルはむしろ中間派で、つまり、
<封建勢力><ブルジョアジー><より低い階層:都市労働者や
商工業者やその子弟、都市浮浪者>という基本的には、3つの
階級間対立が基本的は対立モメントとなっています。
クロムウェルの議会軍の中には、何と200を越えるセクト
が存在していました。クロムウェルは言わば、それとの同盟
関係にあったというべきのようです。
特に、レヴェラーズなどは、ほぼ男性普通選挙を要求して
いました。クロムウェルはこれを激しく弾圧します。
他には、Diggers と呼ばれる、開墾した土地を共有しようと
いう素朴な社会主義・共産主義のグループなど、何と200以上
のセクトの合同軍だった訳ですね。
例えば、日本の室町期の激動期特有の混乱と混乱ゆえのさま
ざまなものが表に出てこようとする、そういう歴史のダイナミ
ズムを感じます。
17世紀に於いて、早くもブルジョアジー=資本主義を超え
出るものが顔を現し始めたことも、一つの歴史的事実ですね。
あと、クロムウェルは、アイルランドを壊滅的に侵略し、
部下にその土地を与えるなど、アイルランド人民にとって歴史
上最悪の残虐行為をはたらきました。
明治維新後の日本が朝鮮などを侵略していくことを彷彿と
させますね。
5点(2003-11-01 23:16:38)《改行有》
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