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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順123
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1.  アバター(2009) 《ネタバレ》 IMAX3Dにて鑑賞(名古屋109Cinemas)。料金2200円也。はっきり言って安い。映画ファンはこの歴史的な映画を観るために今すぐ都心へ向かい、お祭りに参加しよう! これは少なくとも、時代がスーファミからプレステに移行したのと同程度の革命である。具体的にはついこないだ見た『2012』のCG映像を速攻陳腐化するだけの威力はある。つまりこれからどんどこ3D映画が作られていき、かつ来年から3D対応映像機器がばんばん売られはじめるとして、5年後、いや3年後に『2012』見たらなんてちゃちな映画だと思うはずだ。人間とはそういうものだ。つーことは少なくとも、これまで作られた『2012』とかスター・ウォーズみたいな映画に限って言えばあと数年でその価値をなくすというか、古い次元のこととしか語られなくなるっつーことだ。こりゃえらいこっちゃ踊りを踊らずしてなんとする。 予告編でまずシンデレラみたいな映画の3D映像が流れ、その見事な飛び出し具合に思わず声が出るが、まるで飛び出す絵本みたいな階層を成した3Dでなんだこりゃとも思う。でも本編はぜんぜん違った。キャメロンがこの映画のどんな部分に腐心したか、この比較からちょっとわかった。 本編でまず気になったのは字幕。なんか手前にありすぎ。手元のメモを読むみたいな目の動きが必要で、当然映像に対する集中は削がれる。たまに字幕が横に出たが、今度は(おそらく片目の視野にしか入らないせいで)2重に見えたりする。ただ後半になるにつれ気にならなくなっていったので、ひょっとして慣れるものなのかもしれない。 映像については、自分で体験してほしいと思うのであえて文章にしない。ちなみに私はド近眼かつ初期老眼なので遠近感については心配したが、字幕以外ほぼ問題なかった。もっともキャメロン自身かなり老眼が進んでいるはずなので当然かもしれないが。 物語は巷間語られているとおりである。もっともこの映画の持つ意義を考えれば、物語についてはごく原初的かつエモーショナルなものでなければならなかったはずで、素直に感動しておくのが態度として正しいと感じる。 ああもっと書きたいのに書ききれない。つーか肝心なことを書いてない。とにかくわしはイクランの群れに分け入るという体験ができただけで満足じゃ。昔『地球の長い午後』や『宝石泥棒』を読んでわくわく想像した大地にまさかじかに立つことができるなんて、えれー時代になったもんだ。[映画館(字幕)] 10点(2009-12-29 15:50:34)《改行有》

2.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 途中までは満点をつける気などさらさらなかった。 ありきたりの父&息子の成長譚に似すぎていてちと痛いとか、老人の孤独と死にまつわる諸々など個人的に映画館では見たくもないとか、カットのつなぎに性急さがちらほら見られ、にもかかわらず序盤の事件が起きない退屈さを隠蔽しきれていないとか、だいたいアメリカの片田舎でならひょっとしてあるかもしれないギャング話に、なんで日本人である私がわざわざあっちの小市民のふりして感情移入してやらにゃあならんのか、などなど。むろん間違いのない映像の質の高さに安心して身を任せてはいたのだが、そうした小文句が脳内を駆けめぐっていたのだった。 しかしあの、よくぞここまでと書くしかない娘の悲惨な姿が映し出されてからはもう、映像世界に引きずり込まれてどうしようもない。首根っこをつかまれて無理矢理という感じであり、しかも最期を遂げるシーンがあまりにも想像ベタすぎてかえって意外というか、ど真ん中すぎて茫然見逃しというか、こんなのありかという混乱の収まらぬうちにシーンは葬式会場へと移り棺を眼前にしてまるで本当の肉親が死んだかの如き気分をありありと味わい、感動して腰を抜かしていたのであった。あんた、そりゃないよ爺さん。このわけのわからない涙はいったい何なんだベイビー。 俳優イーストウッドは死んだ。映画の主人公でしかなしえない死に方で最後に死んでみせたのだ。そうしてわれわれに、現実と区別の付かぬ混乱の中で悲嘆と嫉妬と羨望の入り交じった涙を流させ、そういう死に方がありうるのだということを示し、スターとしての義務を果たしたのである。 [映画館(字幕)] 10点(2009-04-28 21:33:03)《改行有》

3.  チェンジリング(2008) 《ネタバレ》 いやー危うくこのすばらしい映画を見逃すところだった。こりゃ今年のベストワン候補だな。映画館でひさしぶりに嗚咽を聞いた。すげー映画。 実の子が神隠しにあい、しかも警察から赤の他人を子供だといって無理矢理押しつけられるという、アメリカ版おしん(おばん)の如く苛められる主人公役を、てっきり色物な人だとばかり思っていたアンジェリーナ・ジョリーが思いきり好演技。見つかったの報せに泣きじゃくるシーンは大竹しのぶかと思ったが、職場では凛とし、裁判所ではか弱く、めりはりがとてもよい。そんなジョリーを苛める警部役もこちらが本当に殺意を覚えるほどの名演で、おかげで後半いかにもアメリカらしいやり方で一気に汚名を払拭していくシーンでは、すさまじいほどのカタルシスを満喫できる。事実にしたがったとはいえ、ありきたりのハッピーエンドじゃないところもいいし。 んで、5年後に見つかった子供が、なぜ今になって名乗り出てきたのか、その理由がまた泣かせる。「母と子の絆」なんぞというテーマをここまで堂々と貫き通せる監督が現在他にいるだろうか。まさかここまで巨匠になっちまうとはなあ。 本当にいいので、未見の方はまだ映画館でやってるうちにぜひ駆けつけをば。某黄色いバッジの映画なんて全然見なくていいから。 [映画館(字幕)] 10点(2009-03-30 01:37:32)(良:2票) 《改行有》

4.  第9地区 《ネタバレ》 大傑作である。マイナス1点とした理由は前半と後半が分裂しすぎて後味がバラけたのが明白であることのみ。ここまでされては、まいったと言わざるを得ない。 【以下激ネタバレかつ長文注意】 かつて映画で見たことのあるような形をしたやたらでかい宇宙船が、今いる市街の上にぽっこりと浮かんでいる滑稽さ。さらにヒトより頭一つもでかく、ジャンプ力や膂力にもすぐれ、かつ文明や科学力もはるかに人類より進んでいるはずの宇宙人たちをただの野蛮な野良エビ扱いし、上から目線で特別区に住まわせるという設定のありえなさ。それについて弁明をはさまぬどころか、ゴミ漁りに人との諍いといった規準の宇宙人像とはかけ離れた姿をたたみかけてくる映像。ここまでやられれば、観客はこの映画は冗談で作られているのだということに気付き、苦笑せずにいられないだろう。人と変わらぬスラム街の有り様の中、強制立ち退きのためエビのサインを求め歩く主人公の小役人ぶり、さらにはキャットフードにゲロに立ち小便とギャグ連発。ただここで勢いあまったか、エビの卵を引っこ抜き中絶だと嘲笑しかつ焼却処分する(しかもパチンパチンという音付きで)という、黒すぎるギャグを映し出してしまったことが後半の展開と激しく矛盾することとなり、すっきりした後味とはならなかった遠因になったわけだが、まー向こうの人は神経が太いからなんとも思っていないのかもしれん。 宇宙船はなぜニューヨークでもシカゴでもなくヨハネスブルクに降りたのか。その理由は明白だ。したがってあちらの観客は、こんな馬鹿げた映画はないと大笑いしながら見るんだろうけれども、と同時に、作者がこのエビに見立てているやつらというのはこんなにも野卑な、異星人並みの連中なんだろうかという不安をそっと感じ、背筋を凍らせる、そういう仕掛けになっている。 (続きは私のブログでどうぞ。ただしちょっと書きすぎてますので、未見の方は絶対読まないでください) [映画館(字幕)] 9点(2010-04-17 22:10:36)《改行有》

5.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 正直私は『キル・ビル』で辟易したクチなので、まさかこんなに面白いとは思わず当惑している。こりゃー最高傑作と自賛するだけのことはある。たとえ一瞬でも馬鹿にしてごめん、謝るぜ。 【以下多数バレ】 いったいどういう風の吹き回しでこんなにタランティーノらしくない映画を撮ってしまったのか。いやむろん第1章や第4章での長々とした無駄しゃべりはレザボア以上の面白さだし、頭の皮剥ぎやらバットによる撲殺やらグロとギャグを混同した悪趣味ぶりも相変わらずなのだが、にもかかわらずこの映画はらしくない。むろん茶化すことが憚られるテーマであることはわかっちゃいるが、それにしてもシリアスすぎる。ユダヤ人を匿った親父は床を指差しながら涙を流すし、大佐の質問攻めから解放された女館主は一転して情動失禁するし、映写室で若い二人が撃ち合うシーンなどは、何をトチ狂ったのかと思えるほどメロメロシリアス演出なのだ。これじゃあまるで普通に手練れの名監督である。一方ギャグは空回り気味で、ブラピはただ眉をひそめてドナルド・ダックみたいな声でがなっているだけだし、イタリア人の真似する場面でもちっとも面白くない、将校殺しの中尉のアレも獣医もイマイチ。だいたい第2章以外はその手の演出自体が少ないのである。 だがこの映画の一番の見所はそうしたシリアスな場面でもギャグでもない。ブラピ以外の俳優陣、特に大佐と中佐と女優のキレキレの演技である。表情、それも目配せのレベルで見所多数。私は10回見ても飽きないと思う。むろん細部が完璧だからこそ結末が面白いのだが、しかしいったいどうやったらこんな演技をさせることができるのか。その理由もじつは台詞背景がシリアスであることと無関係ではないのではないか。思うにこの監督はこの作品で、まさに自らが追い求めてきた独自世界と古くシリアスな「映画」との見事な融合を果たしたのだ。古いフィルムを燃やし、映画館を破壊するシーンは象徴的だといえば大げさか。ショシャナの哄笑を浴びながらナチスが銃弾を浴び皆殺しにされる。史実を無視して総統をぶち殺す、この無茶苦茶なカタルシスはむろんタランティーノゆえであり、後進世代ゆえの呪縛から解放されかつ独自の世界との融合をようやく果たしえた、その気持ちがラストの台詞として表れたのではないかと思うのだ。 [映画館(字幕)] 9点(2009-12-04 07:46:15)(良:2票) 《改行有》

6.  ディア・ドクター 《ネタバレ》 間違いなく今年のベスト邦画のひとつとなる映画。ことに台詞演出がすばらしく、あくまで外部の人間による感想だが、邦画の現状を鑑みるとこれ以上のものは望めないのではないかとさえ思える域に到達している。それだけしびれるような台詞が随所にあるのだが、だけでなく冒頭から失踪前後の出来事を効果的に配置する脚本もすばらしいし、鶴瓶や香川照之のような一見反映画的と思える顔ですら何とか映像世界に押し込めてしまう撮影手腕も、まさしくプロであるとしかいいようがない。ちょっと褒めすぎかもしれないが、しかし邦画を褒める機会などめったにないと思うのでこの際思いきり褒めておこう。 鶴瓶が××であることは、毎日顔を付き合わせているベテラン看護婦は当然気づいている。出入りの業者も勘付いている。それどころか本当は、患者を含む村人たちだって気づいているのかもしれない。しかし彼らはそのことに触れようとしない。共同体にとって重要なのは彼がいることであり、本物かどうかは瑣末事項だからだ。しかし正体がばれた後、ここがひとつの見せ場であるのだが、村人たちは口々に彼を非難するし、八千草薫など刑事の質問に「何もしてくれませんでした」ときっぱり言ってのける。コーエン兄弟のそれなどとはレベルの違う反物語性が芸術としてこの世に現出する瞬間であり、もしかしてものすごい瞬間なのかもしれない。おそらくは共同体の保身をはかるためのそれらの台詞は一見本意を無視している。だが関係者を詰問していくうち、刑事たちは逆に村の強固な意志を感じ取り、恐れをなすまでに至る。それがラス2のシーンへとつながる。私はこのシーンは映画が丁寧に撮り続けてきたものの最終解であると思う。つまり、共同体とは恐ろしいものであり、鶴瓶はだましたつもりが実は利用された被害者だったのであり、警察は彼を裁こうにも裁けない立場なのだという。 ラストシーン、食事係に化けて現れた鶴瓶に対し、八千草薫はいったん顔を引きつらせてから微笑む。理由はどうあれ遁走した瞬間村は彼を見放したのであり、そういう人間に対して彼女は素直に微笑むべきかどうか迷ったのである。日本人の表情の多義性をここまで捉えた映画を、私はひさしく見なかった。 慌てて付け加えておくが、だからといってこの映画が冷たい映画だといっているわけではない。むしろ全編優しさにあふれた映画であるのでよろしく。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-15 18:24:55)(良:1票) 《改行有》

7.  息もできない 《ネタバレ》 監督したのは主演のヤン・イクチュンだということを観賞後に知ったのだが、まずもってそのことが最大級の衝撃だ。言っちゃ悪いが某ヤンキーボクサーそっくりの風貌の持ち主が、こんなに深みのある映画を撮ってしまうとは(いや別に顔で差別してるわけじゃなく、表現するものの高低差に唖然としたのだが)。 【以下もろバレ】 (中略) チンピラの話である。主人公は暴力をふるうことに躊躇しない。時にはコミュニケーションの手段ですらある。なぜそうするのか。彼が暴力の生み出す連環の中にいるからだ。自分の親父の暴力が招いた結果を知っていながら(=知っているからこそ)、その親父を許し難く、暴力をふるわずにはいられない。暴力は暴力を産む。その連環の中で生きる術は暴力の王でありつづけることしかない。だから彼は誰に対しても暴力をふるう。警官相手ですら躊躇しない。そして暴力をためらう女や後輩に対しては、生き残るためにためらうな、と叱責する。 暴力のない普通の世界は彼には受け入れがたい。だから彼は姉が苦手だ。しかし甥と戯れることには積極的である。また、ヨニというなぜだか生のままの自分との応答が可能な女と出会う。それらが徐々に彼を変えていく。 (中略) 漢江のシーンで、主人公はヨニの膝の上で泣く。つられてヨニも泣く。ヨニの涙は過酷な自分の運命を呪う涙だが、主人公の涙は運命を呪い続けることに挫けた涙だ。二人は互いの涙の事情を知らないが、にもかかわらず互いに何かを共感して泣く。さらに言えば、そんな二人の共通の未来が開かれたことを予感し、安堵して泣けた涙でもあると思う(むろんはっきりとした台詞があるわけではないので、すべて私の想像である。こんなことは観るもの各々が勝手に感じ取ればいいのである)。 しかしこのシーンはすばらしい。並の映画3本分ぐらいの価値があると思う。なぜこんなにすばらしいのか、よくわからないところがまたすばらしい。 ラスト、しかしやはり負の連鎖を断ちきることはできませんでしたというという、ヤクザ映画にお約束な終わり方で物語は終わる。これはやはり少々残念だと感じる。暴力の世界の人はそこから決して出られないみたいなことを露骨に暗示してしまっているからだ。むろん物語的にはその辺りに着地するしかないということはわかるが、もうちょっとズラした結論にしてほしかったと私は思う。むろん希望の持てる方向へである。 [映画館(字幕)] 8点(2010-05-02 13:22:24)(良:3票) 《改行有》

8.  インビクタス/負けざる者たち 《ネタバレ》 心ときめくような映像は今回あんまなかったが、いったいどーしてこう泣けるんだろうか。現実世界に戻りたくなくて、エンディングロールよ永遠に続けと願う、こんな体験は年に数度だ。 【以下バレ】 例えばKじいさんのそれは計算ずくの人造的な涙だという気がするし、Aバターで泣けるとすればあれは民族宗教的ちうか、…まあどちらも人の弱みにつけ込んだいわば「泣かせ」であるわけで、この映画を見て流す涙とは根本的に違う。語弊を恐れず書けば、何やら崇高な物に触れたときの「かたじけなさに涙こぼるる」という類いの涙である。んで、その崇高さというのははたしてこの映画のメッセージによるものなのか、メッセージ以外の何か(映画そのもの)なのか、渾然一体となりすぎて自分でもわけわかめとなるのがこの監督の作品を観終えた際の常である。 憎たらしいことに、彼は演出過剰とは逆向きの演出方針で平然とそういう映画を作ってみせる。監獄見物に行った際にマンデラの囚人時代の姿が幻視されるシーンと、それに試合ラスト数秒で時計がゆっくり進むシーン、この二つの見せ場だけが何か紋切り型の過剰演出だが、それ以外は演技も台詞も抑え目であるかのように見える。それはスポーツというものが元来映画化には不向きであり、試合の場面をどう演出しようが幾分か反映画的になってしまうことをあらかじめ予測して、あえて他の場面が映画的になりすぎるのを避けたのであるのかどうか、私はそう想像するが誰か聞いてみてほしい。結果的に、映画としての完成度は他作品に比べて異質となったという印象をぬぐえないが、しかし『ファイヤーフォックス』と同じ価値を持つ貴重な作品であると思う。 「赦し」というメッセージは強烈だ。現代においてなお殺し合いを続けている民族にとってはなおさらだと思う。この映画はそうした場所でこそ公開してほしいと願う。マンデラもまた存命である。私は自分が矮小な存在にすぎないことを知り、なぜか喜びを感じる。 ぶっちゃけまあ、あまりにもど真ん中すぎて見送り三振という去年も食らったパターンで、また今年もやられたなあという感じ。 [映画館(字幕)] 8点(2010-02-13 20:24:54)《改行有》

9.  ノウイング 《ネタバレ》 いやもうホントにもうなんというか、とんでもねーとしかいいようがない映画。 冒頭から少女の預言の紙がなんたらというよくありそうな展開が続き、でもまあよくできた映像だなあと思いつつ正直このテンションがいつポシャるか、いやいつ収束するかと見ていたわけだが一向にそうなる気配はなく、それどころか飛行機墜落から地下鉄転覆を経て映像的破綻もなく話はどんどん盛り上がる一方であり、いやこりゃたいしたもんだ、しかし盛り上がれば盛り上がるほどヘタな落ちでがっくりする率は高くなるわけで、いったいどうするつもりなんだと余計な心配しつつ固唾を呑んで見守る中、話は脇目も振らず「そこ」へと向かい、まさかまさかの蟻地獄的終末展開、そして続くラストの思くそ衝撃的かつ大霊界的大団円大音響映像を目の当たりにしてただ腰を抜かしてしまったわけだが、これはやはり私がいつものハリウッド風味予定調和(つまり何らかの方法で地球は助かる、ね)に知らず知らず慣らされていたせいか、それとも宗教体験ほぼ皆無なのが原因なのか、しかしこのラストは子供のころ怯えながら想像した終焉そのまんまでありいい歳して脳幹にもろに衝撃を受けたのかもしれず、ともかくすごく貴重と思える体験をしてしまったのは確かなのであり、やはりこれも映画を見続けてきたおかげであるなあと今日のところは書いておくことにする。しかしこの映画を作った人たち、いかれてますね。私はあなた方のことが大好きです。 [映画館(字幕)] 8点(2009-07-15 18:17:47)(笑:2票) (良:1票) 《改行有》

10.  スター・トレック(2009) 《ネタバレ》 トレッキーではない私にもかなりおもしろかったが、原作に詳しければより楽しめただろうと思われる部分が多数あり、それがちと口惜しい。そんなふうに思えるほど楽しい映画。 カークが不正に乗船した際のエピソードには爆笑したし、ドリル沿いに宇宙から垂直落下するシーンはなかなかの迫力だ。フェンシングだのスポック掴みだのでにんまりしたし、すべてのエピソードがそつがなく続く。だいたいどいつもこいつも「一見似ているようで微妙に似ていない」はどういうわけか。パラレルワールドなのでそうしたのだとしたら、何ちう芸の細かさか。 ラスボスは弱すぎ。しかしワールドだけでなく時間にもずれがあると判明した段階で、物語は添え物となり、ツッコミを入れるのは野暮となった。あっさり終わらすのもありだろう。 ラストは無鉄砲さという白人の生来の資質を肯定してカークが無事キャプテンの座に着く。ユダヤ的なものを代表するスポックや、黄色人やロシアや黒人はその部下である。ちと穿てばこの映画は、あきらかに都合のよい新生・再出発の物語だ。でも楽しいからそんなことは気にしないんだ。 ところでドクター・マッコイの眉のひそめかたは悪ノリのネタとしか思えないのだが、もし続編が作られるとして、ずっとあのままいくのかね。 [映画館(字幕)] 8点(2009-06-03 07:55:08)《改行有》

11.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 前半はとてもよかった。主人公の過去とクイズの回答がリンクするという仕組みは同時にインドという国の貧困と富裕が混み合って存在している様を示しているのであり、映画という虚構の中では大いにありだ。というのは虚構は現実を映し出すところで成立するものだからで、ストーリーか仕組みのどちらかに非現実的な部分が宿命的に必要なのであり、この映画の前半は虚構を成立させるために後者を選び、川のトイレや暴動や意図的な不具や盗みや殺しなど、酷すぎて非日常的なエピソードの数々がむしろ日常的に起こりうることであるということ、これが現にインドの一部分であるということを結果として相対化しえたのである。あっ、わけのわからんこと書いちまったどうもすいません。 主人公が成長してからの展開にベタメロドラマな印象があり、かつ賞金の行方や再会の仕方などちとわかりにくい部分があったので減点するが、このへんは映画を終わらすためにはしょうがないとも言える。制作者の主たる創作意図は前半にある。非常におもしろい映画。 [映画館(字幕)] 8点(2009-05-03 09:58:31)《改行有》

12.  ワルキューレ 《ネタバレ》 ヒトラーという御仁は外人から見てももかなり特殊な顔立ちをしていたのかもしれない、とこの映画を見て気づかされてしまった(そりゃ誇張メイクだろうけど)。ありゃ人の形をしたエイリアンだ。悪魔の所業をなしつつ兵卒の心を掌握できていたというのがある意味衝撃で、やたら演出の細かいこの映画から、それが事実であったいう重みが伝わってくる。 とにかく描写の細やかさがいい。兵士の集合とか電信係の女たちとか銃殺シーンとか。主人公の直属部下や電話将校がなんであっさり寝返ったのかイマイチ不明だし、最後の方トム・クルーズ一人がヒーローすぎて浮き気味なのも気になるが、独特の演出の細やかさで大いに楽しめる。 ところで、なぜか若作りのゲッペルスは決死の覚悟で状況を一気に逆転させるわけだが、もしヒトラーが本当に存命なのなら彼は毒を口に含む必要があったのか? 声の似た影武者などがいたのでは? そういえばこの監督は、最後まで生きのびたヒトラーの姿を写さなかったなあ。 いい映画ですよ。何ヶ月ぶりかでなかなかの映画を見た、という感じ。[映画館(字幕)] 8点(2009-03-28 03:32:59)(良:1票) 《改行有》

13.  ウォーリー 《ネタバレ》 これはいい! アニメということで敬遠している映画ファンの方々、この映画は見にいかなきゃ損ですぞ。ことに今年は他の正月映画がどうも低調のようで、ひょっとしてこの冬いちばんのおすすめということになるのではないか。 序盤、もはや昔ながらの「アニメ」という言葉が合わないのではと思えるほど緻密な映像(CG)や、登場ロボたちのリアルな動作にまず引き込まれる。イブが目標物を見つけたらすぐシャットダウンしたあたり、いかにもありそう。中盤の宇宙船に潜入するあたりからはさすがに「それはないだろう」というシーンが続き、破綻ぎりぎりだなあとは思うがまあ子供らが見れば夢中になるだろう。腑抜けと化しどちらが飼われているのかわからくなってしまったような人間たち、700年前の命令に忠実に従おうとするオート、オートの言うとおりにしていればそのまま平和に暮らせるにもかかわらず、地球に戻ろうとする船長と、言外に突きつけられるテーマの数々は案外深い。クサイ表現だが、いちばん大切なものって何だったっけ、という気にさせられる。そして、いいおっさんが思わず涙したラストシーン。疵があるとすればなぜ主人公のロボットだけが生き残っており、かつなぜああも人間的な感情を持っているのかという説明がいっさいないという点だろうが、そんなことはどうでもよい、負けたよ。[映画館(吹替)] 8点(2008-12-31 22:43:01)《改行有》

14.  ローラーガールズ・ダイアリー 《ネタバレ》 アメリカじゃまだローラーゲームやってんの? まーあの面白さはなんか独特で忘れがたいものがあるから、続いてるかもしんないなあ。 【以下バレ】 主人公の茶目っ気がよい。車の中からイケメンを発見してしばらく見つめ、親友を振り返って「み゛~」とかなんとか意味不明の鳴き声を発したり、駐車場に来た男を見つけ上の空でありながらナイス・ジョークを言った親友を指さしたり、同じくプールの端で男を表情のみで誘ったり(両人ともすばらしく豪快な飛び込みぶりであった)、みごとな可愛さであるが、しかしこの女優、調べたらなんともう23歳である。反則だろ。み゛~。 ミス・コンテスト~中流な家~車~バイト先のレストラン~ローラーゲーム(イベント)会場と、いつか居たことがあるような街の風景の中で、地味な主人公があるきっかけを得て生き生きと弾け、やがて落ち込み、再び輝き始めたところで終わる物語。それはまるでローラーゲームの頃のように懐かしいし、パターンの繰り返しはまるでローラーゲームの周回のようだし、登場人物の破天荒さはまるでローラーゲームの肘打ちのようだ。ある意味アメリカの象徴ローラーゲーム。この国では平凡な女子高生ですらこの活力あるゲームの主役を張ることが可能なのだ。少なくとも映画内では。うまやらしい。 な~んて、このへんの叙情を書くには私には知識が足らんので他に譲るとする。 ロッカーに閉じ込められたり、プール内ブラジャーなど細かい部分の上手さや破綻のなさが印象に残った。肝心のゲームの描写はやっぱりちとわかりにくかったが、全体としてまあまあ。[映画館(字幕)] 7点(2010-07-10 23:04:53)《改行有》

15.  月に囚われた男 《ネタバレ》 自分自身の正体を徐々に知っていく過程で、いちいち観客に真実を細かく説明しないところがよいのだ。 【以下ネタバレバレ注意】 クローンの寿命がおそらく3年で尽きることや救助船がじつは事故処理船であること、それにオリジナルのサムがたぶんすでに地球にいるだろうこともはっきり示されるわけではない。すべて画面からそう感じ取れるように作ってある。んで、それらやらそうなった理由やらの想像を逞しくした観客は、本当にそうなんだろうかと背筋をぞわぞわさせながら画面に見入らざるをえない。まったくうまい。新人と思えん。 話自体は『チューリップ・チューリップ』+『終りなき負債』+P・K・ディックという感じ(これじゃあ知ってる人にはほとんどネタバレだが、懐かしいなあ)なので、スれた中年オヤヂにとって衝撃はない。作り手にとってもそれはおそらく同じことで、哲学的な主題を殊更増幅するような演出はなかった(たんに予算不足だからかもしれんが)。また、その他にもクローンの巣が見つかった場面だの何だので演出不足では思える箇所もあったが、それでもまあいいやと許せる出来。 ただ一つ、この手の映画ではたいてい冷酷無比な障害物となるはずの人工知能ガーティが、やけに優しいのにはちと違和感を持った。ラストで友情を優先するなんてのもありえん。しかしこの「何でも記録してしまう装置」を何とかしなければこういう話は成り立たない。うーみゅ困ったもんだなあ。[映画館(字幕)] 7点(2010-05-21 18:25:02)《改行有》

16.  アイガー北壁 《ネタバレ》 【以下全部バレ】 娘さんよく聞けよ、山男にゃ惚れるなよ~を地でいく話。とても懐かしくてかえって新鮮。つーか、怪我させたとはいえ愚か者のライバルを救うという善意の遂行にもかかわらず、残酷な宙ぶらりんの姿を観客の目に焼き付けたラストは衝撃かつ秀逸。たまにはこういう外国の良作を観ないと、たやすく正義の大安売りとなるハリウッド映画ばかりじゃ食傷するってもんだ。 いやそんなことより、雪山登山に関する映像的迫力というのか臨場感というのかがとにかくいい。登山家のリアリズムをとにかく真正面から撮ってやろうという気迫を感じる。遠目に見る背景の山々の美しさと、人が貼り付いた断崖絶壁の恐怖との対比。信じがたい体勢の衝撃。そして雪崩による、あっという間の死の連鎖。吹雪も本当に寒そうで、私はもしかして一緒に凍え死ぬかもしれないと思ったほどだった。 ただし人物描写は浅い。こんなに類型的な人たちいないよというぐらい浅い。昔の人たちだからっつーわけでもないだろう。それに最後に主人公の恋人が上司に向かい「あなたみたいな人はたくさんよ」みたいなことを言い放つのだが、そういうことじゃないだろうという気がちょっとする。苛烈な運命は俗物を非難することで救われるわけじゃない。「もうこんな仕事はたくさんです」と言ってやめたというのならなんとなくわかるが(ちと細かいか)。 おかげで余韻がイマイチだが、ただまあこの監督が描きたかったのはあきらかに人物ではないと思うので、んなこたどうでもいいよとか言われてしまうかもしれんけど。 [映画館(字幕)] 7点(2010-04-17 22:09:06)《改行有》

17.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 テンポが軽快でユーモアがそこそこあっておもしろい。ただし推理の要素は完全に刺身のツマと化し、基本的には「問題は殴って解決する」アメリカ万歳エンタテインメントとなった。 【以下バレ】 べつにおもしろけりゃいいんじゃないか。ラストのCGも含め、大衆が支持すればそれが正しいのだ(むろん日本の大衆でなく、あちらのだ。あくまで)。私はマジにそう思う。わかりやすいからな。 ホームズの拳闘シーンにも驚いたが、ワトソン君までステッキ振り上げ大活躍である。この相棒はこれまでのたんなる聞き役から同等な友人へと脱却した。おかげでホームズも博識の嫌なやつではなく、頼りになるがおちゃめな面も持つ主人公へと変化した。こんなふうに大衆化することは冒涜かもしれん。しかし現実には典型的なスノッブなどもう残存していないだろう。ということはこれでいいのだ。威張ったらちゃんと水をひっかけられたりもするし。 あんな大爆発で3人とも死なないなんてなんか変だし推理もとってつけたようだし、活劇(殴り合い)シーンもありきたりで抜けたところまで達しているわけではない。でもおもしろい。見てよかった。つか、これでいいのだ。うん。 [映画館(字幕)] 7点(2010-04-11 09:18:36)《改行有》

18.  フローズン・リバー 《ネタバレ》 いきなり終わった感じでずっこけた。もっと長く観たかったなあ。 【以下バレ】 つまり氷の上で立ち往生するとか氷が割れて溺れるとかいう緊迫したクライマックスが当然あるのかと思った。まあ冷静に考えればヤクザに発砲した時点で運び屋稼業は終わりだったかもしれんが、しかし私はなぜか途中からイーストウッドの映画でも観ているような気分になっていて、ラストもあの怒濤の如き感動が当然味わえるものと期待しており、そのためにはそういう生死に関わるような場面が必要であるなあと無意識に考えていたに違いないのだった。 まああのラストでもべつにいーんだけど。白人と先住民の母ちゃん同士が母性という共通項を通じていつしか家族同様に結びつきましたという感じか。しかも舞台が国境で、民族の境界を乗り越えてというわけだから脚本としてはできすぎなぐらいのもんだ。 捨ててしまった赤ん坊を拾ってきて母親に返す場面は最高だ。二人が入ってきても部屋にいる男たちは何も言わない(これは、この映画が女性の映画ですよということを端的に示している)。ただアラブ人の母親が赤ん坊に話しかける異国語だけが響く。女たちも無言で部屋を去る。そして帰りの車の中で、さっき起きたことは奇跡かもしれないということをたどたどしく話す。捨てた理由などとっくに忘れている。うーむ素晴らしい。 監督は私と同年。今後どんどんいい映画を作ってくださいとの願いを込めて7点。8点以上は取っておきます。 [映画館(字幕)] 7点(2010-04-11 09:17:14)《改行有》

19.  バッド・ルーテナント 《ネタバレ》 はっはっは。何ちう変な映画だ。ワニが出るのは江口寿史だけじゃなかったんだな。 【以下バレ】 ヤク中の刑事が蟻地獄にはまり堕落していく話なのだが、長回しだの窓から出てくるだのイグアナだのなぜかドア裏だの、その手の演出オンパレードかつニコラス・ケイジのド嵌まり演技で飽きずに見られる。観客は途中退廃と緊張感、それにラストは普通に戻れてやれやれという安堵感まで共有する。パチンコで何万も損したがやっと大当たりが出て原点まで戻りましたというあの感じ。こういうものを描いた映画はあんまりないかも。 ただまあ当然あとには何も残らない。感想までも正直あまりない。でも好きな人は好きになるだろうなあ、この映画。[映画館(字幕)] 7点(2010-03-06 22:06:16)《改行有》

20.  2012(2009) 《ネタバレ》 十分おもしろいので、ぜひ映画館に見に行って迫力映像を愉しもう。ディザスター映画ってどんなのって言われてすぐ想像するまんまの映像、まんまの筋、期待は決して裏切られません(棒読み)。 【ラストバレ】 予告編で見たのに負けないくらいすげーCGもあるし(火山とか宇宙船とか)、話も破綻なくまとまってるし(DJのオヤジだけちと?な部分はあったが)、おすすめなんじゃないすか。まあ敢えていえば、ディザスター特有の怒涛のごとき感動はちと薄いかも。つか、津波から逃げられてよかったよかったというラストは変じゃ。だってほとんどの人類は死んでんだぜ。そういえば「選ばれた人たち」に関する会話的フォローもなかったような気が。なんかもう忘れかけてるけど。 しかしこういうのってネタ尽きないね。ひょっとして子供びびらすために定期的にやる必要があんのかね。ちうことは今度はいったい何年にやんだ? あれ? なに書いてんだ、おれ。 [映画館(字幕)] 7点(2009-12-04 07:45:23)《改行有》

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