みんなのシネマレビュー
すかあふえいすさんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

投稿関連 表示切替メニュー
レビュー表示レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示作品用コメント関連表示人物用コメント関連表示あらすじ関連表示
コメントなし】/【コメント有り】
統計メニュー
製作国別レビュー統計年代別レビュー統計
要望関連 表示切替メニュー
作品新規登録 / 変更 要望表示人物新規登録 / 変更 要望表示
要望済関連 表示切替メニュー
作品新規登録 要望済表示人物新規登録 要望済表示
予約関連 表示切替メニュー
予約データ 表示

【製作年 : 1940年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234
投稿日付順1234
変更日付順1234

1.  西部の男 《ネタバレ》 初っ端から柵を切断するペンチ、牛を引き連れた牧童たちと農夫たちの銃撃戦、斃れる牛、理不尽な絞首刑。 コレは…ワイラーによるアクションが充実した西部劇が…始まると思ったら少し違うようだ。 酒場という裁判所、立ち会う人間も酔っ払いだらけ、オマケに葬儀屋まで待機でタチが悪い、後ろに立てば振り向きざまに拳銃突き付けられる。 弁護人、罪を着せられた流れ者とインチキ判事、女の話と一夜の酒で結ばれた奇妙な友情。 朝起きたらベッドに二人きり…ウォルター・ブレナンをお姫様抱っこまでするのだから想像するなと言う方が無理だよなアッー! 当時のゲイリー・クーパーファンはさぞかしあんなことやこんなことを考えただろう(何の話だ)。 馬を猛烈に走らせる追跡、キャメラも平行移動で丘を登ったりと凄い。グレッグ・トーランドのキャメラワークが遺憾なく発揮されている。 相変わらずワイラーは馬を撮る時だけ本気出すタイプ(褒め言葉)。トーランドが「ベン・ハー」の頃まで生きていたらなあ…惜しまれる。 抱き着いて男からは銃を奪う代わりに髪をひとふさプレゼント、友人として悪徳判事の側面に触れ、農民たちとも関係を深め互いの主張を尊重し、水と油を和解させようと努力した。 火をつけ窓の向こうで微笑む不気味な顔。コレはまだいい。無意味なズームはちょっとやりすぎ。 祭りを阿鼻叫喚に変える大火災、実行者たちの蠢き、無力さ。何食わぬ顔で嘲笑い賑わう街と焼き出された人々の対比。そうと判っても“忠告”で済ませ、受けて立ってしまうのは“友情”故か。 胸に輝く星、劇場を独り占め…あえて孤独を選び椅子を真ん中に置く寂しい後ろ姿。 幕が上がる“めぐり逢い”、一騎打ちの銃撃戦。響く空の弾丸の音、込められる弾、立ち上がった瞬間に訪れる決着、最後の頼み。[DVD(字幕)] 8点(2016-12-15 04:17:33)《改行有》

2.  騎手物語 《ネタバレ》 ジョン・フォード「香も高きケンタッキー」に匹敵する唯一の競馬…いや馬を撮った作品かも知れないボリス・バルネット「騎手物語(オールド・ジョッキー)」。とにかく愉快な映画だ。 フォード作品がジョージ・シュナイダーマンたちなら、バルネットはコンスタンチン・クズネツォフ(Константин Кузнецов)たちがあの素晴らしい撮影を手掛けたのである。 クズネツォフはレフ・クレショフ等と組んで「掟によって」や「偉大な慰め手」「ゴリゾント」「ドフンダ」「四十の心」「視力の奪取」を撮ったが、その実力はバルネットとの仕事でも存分に発揮された。 冒頭から馬、馬、馬が猛烈な速度で走って走って走る様をキャメラが喰らい付き追い続ける場面から始まる。サイレント映画のような早回しが凄まじい速度を引き出す。 古代の戦車のように巨大な車輪が付いた椅子に坐す繋駕(けいが)、それを引っ張り駆け続ける馬、吹き付ける風、なびくたてがみ、疾走を見守る競馬場の群衆。馬がゴールに近づこうというところで歓声が入り、1位の者に賞賛を、最下位には罵声を容赦なく浴びせる賭博者たち。てめえで賭けといて文句しか言えない連中に目の前で罵られるのだ。たまったもんじゃない。 回転扉は幾度も出入りする人々によって回されていく。主人公の老騎手、それのライバル的存在である黒いゴーグルをかけた老練騎手がカッコイイ。 勝負は競馬だけじゃない。腕相撲、祖父を思う孫娘がスカートのままパラシュートを付けて降下する時も群衆が取り囲んで見守る。このマリヤが元気で可愛い。 自転車乗りの少年はパンクしたタイヤの交換を手伝い(その直後に発進してまた事故るオバサンに爆笑)、床屋はバリカンで髪を刈り上げる(正面を捉えたキャメラがそのまま後退し鏡のように理髪師と客を画面に収める)。 列車に揺られて向かう街、子供だけが知っている落書きだらけの“抜け穴”、回転扉から飛び出した先で抱き留める再会、挨拶代わりに交わされる頬への口づけ、ミルク缶の一杯。 マリヤが興味あるのはお爺ちゃんのレースだけ、それまではレースにありったけのモンタージュを叩き込み素早く終わらせ、結果だけを映し賭博者たちを一喜一憂させる。 何も知らず美味しそうなスープとパンをムシャムシャ食べ、気づけば机の上は高そうな料理と酒瓶だらけ、相席になった女性に全部押し付けてトンズラする食い逃げ、注文を受けせっせと料理を運んできたウエイターはタオルを鞭のように叩き少女に迫る。それで食事代のために券を買って賭けてしまうのが面白い。 彼女の視点だからレースの始まりから終わりまでの過程をたっぷり見せつける。競走馬たちが一斉に振り返り、振り下ろされる旗とともに速度をあげてスタート。追い付き、抜かれ、また追い付きと横移動でひたすら捉え続ける手に汗握る瞬間。 思わず一緒になって拳を振り上げ、体を震わせ、ハラハラし、嬉しそうに向き合ってしまうウエイター。下げようとする酒を全部ミルク缶に入れて持って帰ろうとする彼女を手伝ってしまいサービス精神旺盛な良いオッチャンです。 ビリヤード場での休息と温度差、サングラスと手をあげて行方を教えてくれる紳士振り、哀しいパーティー、決意を覆す“出会い”。 馬が草をむしり家の中に朝日が差し込む湖水の夜明けの静けさ、起き上がり慌てて盗んだ馬車で走り出す激しさ。追う方も壁を乗り越え鶏を飼っている囲いの中に落ちながら塀を薙ぎ倒し川の中まで走って横断してしまう。 群を一斉に水辺へ走らせ、水を浴び、体を洗い、窓辺で馬を撫で、たてがみをとかし、ブラシをかける馬の世話ののどかさ。何度もやらかしたオバサンまで水をかけて餌を食べさせる世話をしてくれる微笑ましさよ。あまりにやらかすのでキャメラにすら呆れられたのか事故を映してもらえなくなる。トコトコ大きな馬の跡を付いていこうとして引き返す仔馬が可愛い。 へし折られる鞭と木の枝、乾杯。 馬車に揺られながら談笑し、馬が泥だらけのボロボロになる珍騒動、世代交代。 指を握り、蹄の音が轟き、影、暴走、卒倒、声援に応えるように猛然と追い上げるラストスパート! 花束を貰うのは勝利を祝うのではなく愛する人に捧げるため、扉が回転し続けるのは恋人たちを一緒にするため、サングラスを外すのは視線と言葉を交え握手をし健闘を称え合うために。[映画館(字幕)] 10点(2016-11-19 01:40:17)《改行有》

3.  サリヴァンの旅 《ネタバレ》 メチャクチャ面白かった。フランク・キャプラ「或る夜の出来事」にも通じるロードムービー、コメディ。 本をめくるように始まる物語、いきなり煙を吹き出しながら突っ走る列車と車上での格闘、連結部分で揉み合い、拳銃を撃ちまくり、口から溢れ出る血、締められる首、橋の上から投げだされる身体…を試写室で見て文句を言う映画監督の御登場。 そうやってこの映画は始まる。 けたたましくまくし立てる口論、ドアが開かれるのは試写の終わり、主人公が出かけるまで延々とくっちゃべり続ける。ズタボロ衣装とベッドの上で電話をかける女性の豪華な衣装の対比がウケる。 旅だってもでっかいキャンピングカー?に乗り込みカメラを抱えてゆっくりじっくり追いかける魂胆の映画人たち。コックまでいるんだからタチが悪い。 そしたら救いの手といわんばかりに車が通りかかり、猛烈なスピードでぶっ飛ばしてハイウェイを駆け抜ける!バスもフルスピードで追跡開始で中はグッチャグチャのしっちゃかめっちゃか、映画人は助手席で揉みくちゃになり、女性はスカートがめくれて下着も丸見え、黒人のコックは天井を突き破り、バイク乗りの警官も泥まみれの鬼の形相で追いかけるカオスなカーチェイス、主人公が乗った車も運転手は子供だわメーターも手描きだわ藁を山ほど積んだ馬車に突っ込んでと、ありとあらゆるものが暴走していく破天荒振り。 ここまでまだ15分である。ディズニーも赤塚不二夫も顔負けのハチャメチャ。こりゃあジョン・ラセターもイーストウッドも惚れ込むワケだ。 あれだけムチャクチャな目に遭ってもこりないんだからヤレヤレ。 虫に刺されながらの薪割り、映画館で黙って見れないガキども、食いもんむさぼるオッサン、反応を気にしながら映画を見続けなきゃならない作り手も大変だ。 変なおばさんにはドアの鍵を締められ閉じ込められ、ベッドで誘うように待つBBA、ふとんのシーツをロープがわりに脱出、釘が引き裂くもの、樽の中に落下してずぶ濡れとふんだり蹴ったり。 肖像画のとぼけた顔がまたムカツク。 ヒッチハイク、カフェでの出会い、煙草のやり取り。 出会ったばかりの女性とドライブ、バックミラーに映るもの、投獄され巻き込まれる。 車内電話、豪華な家でプールに突き落とされ、説教たれるやつは引きずり込んでしまえ! ローブ姿のセクシーなヴェロニカ・レイクもいいが、豊かなブロンドを帽子にしまいこみ男装する姿も可愛い。 ブラシで髪をとかし、せっかく着替えたのに今度は執事が…w 労働者たちに交じり一斉に列車に乗り込み、先にいたホーボーたちは気を利かせてか板を掴んで隣の車両に去っていってしまう。 寒い中で身を寄せ合い、敷き藁の匂いでくしゃみを連発、彼女を抱えて降りる。 喫茶店のオッチャンの気遣い、インタビューを中断するように口に体温計を突っ込む医者。 蒸気と透明なカーテンが隠すシャワー中の裸体のエロティックさ。 その後しばらくサイレント映画のように映像だけで語り続ける。この辺から物語はがらりとシリアスになっていくが、散々喋りまくりバカ騒ぎをしてきただけにこういう場面がグッと効いてくる。 貧しい生活の中で生き抜く人々との出会い、寝ようにもノミが体中にたかり、共同シャワー、講談、食事、足の踏み場もないくらい狭い場所で眠る人々。隣の人の手足がぶつかり、気づけば脱がされる襤褸靴。 職を求めて看板を体中に括りつけ、夜の湖畔を二人で歩くロマンチックな場面も。ゴミ箱をめぐる葛藤。 贈り物、下手な施しは災いを誘発し後に続く歩みを生み、待ち伏せ、一撃、奪われるもの、線路に散らばり接近する光とともに消えるもの、血に塗れた名刺。 目覚めた先で喰らう一撃、握りしめてしまう石、視線がおぼつかない裁判、ショットガンを抱え平手打ちを浴びせる保安官、鎖に繋がれた囚人たち。 川沿いで汗と泥にまみれる労働、ポケットに詰め込まれた新聞が知らせるもの、閉じ込められるもの。 教会での上映会、黒人たちの歌声。霧のかかる教会の前を通り過ぎ中に入っていく囚人の群れ、鎖。 消される灯、ミッキーマウスの映画!?一人だけ観客の反応にビックリしていた監督も思わず笑ってしまう。嫌なことは映画を見て忘れてしまおう…今まで抑圧されていた分狂ったように笑う囚人たち。 墓参り、映画に刺激を受け、決意を固め、駆け寄り、帰還を知らせるもの、それを見た瞬間に仕事も忘れて夢中で駆け出し人をぶっ飛ばしながら爆走し、みんな大騒ぎで迎え入れる光景が笑って泣ける。 クライマックスに押し寄せる笑顔、笑顔、笑顔。あまりにの畳みかけにちょっと怖かったが、なぜ映画監督を続けていくのかという理由がこの瞬間に詰め込まれる。[DVD(字幕)] 9点(2016-11-03 21:39:16)(良:1票) 《改行有》

4.  なつかしの顔 《ネタバレ》 フィルムセンターで鑑賞。 オープニングは出征していく兵士や万歳をする子供たちの絵を背景にして始まる。 空を飛びまわる飛行機の模型、子供たちはそれを追う。「腰弁頑張れ」を思い出す。 ラッパの音で集まり駆け出す子供たち、行進に追いついて一緒に歩いていく。羨望のまなざし。  泣く子供を見て動く叔父さん。一方、木の上を見つめる子供たち、上って取ろうとする子供、列車の疾走、汽車の風、子供たちの疾走が事故の発生を物語る。 “名誉の負傷”、バス、徒歩、馬車に乗せてもらう移動、今度は本物の飛行機が上空を飛んでいく。家族の前で痩せ我慢、店先に並ぶ飛行機の模型。 見舞いに来る子供たち、置いてあるイモをめぐる会話が面白い。「食べなさい」とすすめても遠慮する姿が可愛い。良い子たちだ。 上演前もイモをパクパクつまむイモ好きの女性。 映画館のニュース、アメリカにいる同胞の話、戦争の様子を見て表情を曇らせる「あの人は無事だろうか・・・」思わず泣いてしまう。 お目当てのものが見れるか見れないか、期待と不安。遠く離れた人が映るのは手紙をもらうのと似たようなものだろうか。文面で姿を思い浮かべる手紙、一瞬の映像で他に映らないものや言葉を想像させる映画。 バスに揺られて眠る外では兵士たちが戦闘訓練に励む、送られた写真は見たのか見てないのか。観客の目に映されないのがその疑惑を生じさせる。 飛行機の土産、嘘を知っている人々、「広い畑みたいなところ」、「何とか」、真実を知ってしまったショックが怪我をした子供を突き動かす。 飛行機よりも真実を言って欲しい、一瞬映る川の様子、今度はもう見る事を避けない、逃げない。[映画館(邦画)] 8点(2015-07-30 15:48:06)《改行有》

5.  ハナ子さん 《ネタバレ》 フィルムセンターで鑑賞。 序盤は「撃ちてし止まむ」の文字が戦中を感じさせるのみ。 東宝舞踊隊による円を組んでの華やかな演目、上からの視点で花のように目まぐるしく運動を続けるのはバーレスク映画の流れを組むリズミカルな演出。 そして浮かぶ「ハナコサン」の文字。  ミュージカルコメディの要領で家族紹介、当時連載していた漫画が原作だから余計にコミカルだ。 軍歌や戦時歌謡が面白おかしく替え歌にされてしまう。 漫画?戦意高揚?銃後?隣組?こんな楽しい映画じゃ戦争で人殺す気なくなるわwww焦げた釜を持ってきて指示を仰ぐシーンに爆笑。 犬をしっし、子供たちの合唱、道を自転車で駆け抜けながら歌いながら空襲前の街並みを駆け抜ける、馬の調教場、夫婦でブランコならぬ懸垂でブラブラ、リンゴを投げてキャッキャッウフフ。これ本当に戦前ですか。冗談キツイですぜ(褒め言葉)。 マキノが撮っていた戦争映画の数々も良い意味で馬鹿馬鹿しいのが多い。戦時下でも明るい映画で少しでも人々を元気にしてやりたい。それがマキノの心意気だった。 ただ、俺はこの映画のラスト10分に暗い戦争の足音を感じてならない。 ススキが茂る原っぱで歌う、家族の団欒、人々が見守る二人のデュエット、電話の会話、「おめでとう~」 早く結婚させたい家族、ラジオ体操、人々が行き交う、まだスカートや洋服の人も多かった光景が興味深い。 お灸責めで攻撃(物理)!クソワロタwwwお父さん涙目。 音楽に合わせてムシャムシャ食べるのは「弥次喜多道中記」や「鴛鴦歌合戦」から続く見事さ。時計までwww音楽に合わせて料理、体操の要領で掃除と楽しくてしょうがない。 轟夕起子の「ねーねー」が何か可愛い。顔を覆って嬉しそうに「きゃっ!」 「限りなき前進」の頃と比べると可憐というほどにはいかないが、このはつらつとした演技!「姿三四郎」とはまるで別人だ。流石正博の嫁。「續清水港(清水港代参夢道中)」の夕起子も良かった。若き高峰秀子も可憐です。 帰った矢先にかくれんぼと出くわす、謎貯金システム、「赤ちゃん生まれないの?」「まーだだよ」「おかしいわ」この流れ最高。ごっちゃ混ぜの面白さ。 犬をどかっと置く感じが良い、みんなでハイキング、この後嫌でも痩せたであろうデブの父さん、「グー」じゃねえよwww 再び舞踊隊の華麗な演目、そして衣装とはいえこの時期に短いスカートで踊りまくる(要はパンチラ)シーンがあるなんてビックリ。何度でも言ってやるぞ戦前なんて信じらんねえ! そして50分経ってようやく国民服姿に。いよいよ戦争の足音が近づく。月月火水木金金、この頃は三国同盟って言ったら楽観視できただろうね、防火訓練が愉快な音楽とともに馬鹿馬鹿しく描かれるのは後の惨状を考えるとあまりに滑稽に見える。 高射砲、空襲、おもちゃの戦車、ラスト10分の暗さ。遠くで爆音が響き笑うに笑えなくなる。人々が大勢死に行くであろうご時世に赤ん坊の誕生をみんなで祝うなんて何かせつない。 さっきの舞踏隊が階段を降りたり舞台を行進していく。いよいよ出兵か。兵隊たちのパレード。 飛行機の模型、まるで旅行に出るかのように明るく見送るしかない、おかめのお面。検閲が入る前は面をつけた彼女が泣くというシーンだったとか(仮面の下の涙をぬぐえ)。検閲官の悪魔めがっ!!!!! この事に関してはマキノの自伝「映画渡世 地の巻」が詳しいです。 空を飛んでいく飛行機たち、戦場に行く前の最後の団欒、息子と戯れるシーンの静けさ。 でんぐり返しであっかんべえ、仮面を頭の後ろにつけて笑顔で踊る姿も何処か悲しい、音楽も悲しげに響く、ススキの茂る中に消えていく人々・・・。[映画館(邦画)] 9点(2015-07-14 13:15:41)《改行有》

6.   《ネタバレ》 「簪(かんざし)」。題名にもそう書いてあるのに肝心の“簪”はまったく映されない。 「按摩と女」を思い出す部分が多い。林道を歩くシーンからはじまりとにかくテンポが良いし面白い。夏に見たくなる傑作だ。特にスリリングなリハビリ風景は見物だ。 芸人?たちがズンチャカズンチャカ賑やかに歩いてくる。ロングショットで捉える視線、日差しが照りつける真夏の暑さ、林道の日陰の涼しそうな様子。 宿についてマッサージをしてくれる按摩目当てで人々もお祭り騒ぎ。きゃっきゃっきゃっきゃとうるせえww そういえば冒頭で語り合う二人というのも「按摩と女」だった。あの映画は按摩の男が二人、この映画は普通の女性が二人で、按摩は完全な脇役だ。 せっかく静かに本を読んでたのに騒ぎで怒るお父さん。 他の人は「賑やか」「五月蠅い」「景気が良い」「派手」と様々な捉え方、このやり取りを何回もやるのが笑える。「また怒られちゃった」    何度もかけられる電話、届く手紙、リハビリ風景。 フロントへの電話、女たちに独占されてやって来ない按摩さん、男どもの風呂浴びは水浴びのようにも見える(しかし野郎の入浴シーンばっかりだ)、「情緒が足の裏に突き刺さる」怪我。 「退屈しのぎに喋りたい」とはまさにこの映画を表すような一言。何かと五月蠅い父親。 簪の主から手紙、パーマに簪とかww まだ見ぬ女性に期待を寄せる男ども、なんつーデリカシーの欠片もない会話。よくもまあ奥さんがいる前でこんな会話をできるなコイツらわ。しかも美人の嫁の前で。 情緒的イリュージョンw  笠智衆と田中絹代の演技が本当に良い。嫌味ったらしくないというか、くどくないというか。清水宏の映画は良いなあ。「みかえりの塔」の笠智衆も良かった。 なんだか見合いでもさせるような雰囲気、足をひきずる男を手を取ってエスコート、服の違いで時間の経過を伝える。 リハビリに付き合う女性、木を目指す男を傘をさして不安そうに見守る女の視点。子供たちの声援、音楽までムードを引き立て無駄にサスペンスフル。松葉杖を置くのはどれくらい歩けたかを一目で判断するため。 子供たちの嫉妬が可愛い。木登りで距離を置く子供たちの主張をしっかり聞いてやるのが良い。男の姿がないので杖はしっかりと渡したらしい。 静かに囲碁をたしなむ、絶対に来ない按摩、幾度も書かれる手紙、いびきの競争とか五月蠅いことこの上ない。それを応援すんなww 「いびきかぁ五月蠅いなあ」 おまえが言うな。 朝の河原で体操、洗濯、水浴び、リハビリ再び。怪我でまだまっすぐに出来ないが、力強く大地を踏みしめる脚!  後半は戦争の足音が近づいているのが会話で語られる。 髪を下して涼む姿がちょっと色っポイ。こうして見るとおばさんてほど老けてないんだよね。まだ若々しさのある女性って感じ。 傘をさして原っぱで会話、日陰、「日に焼けた」と差し出す腕、何処か不安げな横顔は彼女を追うという男がここに来ないかどうか感じているのだろうか。 河に駆けられたまがりくねる橋、おじさんのリハビリを実況、意外と速い流れの上で必死にバランスを取る、見守る方も駆け寄りたいのを我慢する。どうしてこんなにもスリリングなリハビリ描写なんだろう。 男を女がおぶる力持ち、不安定な岩場を歩く脚。余計にスリリングだ。按摩にまで実況せんでいい! 隣の部屋では別の女性がすやすや寝ている、待ちくたびれた友人の艶かしさ。どうして着物はこんなに色っポイんだろう。 洗濯ものを取り込みかがんで泣き出してしまう、涙は顔を洗って拭う、冒頭の騒いでた娘たちが隣の部屋にまで来て「うるさあいっ!」お父さんのいびきもうるさあいっ!! 小声で「えい」と可愛い脅かし方。 クライマックスを飾る階段でのリハビリ。時間経過、一段一段確実に上っていく脚、大分まっすぐになってきた、リハビリの終わりは彼女との時間の終わりでもある。階段を一緒に上らず見守ってしまった心の距離。 一人寂しく男がリハビリをした道を歩いていく後姿・・・。 [DVD(邦画)] 9点(2015-07-12 14:01:36)《改行有》

7.  家光と彦左 《ネタバレ》 「長谷川・ロッパの家光と彦左」。フィルムセンターで鑑賞。 古川碌波と長谷川一夫の共演。この二人は「婦系圖(婦系図)」でも共演していたね。 いきなり将軍?を抱えて歩く彦左、時は戦国時代、爆発の中を人馬が駆け抜ける文字通りのスタートダッシュの素晴らしさ! 打ち捨てられた旗、ところ変わって江戸の城。 元気に遊ぶ子供たち、天高く舞う鞠、転んで泣いた友を励ます姿を見て「これが将軍争いをするのか」とでも思ったか哀しげな表情を見せる母親。 将軍争いの議論中の場にドカドカと現れ堅苦しさをブッ壊すように座る彦左。  目の前で切腹をしようと着物を脱ぎ始める。皮肉たっぷりの会話が面白い。振り返って遺言、命がけの進言、さっきまで生きるか死ぬだったのにすぐに馬になって遊びに付き合う切り替えの早さ! 時は流れて成長した家光。 田園風景の穏やかさと正反対な室内の暗さと重苦しさ、まさかの伊達正宗、かっぷくの良い正宗さんですこと。 彦左が現れると共に急に明るくなる室内。まるで灯でも灯したように。乱世の暴れ者は太平時の骨董品。上様も名君すぎて何か味気ない。 しばらくはこの静寂が続く。骨董品として静かに余生を過ごそうとしていた彦左のように。 本多忠勝をはじめ、平和になった時代に静かに亡くなっていった猛将も多かった。彦左もまたその一人に過ぎないのだろう。 仕事中の若を見守り「自分は邪魔かな」とでも言うように静かに去っていく孤独さが背中から滲み出る。 まるで孫の祖父と孫の母親のように茶を愉しみ話し合う。 30分を過ぎた辺りから物語は再び加速していく。ダダをこねた子供のように若に迫る爺や、それに「馬鹿!バカ!ばか!」と死んで欲しくないからこその「ばか」呼ばわり。爺やと若殿様のやり取りに和む。 そして爺やを元気にするための「茶番劇」のはじまりはじまり。 大広場の壇上で華麗な舞踊を披露する余興、身分なぞ知らんという具合に一緒に踊るのが良い。 ひょっとこお面を付けて踊り明かす、爺やも呆れながら踊りに巻き込まれ元気になっていく。お茶目な殿様は舌をだしながら「文武の道に励むであろう(嘘乙)」 襖の話を立ち聞きして彦左も段々と乗り気に。抜刀して手打ちという場面で「御随意に」の一言で本気じゃない事が解る表情をする。 斬られそうになる人涙目。コイツらゲラゲラ笑いやがってwwwwww 日光にお参りからは結構シリアスに。 闇夜に燃える提灯、嬉しくて嬉しくてしょうがない爺や。 そこに反旗をうかがう男たちの将軍争いは続く。彼らの「馬鹿」は家光たちの「ばか」とはちょっと違う、灯りでかろうじて照らせるような途方もない闇。それが広がる空間が素晴らしい。  地獄へお供いたします、闇の中に見えてくる希望の光。 行列に狙いをつけるように聳える城、日光での舞踊、合図と共に閉まってしまう重厚な扉、光も遮断する密室に変わる。もう本当に完全な暗闇で何が起きているのか解らない恐怖、かろうじて照らし出す強調する蝋燭の閃光。 これも「例のアレ」だと思ってしまう彦左。命がけの強硬手段も「良い芝居するなあ」くらいにしか思ってないんだろうな・・・w 本当にヤバイと思っている人と本気で芝居だと思っている人の温度差。武者姿の舞はブラフ、ギシギシと音を立てる屋根の不気味さ、蝋燭切ったら大爆破! 国を裏切れないが主君も裏切れない苦しみ。 思い出す戦国の修羅場、冒頭とは打って変わって今度は爺やの手を引いて歩く将軍。立派な真の名君へとなっていた。 「許しも待たず死ぬでないぞ」、田園に消えていく行列。[映画館(邦画)] 9点(2015-07-12 13:56:29)《改行有》

8.  くもとちゅうりっぷ 《ネタバレ》 昆虫たち、てんとう虫の少女、蜘蛛の紳士。蜘蛛の巣のハンモック、美しい花々。交互に歌い合う二人。 蜘蛛は優しい口調で“得物”を誘惑する。 蜘蛛のナンパ、てんとう虫の女の子は羽で飛ばずに草から草に飛んでいく。怖がって羽の下に隠れてしまう。 蜘蛛が糸でするする降りたり昇ったりするアニメーションの軽やかさ。 ちゅうりっぷの介入、花の中の顔、蜘蛛の糸を大量に出してがんじがらめに巻きつける。 蜘蛛は糸をマフラーのように、鈴のように、タオルのように巧に操る。 空の上、雲の上から風を飛ばす者たち、雨風の猛烈さ・空爆のような雨。 子供のようなミノムシ?冒頭のミツバチ?がてんとう虫の女の子たちを助けるキッカケに。 傘にくるまって飛ばされ、草木はそれを跳ね飛ばすように運ぶ。[DVD(邦画)] 8点(2015-06-10 18:28:15)《改行有》

9.  ギルダ 《ネタバレ》 本作は恋愛映画とフィルム・ノワールの狭間で揺れるようなラブロマンス。 ナチスを絡めたストーリーは戦後のモダニズムを捉えていたりするから不思議。 本作はまた3人の男女を軸にストーリーは展開される。 細かいセットやギミックなど随所に凝られた演出、ベン・ヘクトの見事なシナリオはまったく飽きるという事をさせてくれない。 ジョニーの賭博から始まるファーストシーン、ジョニーの危機を颯爽と助けるベイリンの登場、そして妖艶な美女ギルダ。 男勝りで肉感のある女優リタ・ヘイワース、これほど彼女の個性と役柄がハマッた作品は無い。グレン・フォードの演技も最高。 過去に愛し合った男女二人。 別れてみればジョニーは賭博に明け暮れ、ギルダは危険な男と床を共にする生活を送っていた。 変わっていないのはギルダの美しい歌声と力強い踊りだけだ。 皮肉にもジョニーの命を救ったベイリン・マンスンはギルダの夫だった。 未練が残るジョニー。本当はギルダとよりでも戻そうかと積極的になりたいが、恩人のベイリンの手前未練をしまい込む。 ギルダもジョニーとまた一緒になろうかと思いつつ、ジョニーの気持ちを知ってか知らずか他人の男と一緒にいる光景をジョニーに見せつける。 それを黙って見つめるベイリンの不気味なこと不気味なこと。 ベイリンの右腕として頭角を表すジョニーだが、命懸けの日々からいつか抜け出してやろうと野心が芽生えてくる。 ギルダもジョニーに急接近し、ベイリンもまた自分の命を守るために逃げようとする。 様々なドラマが交錯し、3人は己の希望を満たす結果となった。 ただ心は満たされない。 ジョニーはよりを戻したとはいえ、恩人の元妻となったギルダに複雑な気持ちを抱く。 ギルダもまたそんなジョニーに対して申し訳なさそうな後ろめたさを感じさせる。 ギクシャクしながらも再び元の仲に戻ろうとする二人。しかしベイリン! この男もまたギルダを愛していたのだろう。 ラストはちょっとベイリンがマヌケすぎて何だか可哀想になってくるのだが、際立った演出はそれを感じさせない。 つうか帰ってくんなよ。一番未練タラタラだったのコイツじゃねえか。 「愚なる妻」のカラムジンかおのれは(ハゲ具合まで一緒)。 その後の刑事な粋な対応、ハッピーエンドなラストと中々の作品だった。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 22:13:19)《改行有》

10.  ガス燈(1944) 《ネタバレ》 正直イングリッド・バーグマンは余り好きじゃなかった。 恐らく「カサブランカ」などというアホくさい恋愛ドラマを先に見てしまったせいだろう。 ところが「ガス燈」のバーグマンは見直した・・・いや惚れた! あの心を吸い寄せられるような目の演技。 家族を殺され、愛していた筈の男に騙され、ノイローゼになって追い詰められていく様・・・彼女の目は光を失っていく。 だが真実を知った時の彼女の燃えるような瞳。 「あの野郎よくも・・・今に見てなさい・・・!」復讐心ではなく、冷ややかな眼と口舌でグレゴリーを罵るポーラの凄さ。目!眼だよ眼!! グレゴリーの不気味な優越感に浸ったあの黒目が、唖然として丸くなっていくあの時の目。 「やられた!」というグレゴリーの眼。 そしてポーラの「ざまあみさらせ」という最高に冷たい視線・・・勃起したわ。 ラストシーンの「おや、まあ」には不覚にも笑ってしまった。あの瞬間に解放される感じが良かった。 ジョージ・キューカーは女を撮らせたら世界一ですね。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 21:41:35)《改行有》

11.   《ネタバレ》 俺は「二十四の瞳」といった辛気臭い話よりも、「風前の灯」みたいなブラックコメディ、この作品みたいに初期の方が惹かれる。 ロードムービーのような流れで男女の恋愛と亀裂を描いていく映画。 登場人物はたった二人。 あてもなく流離う二人の間に生じる関係。 直接的な描写はせずに、女の表情と少し乱れた服だけで「情事」を感じさせるこの演出の見事さ。 たった1時間ちょっと、限られた登場人物でここまで戦後の洞察について話を膨らませられるとは・・・ラストの火事のシーンも凄い。 実験的な要素たっぷりの作品だった。[DVD(邦画)] 9点(2014-12-19 18:35:15)《改行有》

12.  海外特派員 《ネタバレ》 ヒッチコックといえば不気味な建物、不気味な人物、疑惑の連続、二重三重のドラマ、豪快なアクション、パニック、そして鳥。 前作「レベッカ」はプロデューサーのセルズニック色が強く、リミッターをかけられたかのようにヒッコック色は薄めだった。 今作からは誰の邪魔も無し、やりたい放題! その全てを満遍なく取り揃えた感じの良作。ジョエル・マクリーもカッコイイ。 序盤のあらましで地盤を固め、事件が起きた瞬間からの盛り上がりをじっくり描く。 最初は少々退屈だが、主人公がいきなり派遣されるわ、コンタクトを取ろうとした要人を襲う悲劇・そこから車での追走劇(一瞬とはいえ唸るように走るチェイスの迫力!)、風車小屋におけるサスペンス、塔から“落ち”れば飛行機も落ちる。クライマックスは「救命艇」を思い出す。 第二次世界大戦前夜までの駆け引き、開戦直後の混乱を描いた本作。 実際1940年の前年から第二次大戦は勃発。 イギリス本土は「バトル・オブ・ブリテン」におけるドイツ空軍との死闘の真っ只中。 故郷イギリスの苦境を憂いたヒッチコックの怒りと執念、叫びが伝わって来る映画でもある。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 19:54:59)《改行有》

13.  無法松の一生(1943) 《ネタバレ》 岩下俊作の小説「富島松五郎伝」を原作とする本作。 福岡県小倉の暴れ者「富島松五郎」こと「無法松」の顛末を描く人情もの。 街で大暴れするエネルギッシュな松五郎の身分を超えた情念を絡めた人生。 稲垣浩が魂を込めたこの映画だが、度重なる検閲で泣く泣くカットしてしまった部分も多く、今となっては不本意な出来となってしまっている。 松五郎が賭博に興じるシーン、良子に思いを打ち明ける場面などなど、重要な場面の多くが失われてしまった。 宮川一夫が収めたこの数々のシーンの一部が2007年に発見され、角川から出されたDVDで要約補完された。 ストーリー自体は後にリメイクで本懐を遂げたといえるが、本作で主演を務めた阪東妻三郎の素晴らしい演技が一部カットされた点は残念極まりない。 「雄呂血」の勇ましい二枚目が、この映画で見事に三枚目だが心の厚い熱血漢を演じる! 久世竜が代役を務めた雪のシーンですら、最初は自分の体で挑んで中耳炎を起こしていた。 サイレントからトーキーとなり、声の高さに一度は挫折したバンツマ。 それを声を出しまくった喉を潰し、ドスの効いた声に作り替える!役者魂ここに尽きる。 そして本作の一番の見所といえば、そんなバンツマのダイナミックな祇園太鼓。 監督の依頼を受けた太鼓打ち「田中伝次」が創作したオリジナルのものだったが、この映画がヒットした事で、松五郎の人物像とともにこの映画の太鼓打ちも全国、世界中に広まったという。 上記の太鼓を含め、宮川一夫の素晴らしいショットなどなど、見所も多い。 良子夫人を演じる園井恵子、結城重蔵を演じる月形龍之介の演技も素晴らしい。 特に園井恵子はこの「無法松」以外に映画には出ていない。彼女の最期を考えると、誠に残念でならない。 本作を見た方は是非とも三船敏郎主演のリメイクも見て欲しい。[DVD(邦画)] 9点(2014-12-18 18:57:31)(良:1票) 《改行有》

14.  黄金(1948) 《ネタバレ》 「グリード」を彷彿とさせるジョン・ヒューストンの初期&総合的な最高傑作の一つ。 序盤20分間の「下地」を終えてからの盛り上がりよう、ストーリーの巧さは惹き込まれる。 列車からの銃撃戦、山賊との攻防、味方同士で殺し合う人間不信と疑心暗鬼にかられる人間模様。 ハンフリー・ボガートが欲望に囚われていく男を演じた点が面白い。「カサブランカ」なんてキザッたらしく臭いメロドラマよりも遥かに惹かれる。 ボガートはワイルドな方がカッコイイし余計に魅力的だ。 ジョン・ヒューストンの実父でもある名優ウォルター・ヒューストンの演技も見所。裏主人公とも言える爺さんだ。 物語はメキシコ革命直後のメキシコ。 地方では山賊がはびこり、その山賊を一掃しようと武装した連邦警察が日夜活動していた。 そんな中で「山師」を生業とする主人公3人。 貧乏続きで金を恵んでもらって日々を暮らしいたダブズ、ダブズの貧乏仲間のカーティン、喰えない爺さんハワードは山奥に眠る「黄金」を求めて旅に出る。 一攫千金で楽をしたい願い、欲望が男たちの心を壊していく。 泥にまみれ、飯をくらい、邪に土を掘り続ける男たちの力強さ。 その落盤が崩れる瞬間、それが彼らの別れ道となる。 そのシーンでかかる「あざとい」BGMが、より一層彼らの行く末を皮肉っているのだ。 山賊に追われ明日も知れぬ身で、金を全て横取りしようと企む男、 純粋に仲間のために「黄金」を求め、裏切られながらも金よりも大切な事に気づく男、 金よりも大切な「絆」を手に入れた男、それぞれの顛末の凄まじさ。 そして風と共に消えていく野望の夢の跡・・・人間の心に迫った冒険西部劇。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 18:53:13)《改行有》

15.  酔いどれ天使 《ネタバレ》 日頃から札付きのチンピラみたいな顔の三船がヤクザの「松永」を好演。 デビュー作「銀嶺の果て」から既に雄の匂いがプンプンしていたが、この映画でそれが爆発。 演技は駆け出しホヤホヤのチグハグで、何を言ってるか訳わかめ。 字幕があっても声が聞き取れねえ。 ただこの男が醸し出すオーラ! 戦争の暗さを背負い、それに負けない笑顔と怒りに満ちた三船敏郎は演技を超えた凄みを感じる。 地のオーラと動きで魅せる。 マキノ雅弘の「抱擁」でスマートなヤクザを演じていたのとは対照的だ。 オマケに仲間のヤクザに裏切られようともまだ仁義があると頑なに信じる松永。何度裏切られようとも。 酔いどれの医者に気遣われた恩を忘れずに庇い、「こんな腐った泥の中にも、一輪の蓮の花が残ってるはずだ」と信じ続ける。泥の中に咲く蓮の花を・・・。 こんなヤクザに同情すんなって方が無理だよチクショウ。 最後までヤクザを貫く山本礼三郎の存在も圧倒的。機銃のようにギターを抱えていやがる。 千石規子と久我美子は最高の癒し。 「静かなる決闘」の千石規子も良かったぜ。久我美子の初々しさが「白痴」であそこまで変貌しようとは思わなんだ。 壮絶な決着の後に、静かな感動をもたらしてくれる。 ペンキ塗れの壮絶な散り様は「野良犬」のクライマックスで“色”がつくラストにも繋がっている。[DVD(字幕)] 9点(2014-12-18 17:29:58)《改行有》

16.  虎の尾を踏む男達 《ネタバレ》 黒澤ファンには不評気味だけど、俺は「デルス・ウザーラ」と共に黒澤嫌い・ファンにもススメたい傑作の一つだと思っている。 何せ黒澤映画最短(オムニバス「夢」を除けば)となる1時間に凝縮されたエッセンス! 日本の伝統芸能、歌舞伎の代名詞の一つ「勧進帳」。 源義経と弁慶が箱根の関所を突破しようという一節だが、それをミュージカル風にやってしまおうというこの映画。 弁慶の鬼気迫る演技、そしてエノケンのひょうきんな役どころ! 特に終盤、弁慶と関所が繰り広げるやり取りを短いショットを交互に見せ緊張感を高めるッ場面!この場面だけは何度も見てしまう。[DVD(邦画)] 9点(2014-12-18 17:27:43)《改行有》

17.  野良犬(1949) 《ネタバレ》 ファーストシーンが最高にキマッてる映画は大抵傑作が多いが、この「野良犬」もそうだ。 オープニングの漆黒の犬! そこからまずインパクトがデカい。 ワクワクするね。 若い刑事が失態やらかしてそれを死にもの狂いで追っていく映画。 軍人だった三船にピッタリの役回りだ。 復員兵姿で闇市に潜入する場面なんか凄い様になってる。 若さと責任感に溢れる主人公だが、焦って間違いをおかしかねない危ない場面が続く。 真っ白白のスーツが印象的だ。 後編から現れるベテラン志村喬の刑事。 歴戦の勇士という感じで渋くてカッコイイ。 志村と共に事件を追っていく主人公。スーツも板に付いてきた。 そして犯人との一騎打ち。 仇の犯人を泥にまみれても捕らえる! その執念の様! スーツが黒く染まる姿が最高にカッコイイ! やっと新人刑事に「色」が付いて成長したわけだ。 新人刑事の悩みや犯人たちの苦悩。 戦争が犯罪も産んだ。 そんな様子が力強く描写されている。[DVD(邦画)] 9点(2014-12-17 07:08:35)《改行有》

18.  静かなる決闘 《ネタバレ》 本格的な医療ドラマ。 黒澤が大映時代に撮った映画はハズレが多いが、この「静かなる決闘」はかなりの力作。 医療ヒューマニズムは「赤ひげ」にも受け継がれる。 “音”の映画。雨音、車、ガラスの割れる、人々の叫び、叫び、叫び、「リンゴの唄」の音。 この映画の“決闘”とは、病との、己自身との闘い、対照的な二人の男たちの対比を描いた闘い。 雨と不協和音から始まるオープニング、第二次大戦下へ。 野戦病院、疲れ切った医者たち。雨の音が緊張を持続させる。 静かな三船。戦場ではまだ梅毒の兆候が出ない。 戦場から帰った戦後、愛するが故に結婚を諦めるしかない苦しみ。立ち聞きしてしまった衝撃。壁で踊る女の絵のヌード、花。 酒瓶を振り回そうとするのを止める一瞬。酒瓶を投げようとするのを女の悲鳴が止める。中の酒を震える手で注ぎ溢れさせる。この時から男の破滅は予告されていた。 ハーモニカの音色で笑顔になる人々の表情。欲望を爆発させる三船の一人語り。ドン引きして泣くしかない千石規子。 廊下で対峙する二人の男。看護婦のビンタに力のない反応。ガラスをブチ割り、絶望に沈む姿。[DVD(邦画)] 8点(2014-12-15 22:48:48)《改行有》

19.  拳銃無宿(1947) 《ネタバレ》 フレッド・ジンネマン「真昼の決闘」の原型になった作品。ジンネマンはジョン・ウェイン×ジョン・フォードの「駅馬車」も好きだったし、本作もかなり手本にしたらしい。 黒い装束は後の「赤い河」や「捜索者」を思い出すけど、後作品のような憎しみや独善的なものは感じない。 一介の流れ者として、淡い恋にも興じる優しき伊達男だ。癒し系ウェインと言ってもいいかも知れない(なんじゃそりゃ)。 いきなり発砲から逃走に及ぶまでのシークエンスは中々凝ってる。 ドラマがメインで一目ぼれした娘やその家族、彼を追う保安官など交流を軸に描く。 追っ手を交わすための“ハッタリ”や酒場での乱闘、「赤い河」に繋がる中盤の牛追い、終盤のクライマックス等見所も結構多い。 主人公に極力人を殺させないって展開が良い。真のヒロインは保安官のオッチャンだったりする。[DVD(字幕)] 8点(2014-12-14 20:20:01)《改行有》

20.  姿三四郎(1943) 《ネタバレ》 冒頭から闇討を返り討ちにする柔の技、力に溺れた三四郎が池に飛び込み悟りを開く、かつて入門した道場主を倒し、その娘に恨まれて複雑な関係を築く、仲良くなった恋人が実は倒すべき敵の娘、何度投げられても立ち上がり、娘のために降伏という名の生存を選んだ不屈の闘士、その娘を執拗に狙う強敵「檜垣源之助」との最後の決闘などなどデビュー作にしては度肝を抜かれる場面が多い。 しかしそこはやはりデビュー作。ムラ気と作り込みの甘い部分もあることあること。 肝心の柔道場での試合は取材と指導が足りなかったのか、ワルツを踊るような取っ組み合いからのブン投げ合い。 倒れた敵の上に壊れた障子がゆっくり落ちる・・・この素晴らしい演出が無ければただの柔道ごっこである。 志村喬もこの頃は舌足らずだったのか(「鴛鴦歌合戦」で素晴らしい歌声を披露したのを知っていると余計に)、「強い」と言うはずの場面を「つおい」に。 「つおい」 「つおい 」 「お(^ω^)」 「お(^ω^)」と言ってはいるが、年と共に重ねた強者の風格。 そのオーラを体で表しているのだ。 後の「七人の侍」で久蔵に対して「強い・・・強い!」と力強くポツリポツリと言うセリフからも解る通り、志村喬も常に進化を遂げているのだ。 あの志村喬にも、藤田進にも初々しい頃の若い時代があった。 そんな俳優陣の素晴らしい演技とシナリオ、演出などが合わさって、数々の手不足を補ってくれているのだ。 張り詰めた空気がピンッと弾け、動き出す。 互いに相手の襟を掴み、出方を伺う。 正に男の戦い。 柔術の掛け合いも、最後の三四郎と源之助の対決の時には充分すぎる仕上がりになっていた。 自然の猛威そのままに荒れ狂う空、すすき野を切り裂くように吹き荒む風、そんな風を難なく受け止める頑強な男たち。 ラストの恋人たちの切なくも暖かい別れ場面も清々しい。 幾度も生死をくぐり抜けた男が出せる優しさ。 藤田進はそれを見事演じきったと思う。 そう、この映画は正に「人間ドラマ」に重きを置いた作り込みなのである。 冒頭の戦いの前ですら、三四郎が門馬三郎に弟子入りし、その門馬が目の敵にしていた矢野小五郎に門馬が投げられる。 これで三四郎は360度見る世界が一変。 柔道と柔術のせめぎ合いの中に揉まれながら道を歩み始めるのだ。[DVD(邦画)] 8点(2014-12-13 19:22:42)《改行有》

全部

Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS