145.《ネタバレ》 日本が誇る完璧な破壊神、今観てもこの迫力、緻密な仕事ぶりに日本のクラフトマンシップの神髄を感じて涙ぐんでしまうほどの出来栄えだ。21世紀の今、破壊される東京の街を観て私は模型だと感じなかったもの。唯一、叩き落されたヘリだけはどうしても模型だったけど。国会議事堂をバックに、燃えさかる帝都にそびえ立つ黒いゴジラのシルエット、この1シーンの見事さ、怖ろしさ、禍々しさ。当時戦禍の焼け跡をリアルに知る世代の人たちは悪夢の記憶をまざまざと呼び起こされたのではないだろうか。 ゴジラ、完璧だ。悪役だけど完璧さの美もあって、やっつけたくないという気持ちにもなるほどだ。宝田と河内が下手でがっくりくるんだけど、ゴジラが補って余りある。「皆さん、さようなら!」の絶叫とともに殉死したテレビクルーとゴジラと心中した芹沢博士、そして一度聞いたら忘れられない音楽に敬意を表して満点を献上いたします。 【tottoko】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2014-05-01 00:09:51) (良:1票) |
144.60年前の映画とは思えない映像の迫力とメッセージ性に脱帽です 【pillows】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-04-05 03:40:26) |
143.●元祖怪獣映画を今頃鑑賞。面白いを通り越して衝撃を受けました。今年見た映画で間違いなく一番です(まだ3月ですが)●ゴジラが怖い。容赦なく町を破壊し、人間を殺す。まごうことなき恐怖の化身として描かれている。白黒画面で見えにくいのが却って良い。 ●娯楽作品というより核兵器が存在する世界へ警鐘を鳴らすための手段ですね。それも大真面目。芹沢がゴジラを殺しうる超兵器を持ちながら使用をためらう理由などアインシュタインら核物理学者の苦悩をなぞったものではないでしょうか。山根博士の「最後の一匹とは思えない・・・」も深さを感じる。核兵器競争を止めない限り人類は滅ぶしかない・・・。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 10点(2014-03-25 20:55:12) |
142.久しぶりに見ました。この頃の映画の常として、時間が比較的短い(その中では長い方かも)。なので特に前半はポンポン話が進みます。このテンポ感がいい。ムダな説明を省いて観客にちゃんと話を理解させるところが、本多演出の真骨頂でしょう。 内容的には改めて言うことはないですが、一部大仰な演技のところがあり、全体がリアルなタッチで描かれているだけに、妙に浮いてしまっていたのが残念でした。しかしそれ以外は、今見てもよく作ってあるなぁと感じさせます。 それにしても、子供の放射能を本当に測定するような時代が来るとは、考えてもみませんでした。最後の山根博士の台詞にあるように、21世紀のゴジラもあれが最後の一匹というわけではなさそうです。そう考えると、この作品の存在意義は60年経った現代でもあるというか、ある意味時代がゴジラに追いついてきたと言えるかもしれません。なんという予見性か。〔レビュー600本目〕 [2014年06月13日追記]劇場で「60周年記念リマスター版」を鑑賞してきました。映像はもちろんのこと、音声が非常にクリアになっていて感動的でした。現在では機器の性能が向上していますから、音に関しては初公開時以上かも。リマスター版制作に拍手を。 【アングロファイル】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-03-15 21:27:52) |
141.《ネタバレ》 今見ても古さを感じさせない、なんて言いません。 やはり今みたら古い。さすがに特撮は稚拙に感じられる場面が多かったです。 ただ、その古さが絶妙にゴジラのイメージにはまっていたように思います。 オープニングなんかメチャメチャ古いのに物凄くゴジラにマッチしています。 ゴジラが街を破壊するシーンを見るに、モノクロ映画がこれほど似合う映画があるかと思うくらい・・・いっそのことハリウッドの最新版もモノクロでやったほうがいいのでは。 テーマもシンプル明確で、最後の必殺兵器を使うまでの経緯を非常に大事にしているのが印象的でした。 安易に核兵器で収束を図るハリウッド映画は見習ってほしいものです。 もう本作のゴジラの後にゴジラなしとしか言いようがありません。 後世のゴジラは何か余分なものを付け足して自滅しているように思います。 【午の若丸】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-02-03 00:13:43) (良:1票) |
140.《ネタバレ》 ティリティ、ティリティと有名なBGMバックに始まるオープニング。なんだかテンションが上がります。このBGMは「ジョーズ」のようにゴジラ登場シーンにのみ使用されると勘違いしてまして、実際には様々なシーンで使われてました。古い作品ですので、着ぐるみが模型を壊しているあたりは無視して鑑賞。水爆とか言われても子供には難しく、話の内容もシリアスで青年からを対象にしているような作品に仕上がっています。ラストもあっさりしていて、エンディングもありません。口からの光線は、時代のせいか迫力がなく、破壊というより火事を起こさせる霧吹きのようでした。CG慣れした現在っ子には見向きもされないでしょうが、歴史映画としての価値はありそうです。 【マーク・ハント】さん [DVD(邦画)] 5点(2014-01-18 11:47:48) |
139.《ネタバレ》 ゴジラシリーズの中でも記念碑的な第一作目 以前見た時は画質がいまいちでこんなものかと思ったが、今回高画質版で見直すとこれがけっこうイイ 怪獣映画としてはもしかして史上最高シリアス その後の怪獣映画にかならず有るギャグパートがまるでない 原子力あるいは水爆実験を具体的な例を出して警鐘を鳴らす作りになっている 終戦から10年も経っていないし、国際法上の終戦(サンフランシスコ平和条約)からはわずか2年後だ まだまだ当時は気持ち的に原爆怖いの図式が濃かったのではなかろうか ゴジラが銀座で暴れた直後の凄惨な惨状の中で、ガイガーカウンターを一見健康に見える少女に向けて、哀しげに首を振るドクターの姿には正直衝撃を受けた 崩れ行く松坂屋デパートの片隅で、3人の子供を抱えてうずくまる母親が「もうすぐお父さんの所に行くのよ」などと言うが、最近のデストピア映画の表現すら軽く越えていると思った 3人の子供だぞ、心底ゾッとした 銀座を破壊するゴジラの特撮もその後のゴジラシリーズと比べても遜色無い出来だ ゴジラのテーマ曲もシリーズを通して50年も使われている奇跡的な名曲としかいいようがない シリーズとしてというよりもモンスターSFとしても世界的な傑作だと思う 【にょろぞう】さん [ブルーレイ(邦画)] 9点(2013-12-24 12:48:06) |
138.《ネタバレ》 こんなにも有名なのになぜか敬遠していて今まで見ていなかったのでついに鑑賞。ううむ、確かに単なる娯楽映画でも怪獣映画でもないし、邦画として世界に名だたる理由も分かる。 ■なかなか姿を見せないのはパニック系の鉄板だが、容赦なく船が沈められるのに姿は一向に見えない。そして出現が白昼いきなりで、しかも山の向こうからというかなりの不意打ちで上手い。 ■ミニチュアのセットなどはいま見るとあまりにお粗末であり、むしろ可愛らしいぐらいだが、その辺は時代を割り引いてみるべき。それでも、東京中が火の海になるのは、戦後間もない映画としては相当に衝撃的だったはず(他のレビュワーさんによると、ゴジラの通った経路は東京大空襲のそれと同じらしい)。撮影の裏話はプロジェクトXで以前やっていたが、相当苦労したらしい。 ■しかし何と言っても最大のジレンマは、大量破壊兵器(水爆)の生んだ怪物は、大量破壊兵器(オキシジェン・デストロイヤー)で倒すしかないというあたりか。メッセージは明確に反戦ではあるが、それへの対抗としては武器をもってするしかなかったという苦渋さが感じられる。最後は科学者の良心が自らを投げ打って日本を救うわけだが、全くすっきりはしない終わり方。 【θ】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-12-31 00:17:47) |
137.《ネタバレ》 それまで怪獣バトルの映画シリーズとしてしか、ゴジラを知らなかった私は、今から約30年前、高校を卒業した頃にやっと、これを見て驚いた。怪獣映画ではあるが、一般のパニック・サスペンス映画として、たいへん優れていると。 発端の事故から、次第に事の真相が明らかになってきて、その正体を現す厄災。船なんか3回も沈められて、まだ姿を現さない。この焦らし方、ゾクゾクさせるやり方は、サスペンスの定石だ。どう結び付くのかわからないサイドストーリーが、解決に結び付くさま。そして、何と言ってもゴジラの銀座での大暴れ。俯瞰のショットを巧く使っているとはよく言われることだが、もう一つ、計算ずくなのかどうか不明だが、黒つぶれで、全てをくっきり見せるわけではない画面、それによる恐怖。実に見事なパニック映画だ。 そして、ゴジラが評価されている最も大きな理由、ゴジラの精神的柱とも言える、核兵器への批判、反戦・平和への主張。長崎から逃げてきた女や、戦争によってお父さんを失った家族などを巧みに描写して、戦争・原爆の記憶を引き出し、その恐怖とダブらせて、巨大生物を見せる手管。全く見事だという他ない。 【訂正】俯瞰ではなく仰観でした。 【Tolbie】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-10-31 22:54:00) (良:2票) |
136.SF怪獣パニック映画だが決して子供向け、マニア向けというわけでもなく、大衆娯楽作品とも分類されない至高の社会派作品。 そもそもどういうコンセプトでこの作品が誕生したのかはわからないが 一見突飛なSF色を持ちながらもものすごく真面目に作ってありスタッフの気概が感じられる。 善悪とか恐怖とかでは語りつくせない無常さ。 正に金字塔。 【Arufu】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2012-09-02 05:40:36) |
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135.《ネタバレ》 目が肥えた今観ると粗が見えなくもないですが、間違いなく怪獣映画の金字塔。 神格化され過ぎとの意見も解らなくもないが、これこそ神格化して良い映画だとも思う。 どんなに最近のCGが素晴らしかろうが、この映画の特撮には味がある。 言うならば、高級レストランのカレーは確かに美味いかもだが、バーベキューで皆で飯盒と鍋で作ったカレーが美味いみたいな・・・(たまに失敗もあろうが。) また、ゴジラ出現の際のテーマ曲が物凄く秀逸。 これほど映像と曲がマッチするのって、なかなかないと思う。 世界に誇れるのは黒澤や小津でもなく、この映画では?とすら思える映画でした(勿論、黒澤や小津も素晴らしいですよ、念の為)。 【ぐうたらパパ】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-07-07 07:19:04) |
134.《ネタバレ》 ゴジラといえば子ども向けな映画 正直そう思ってました 記念すべき第一作である本作は 全くそんなことがない 大真面目な映画でした 戦後の復興の中 まだ戦争の傷がいえない時期 反原水爆・反戦をテーマにした内容のモノを世に出した気概を感じます 確かに特撮部分はチョット切ないけど、今から60年近く前にしてはものすごく頑張ってる あともう一つ 作中のセリフがとても丁寧な言葉づかいで つつましい日本人の姿が描かれている印象を受けましたね もういうまでもなく有名で誰もが知ってる「ゴジラ」 革命的な怪獣映画のパイオニア そんななかにあるしっかりとした強いメッセージ 後世の歴史に大きな影響を与えたのも十分納得の一作でゴザイマシタ 【Kaname】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-07-03 08:07:30) (良:1票) |
133.《ネタバレ》 世界の映画史の中でも非常に重要な1本ですね。ここから今現在にいたる特撮が一気に花開きました。 またダイレクトに突き刺さる反戦・反核兵器への痛烈なメッセージ。(ゴジラが東京を破壊した経路は東京大空襲と同じルートらしいです。)戦後間もない街を破壊し尽くすゴジラ。当時の日本人はきっと戦慄したはずです。 地べたを逃げ惑う人々を邪悪な目で見下ろす黒い物体。そんなゴジラの目線が恐ろしい。 たとえSFでもその破壊の恐怖とリアリティはほかのシリーズとは別格です。 幼い頃にみてからというものすっかりゴジラファンになってしまいました。 そんな意味でも私の人生に大きな影響を与えている一本です。 【ideko】さん [ビデオ(邦画)] 10点(2012-02-20 15:17:00) |
132.《ネタバレ》 水爆の落とし子、"ゴジラ"。戦後10年も経たずにこの映画が作られたのは奇跡であり必然でもあると思います。反戦・反核のメッセージが色濃く出た作品で、この映画が当時大ヒットしたことを考えると、国民がそういう作品を望んでいたのだと良く分かります。ゴジラが撒き散らす放射能によって病院の患者にガイガーカウンターを向ける看護婦たち、火の海と化した銀座の風景を見ながら「チクショウ、チクショウ」と呟く市民、オキシジェン・デストロイヤーについて「こんな危険なものを為政者が黙って見てる訳がない、必ず兵器に転用するだろう」として原爆・水爆を引き合いに出し使用を躊躇う芹沢博士、ゴジラの情報をひた隠しにしようとする議員とそれに反対する婦人団体。あらゆる場面が先の愚かな戦争への自己反省と怒りとして表現され、今観ても考えさせられる、学ぶべきシーンが多々ありました。 円谷英二による特撮も当然ながら素晴らしい。丘から現れるゴジラのファースト・インパクトは勿論のこと、電車・駅の破壊、東京大空襲さながらに東京を廃墟と化す大破壊、今観てもチープさは全く感じられない。モノクロであることが記録映画の様な生々しさを醸し出しているからなのかも知れません。 基本的にゴジラの大暴れに人間は為す術もなく虐殺されるだけである。電車を潰された乗客、タワーから墜落するテレビ中継班、「(戦争で亡くなったのだろう)もうすぐお父ちゃまのところに行くのよ……」と死を受け入れる女性、ゴジラは正に現れたが最後、容赦なく人々の命を刈り取る原爆・水爆そのものです。あの時代だからこそ作れた、永久に人々の心を捉え続けるであろう傑作、正に日本の宝です。 【民朗】さん [映画館(邦画)] 9点(2011-11-12 09:48:35) (良:1票) |
131.記念すべき、「ゴジラ」の第1作目。 怪獣映画なのに、おちゃらけたシーンがほとんどないのがいい。 上映時間が短いためか、序盤はバタバタしていて、脚本にも甘さは見られるけど、 ゴジラが東京に上陸してからはじっくりと見せてくれた。 とにかくこの作品のゴジラは非常にカッコいい。動きも雄大でどっしりとしており、 モノクロ映像が幸か不幸か、ゴジラにゾッとさせるような不気味さを与えている。 反戦のテーマという、強烈なメッセージが織り込まれている点もポイントが高い。 ということで、ちょっと甘めだけど8点をつけさせていただきます。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-07-25 05:13:36) |
130.《ネタバレ》 世代的には1980年代ゴジラ世代なんだが、なぜか縁がなくて、ほとんどの作品をちゃんと見た記憶がない。というわけで思い入れも何もなく、何となく見てしまった第一作。正直おどろいた。ゴジラが恐ろしい。怪獣映画をちゃんと見てこなかった人間にとっては、ゴジラなんて、TDLのミッキーマウスばりに、宣伝のためにあちこちで愛想を振りまく着ぐるみのイメージのほうが先行してた。そのゴジラが、人間を「狙って」殺しまくる。女性も子どもも関係なく放射能をまき散らす。そして、そのゴジラを葬れるのは、ゴジラを生んだものと同じ「大量殺戮兵器」しかないというジレンマ。演技や演出には時代を感じる稚拙な点もある。けれど、無差別爆撃と原爆が「記憶」ではなく「体験」として残っていた時代に、こんな映画を作った製作陣はすごい。戦争を「体験」として知っている多くの日本人がこの映画を見て、大ヒットさせたという事実もすごい。僕は、この映画をリアルタイムで見ることはできなかったけど、震災と原発事故を「体験」した2011年のいま初めてみることができたのは、とても意味があることだったと思う。これぞ、真の意味での国民的映画と呼ぶべき作品だ。 【ころりさん】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-06-21 14:21:49) |
129.怪獣映画と日本の特撮技術の原点となる映画で、歴史に残る貴重なものであろう。だから評価が高くなるのは当然だが、私にすればいくら何でも点数が高すぎるのではなかろうかと思う。 ゴジラの出現は水爆実験に起因していて、自然災害とは異なり、人間が生み出した恐怖の象徴として描かれていたはずだ。いわば人間の愚かさに対する警鐘である。それが次々と続編や類字映画が出現するにつれ、子ども向けの怪獣映画、こわかった、おそろしかった、でもやっつけてよかったという娯楽映画になってしまった。 私が言いたいのは、その誤った方向へ導く要素が、この映画にすでにあったのではないだろうかということである。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-05-24 07:43:47) |
128.《ネタバレ》 日本特撮怪獣映画の原点にして頂点。おそらく本作を超える怪獣映画はどんなに頑張っても製作出来ないだろう。自分が生まれて初めて観た怪獣映画がNHKで放映された『ゴジラ』だったのは感慨深いものがあります(たしか日曜日の夕方だったことまで40年以上たっても記憶に残っています)。 円谷英二の特撮は単なる技術の成果ではなく、ゴジラの「見せ方」へのこだわりがリアルな恐怖を生んでいる。当時のハリウッド映画では主流ではなかったゴジラのスーツアクションも、技術的に未熟だったためにあまりに重くなり過ぎたことが却って“巨大な生物”としての生態を感じさせることに成功しています。 そして海外の人には決して理解されそうもないのが、日本人にとってゴジラは“戦争の災禍”と“核の恐怖”の表象として恐怖心理を刺激することでしょう。シリーズを重ねるごとにゴジラの恐怖が薄れてゆくのは、戦後の復興と経済成長が重ね合わされて興味深いところです。しかし21世紀の今日、日本人は再び“原発が吐き出す放射能の恐怖”に直面させられることになったわけで、『ゴジラ』が持つテーマ性はこれからも色あせることはないでしょう。 【S&S】さん [地上波(邦画)] 10点(2011-04-07 00:16:48) (良:1票) |
127.《ネタバレ》 ◆単純な怪獣映画ではなく、反核、反戦をテーマとした映画。特撮の傑作というより、時代を越えた奇跡の職人芸、手作りの傑作。それを可能にしたのは、製作者全員に反戦・反核の想いがあったからだろう。企画の少し前に、第五福竜丸事件が発生している。日本人なら誰しも心を痛めた事件。愚かな水爆実験を繰り返す人類への反省が込められている。◆対策本部に殺到する沈没船の乗務員の遺族たち、巨大な足跡に検出される放射能、猛火の中を逃げまどう人々、ビルの下で父親の元へ行くのよと子供を抱きしめる母親、長崎で生き延びた命なのにという女、また疎開かとうんざりする男、病院で母を求めて泣く子供、被爆した子供になすすべなくうなだれる医者、、平和の祈りを歌う少女たち。あらゆる場面に戦争、空襲、原爆被害へのオマージュが満ち満ちている。だからこそゴジラは反戦を誓う日本人のDNAに訴えるものがある。◆芹沢博士はオキシジュン・デストロイヤを「絶対に兵器として使用してはならない。使うのは今回の一度きり」と決意し、その秘密を守るために自ら死へと赴いた。芹沢博士だけが特別正義感が強いのではない。戦争を経験した者なら、誰でも戦争など二度とあってはならないと願うのだ。博士にも幸福を夢みていた頃があった。好きな研究をし、山根博士の娘と結婚し、壻養子となることが約束されていた。だが戦争で片目を失い、婚約も破棄同然。研究成果も兵器として利用されかねないもので、平和利用できるまで発表もできなかった。そしてゴジラを倒すためには自らを犠牲にしなければならなくなる。これは戦争末期の神風攻撃隊を想起させる。博士の場合は命のみならず、研究成果も葬らなければならなかったのだ。この悲劇性がドラマを盛り上げている。◆ゴジラとは何か?単に町を破壊するだけの怪獣ではない。水爆の洗礼を受けても尚生きている古代生物。その巨大さ、生命の逞しさを想う時、畏怖というものを感じる。ゴジラは人間に被害を及ぼすが、ゴジラを憎みきることはできない。ゴジラは水爆実験の被害者でもある。平穏な住処を破壊されて、仕方無く上陸するようになったのだ。ゴジラは生命の尊厳の象徴であり、同時に恐怖の象徴である。恐怖とは戦争であり、核兵器のこと。つまり人間の心の闇だろう。山根博士は第二、第三のゴジラの出現を予言して映画は終る。ゴジラの再来=次の戦争への恐怖となり、強い余韻が残る。 【よしのぶ】さん [ビデオ(邦画)] 10点(2010-10-14 03:30:37) |
126.《ネタバレ》 圧倒的な破壊、被災する都市、そして無数の犠牲者達…。乙女達の歌う平和への祈りの曲をバックに写し出される瓦礫の山となった東京の姿…。これはマジで「戦争映画」そのものでしたね。その「悲惨さ」と「恐怖」を見事に表現した、あまりにも有名な伊福部昭さんの音楽も神レベルです。その後に続く「ゴジラシリーズ」との大きな違いは、ゴジラに「殺される」人間達の姿がリアルに描かれていたことだと確信(逃げ遅れた母子のシーンがキツすぎる…)。 一方で、どうにもテンポが悪すぎて(現代の観客には)かったるく見えたドラマパート(恋愛成分)ですが、平田昭彦氏演じた芹沢博士が超カッケー!超クール!なのに免じて許してあげましょう。(俺は芹沢さんが恵美子にオキシジェンデストロイヤーの事を教えたのは「バレるのを無意識に望んでいたから」ではないか…とも妄想しましたがどうでしょう?自分が悪魔の発明をしてしまった事に対しての「自分なりの落とし前の付け方」として、想いを寄せる恵美子に背中を押してもらいたかったのでは…な~んて。まぁ、あくまでも妄想ですが…) また、スピルバーグは『ジュラシックパーク』『宇宙戦争』等でかなり忠実に『ゴジラ』を引用していたんだな、と改めて実感。 ※ちなみに鑑賞環境を「映画館」にしましたが、実は地元の東宝系老舗映画館が先日閉館する際「サヨナラ特別上映」として何本か上映したうちの一本が『ゴジラ』だったんですよ!これが初見だった俺には、なんとも贅沢な体験でした! 【幻覚@蛇プニョ】さん [映画館(邦画)] 9点(2010-08-31 14:28:52) (良:1票) |