1.《ネタバレ》 今年の『クレしん』映画は今までの中でもベスト級の作品だったと思うわ。
学園ミステリーっていう「らしくない」設定であるにも関わらず『クレしん』映画として、そして娯楽エンターテインメントとして、とても純度の高い作品になっているの。
『クレしん』映画が陥りやすい難点、結局は毎度の「野原一家ファイヤー!」な家族の物語か「かすかべ防衛隊ファイヤー!」な友情の物語に帰結して終わりになるパターンと、最近の作品に顕著だったしんのすけを始めとするレギュラーメンバーがゲストキャラクターの引き立て役に終始しまうパターン。でも今回の映画は両方の要素を拾いつつもそのマンネリなパターンに陥る事を回避しているのね。
今作ではかすかべ防衛隊の5人がメインで、だけど学園に乗り込む事で大量のゲストキャラクターが登場するわ。バリエーション豊かな個性的な面々。脚本はかすかべ防衛隊の個々のメンバーと学園の生徒たちとの繋がりのドラマを多層的に紡いでゆくのね。カスカベ防衛隊で固まってしまう事なくレギュラーの面々とゲストの面々とが有機的に映画を構成してゆくの。それぞれみんなが魅力を持っていて。
ミステリー展開はおふざけでいい加減な作りではなくて「吸ケツ鬼は一体誰なのか」っていう謎と推理とをちゃんと見せてくれるのね(『クレしん』的飛躍の設定が絡む部分はあるにしても)。
そして事件が解決したかと思われた後に続く、最初は蛇足にも思えたかすかべ防衛隊の5人と生徒達が紡いだドラマが開花する感動的なクライマックスの盛り上がりと感動。ミステリー部分が物語の核ではなくて、あの2人こそが、永遠ではないこの一瞬の時が大切だと語る2人こそが今回の映画の核だと判る、『クレヨンしんちゃん』の大切な物語として昇華されるラストシーン。とても巧く美しく書けた脚本だと思うわ。
みさえとひろし(そしてひまわりとシロ)は出番こそ少ないけれど(いつもからすれば極端に少ない、ってレベルね)見事に「起・承・転・結」の要所を締めてみせてるの。
『オトナ帝国』とか『アッパレ戦国』、近作だと『新婚旅行ハリケーン』みたいな「名作だけどコレ子供楽しめてるのかいな?」っていうものとも違って、今回は子供から大人まで『クレヨンしんちゃん』が好きな全ての世代に対応した名作だったわ。