1.《ネタバレ》 私にとってこれは「はばはば」の映画である。ラスト、退社時の原知佐子が司葉子に「はばはば」と言うのである。そんな言葉聞いたことないから私はうろたえた。なのに周囲をうかがうと、お年を召した観客の方はうろたえず泰然とスクリーンを見ている。さらに退館時に「はばはばかあ」などと懐かしがってさえいる。ある世代にとっては謎の言葉ではないらしい。後で調べたら大きい字引になら載っている言葉だった。「ハバハバ『感動詞』早く早く。相手に対して促して言う語。第二次世界大戦後、駐留軍のアメリカ兵が伝えて、流行したもの」。勉強になった。その後、戦後のラジオ番組「日曜娯楽版」で使われていたのも耳にした。それはともかく、これ働く女性群像ものの映画。アネゴ肌の大塚道子、男に貢いで身を滅ぼす水野久美、金貸しやってる原、主人公の姉森光子は嬉々として男に尽くす古風なタイプ。こういった群像を散らしておいて、主人公の司が、接待マージャンでも本気で勝ちにいくシャープな性格。かっこいいんです。昭和30年代の風物も味わい。銀座には線を引いただけの横断歩道に、まだあるゴミ箱。御茶ノ水では花屋の移動屋台が出ていた。