12.《ネタバレ》 お話としてはよくできているが、良くも悪くも韓国映画によく見られるあざとさで、ストーリーの先が見えてしまう。
サンフンは因果応報の殺され方をすると前半でもう予想がついてしまうが、彼女と一緒に歩んでいくためにも今日で仕事を辞めると決めて最後の取り立てに行く時点で、悲劇のフラグがはっきりと。
幸せを掴む直前でぶち壊しにされるのは、あまりにも王道すぎるパターンだから。
そんなわかりきった展開でも退屈しなかったのは、演技が上手いからか。
特に、ヨニ役のキム・コッピが良かった。
サンフン役で監督・脚本も兼ねているヤン・イクチュンも良かったけど、フジモンにそっくりと感じてしまったのがずっと尾を引いて…。
日本でいうなら長渕剛がよくやっていたような役なのに、フジモンが浮かんでは微妙な感じに。
主人公のチンピラに感情移入できれば感動もできたかもしれないが、哀れな奴だとは思えてもまったく同情はできず。
こういう人間は好きになれないし、主人公に惹かれないとどうしても作品の印象は下がる。
不幸な生い立ちなのはわかるが、恨みを晴らすのなら自分を酷い目に遭わせた相手にだけすればいい。
激情的で恨みがましく、八つ当たりのようにだれかれ構わず暴力を振るいまくるさまは、迷惑なクズ以外の何ものでもない。
よくある凶悪犯の弁護で不幸な環境のせいにするのと一緒で、甘ったれるなと反吐が出る。
そんなものは被害者には何の関係もないし、不幸な身の上でも歯を食いしばって真面目に生きている人は山ほどいる。
いい年をした大の男が、いつまでもグレた中学生のようでは情けない。
その点、同じような息もできないほど閉塞的で劣悪な環境にありながら、女子高生の真っ直ぐに澄んだ瞳と健気さが眩しくて、彼女にだけは同情してしまう。
心はボロボロになっているのに、荒みきった男の心を溶かすほどの芯の強い優しさは、聖母のようだ。
そんな心優しき女子高生が呆然と立ち尽くすラストはやりきれない。
ヨニの母に暴力を振るって殺した取立て屋が実はサンフンら一味だと、最後まで気が付かなかったのが救いだろうか。
暴力は新たな暴力を生む。
戦争が止められないのと同じ類の虚しさが、余韻として残る。
同時に、韓国社会や国民情緒の負の一面も感じてしまう。
※追記
二度目に見ると、フジモン似は気にならなくなって映画の内容に入り込めたので5→7に印象アップ。
サンフンは嫌いだが、やっぱりヨニが健気で良い。