2.《ネタバレ》 見る前は、「アンタッチャブル」に似たようなイメージを抱いていたので、正直肩透かしを食らわされたような感じを受けました。特捜班の捜査に立ちふさがるFBIと軍、という大がかりな事件を扱ったわりに、女性関係というプライベートな要素がストーリーの主軸になっていて、どこかちぐはぐな印象を持ってしまいました。
ですが、この作品の魅力の中心は、やはりニック・ノルティ演じる主人公の人間像にあると思います。彼は、仕事に精力を注ぎ、家庭を守ろうとし、時には行動を間違える、古き時代のアメリカの男で、こういった人物はニック・ノルティのはまり役だと思います。彼が演じることによって、真面目で、無骨で、いささか小心的な主人公が、愛すべき人物に見えるのではないでしょうか。女性の視点から見れば、彼の浮気は許しがたい行為であり、ラストでメラニー・グリフィスは去って行きますが、男性はそれに対しどうすることも出来ないニック・ノルティの、不器用な男の悲しき姿を自分に重ねるのではないでしょうか。日本映画で言うところの、高倉健が演じてきたキャラクターと同じ線上に位置すると思います。
真面目に、懸命に働き、時には道を間違え、大切なものを失ってしまう。ニック・ノルティこそ、そんな男たちの象徴なのかも知れません。