1.《ネタバレ》 2000年の事故なんだよねこれ?ソ連時代の話かと思ってしまうよ。ロシア軍部の体質がソ連の瑕疵をまんま継承してるのに驚愕した。
足りない予算、低い安全遵守意識と人命軽視、乗員家族への雑な対応。国の無策と面子優先の愚行によって命を落としたクルスクの乗員。制作陣の憤りが増幅されてこちらにも届く。椅子に縛り付けてでもロシアのトップにこの映画を観せたい。
映画は現場の乗員らとその家族、ロシア海軍に加えて英国海軍といくつも視点を用意しているのだけど、整理されている脚本でした。
第七区画司令官以下二十三名の乗員らの造形が際立って丹念で、共産圏であろうと同じ人間に対して払う監督の敬意を大いに感じるものでした。危機的状況にあって、冷静さを保ってリーダーシップを執るM・スーナールツ演じる司令官や小話や冗談で空気をちょっと軽くする技術員、パニックになる者ももちろん現れる。創作だとしても、そこにいたのはリアルな人間だと強く伝わって胸が痛い。
演技達者なキャスティング揃いで、話がたるみなく展開します。なかでもM・フォン・シドーの海軍大将は圧巻。ラストの、子どもに握手を拒絶された時の表情が驚きのようであり、屈辱のようであり、なんかもう凄かった。
国家はこんな酷いことをする。人として忘れてはならない、後世に伝えねばならない。その使命を果たすべく制作された意義の大きい作品と思います。