1.《ネタバレ》 東映のヤクザ映画というと明治や大正が舞台で着流しにドスというのを思い浮かべるが、本作はまだ任侠路線が確立する前の映画で、製作当時の現代が舞台で、鶴田浩二演じる主人公ら登場人物たちがスーツにピストルといういで立ちなのが新鮮だし、悪役である安部徹を殺すのが主人公ではないというのも意外に感じる。この後、鶴田浩二とともに任侠映画を引っ張っていく高倉健が二番クレジットで出演しているが、話の中心は鶴田浩二と三國連太郎であり、後年の高倉健と鶴田浩二が共演する任侠映画を見慣れていると少し物足りない気がしないでもないのだが、鶴田浩二と三國連太郎という珍しいこの二人の共演がなかなか見ものだった。高倉健はまだ本格的に売れる前で、思いっきり若手のぺーぺーという感じ(「宮本武蔵」シリーズで佐々木小次郎を演じるよりも前。)なのだが、それもまた新鮮に感じた。井上梅次監督の初の東映作品だそうだが、アクション映画としてもけっこううまい作りになっているのは、さすが日活からフリーになった監督という気がする。クライマックスの入り乱れての銃撃戦はジョン・ウー監督がリメイクしてもおかしくないような壮絶さで、かなり見ごたえがあり、印象にも残る。このシーンに1点プラスの7点。虚しさの残るラストシーンも良かった。