1.タイトルには”続”とありますが、ナタリー・ドロン主演の『個人教授』とも『新・個人教授』ともまったく関係ありません。フレンチ・ミステリー界の鬼才セバスチャン・ジャプリゾが、まだ10代で本名のジャン・バティスト・ロッシの名前で発表した自伝的小説『不幸な出発』を、やはりロッシ名義で映画化したもの。年上の修道尼と15歳の少年の悲恋を、第二次大戦下の生活風景を交えつつ、なかなか情感豊かに描いていきます。原作がフランスのお家芸である心理的あやを綿密に追ったもの(多分…邦訳はあるみたいなんだけど、未読。仏文の友人からのまた聞きです)であるのに対し、映画は主人公たちのかなわぬ恋というより、ひとつの過去を振り返り、懐かしむといったノスタルジックな気配が濃厚。ヘタすりゃ老人の青春(性春?)回顧ものという鼻持ちならないシロモノになりかねないところを、ロッシ(ジャプリゾ)にとっては未だこの恋が、心に痛みを伴って生き続けていることが伝わってくることで、現在進行形の「映画」として成立している。エロくはありませんが、10代で見ると「ああ、オレもあんな年上の女性とおつきあいしたい…」と主人公の少年に嫉妬し、オジサンたちは「修道女ものとしては、これくらいのおとなしさが逆にソソるぜ」なんて楽しみ方も、まあ、出来なくもありません。冗談はともかく、悪くない映画ですよ。