21.《ネタバレ》 合唱のシーンは、素晴らしいの一言。
ただ唄うだけではなくて、スポーツと同じように身体を鍛える必要もあると示す練習シーンを、事前に積み重ねておいた辺りも上手かったですね。
皆の努力の成果である歌声に、純粋に感動する事が出来ました。
その他にも、色々と「泣かせる」要素の多い映画であり、それに対して感心すると同時に「ちょっと、詰め込み過ぎたんじゃないか?」と思えたりもして、そこは残念。
特に気になったのが「柏木先生がピアノを弾けなくなった理由」で、どうも納得出来ない。
「私のピアノは誰も幸せにしない」って、誰かを幸せにする為じゃないとピアノを弾きたくないの? と思えてしまったのですよね。
終盤、その台詞が伏線となり「出産が無事に済む」=「音楽は誰かを幸せにする力がある」という形で昇華される訳ですが、ちょっとその辺りの流れも唐突。
世間話の中で「実は先生は心臓が弱い」という情報が明らかになってから、僅か三分程度で容態が急変する展開ですからね。
これには流石に「無理矢理過ぎるよ……」と気持ちが醒めてしまいました。
「マイバラード」を他の学校の合唱部まで唄い出すというのも、場所やら何やらを考えると、少し不自然かと。
個人的には、音楽というものは存在自体が美しくて素晴らしいのだから「音楽は素晴らしい」だけで完結させずに「……何故なら、人の命を救うから」という実利的な面を付け足すような真似は、必要無かったんじゃないかな、と思う次第です。
終盤の合唱シーンは、ただそれだけでも感動させる力があったと思うので、もっと歌本来の力を信じて、シンプルな演出にしてもらいたかったところ。
主人公を複数用意し、群像劇として描いているのは、とても良かったですね。
合唱というテーマとの相性の良さを感じさせてくれました。
特に印象深いのが、自閉症の兄を持つ少年の存在。
彼が「天使の歌声」の持ち主である事が判明する場面では「才能を発見する喜び」を味わえましたし、内気な彼が少しずつクラスメイトと仲良くなっていく姿も、実に微笑ましかったです。
「兄が自閉症だったお蔭で、僕は生まれてくる事が出来た」という独白も、強烈なインパクトを備えており、色々と考えさせられるものがありました。
欲を言えば「アンタもおって良かった」という優しい言葉を、彼にも聞かせてあげて欲しかったですね。
ストーリーを彩る長崎弁は、耳に心地良く、のどかな島の風景と併せて、何だか懐かしい気分に浸らせてくれます。
細かな部分が気になったりもしたけれど、それを差し引いても「良い映画だった」と、しみじみ思える一品でした。