1.《ネタバレ》 1950年代、ニューヨーク。生まれつき自分の意志に反して突然大きな声をあげたり痙攣的な発作を起こしてしまうという障碍――いわゆるチック症を患う私立探偵ライオネルは、幼いころ両親に捨てられ孤児院で育った天涯孤独の身。現在彼は、そんな自分を引き取ってくれた育ての親でもある探偵事務所のボス、フランクの下で働いている。障碍を抱えながらも類稀なる記憶力を持つライオネルは、今やフランクの右腕と言ってもいい立場に立っていた。そんなある日、謎の女を巡る胡散臭い事案に首を突っ込んでいたフランクが、無残な死体となって発見されるのだった。突然のことに、深い哀しみに沈むライオネル。フランクの無念を晴らすため、彼が最後に追っていたという謎の女を求めてライオネルは捜査を開始する。浮かび上がってきたのは、ブルックリンの都市開発利権を巡る権力者たちの深い闇だった。果たしてフランクを殺したのは誰なのか?そして彼は生前何をしようとしていたのか?人並外れた記憶力のみを頼りに、ライオネルは事件の真相へと迫ってゆくのだが……。名優エドワード・ノートンが監督・脚本・主演を務めたという本作、ブルース・ウィリスやウィレム・デフォー、アレック・ボールドウィンといった渋めどころの豪華俳優陣にも惹かれて、この度鑑賞してみました。夜の街の匂いを濃厚に漂わせるこのノワールな雰囲気やジャジーで退廃的な音楽などは見応え充分。特に、チック症を患う私立探偵という難しい役どころを見事に演じ切ったエドワード・ノートンの圧倒的な演技力はさすがの貫禄でした。ただ、肝心のお話の方は正直どうなんでしょう。様々な要素を詰め込み過ぎていて、いまいち整理しきれていないような印象を僕は持ってしまいました。登場人物も多く、しかも相関関係がかなり複雑なので、最後までなんとも分かりにくいのです。原作は有名な賞に輝いたベストセラーらしいですけど、その取捨選択がいまいち巧く出来ていないような感じです。E・ノートンのこういう難役に挑んでみたいという思いが先行するあまり、脚本がおろそかになっちゃったパターンじゃないですかね。これなら脚本や監督は別のプロに頼んだ方が良かったのでは。エドワード・ノートン、昔から好きな俳優さんなだけになんとも勿体ない。