1.本作は演出のスタイリッシュばかりが注目されるが、「ハード・グッドバイ」と「イエローバスタード」は紛れも無く不器用な男たちの切ないラブストーリーだということに注意して欲しい。前者では、不器用だが、純粋な大男マーヴが名前も知らない女性の愛のために復讐を誓い、そして散っていく(準備を整えてリベンジ!という設定が面白い)。後者のエピソードは被害者の少女と老刑事の恋である。しかし、2人の関係は犯罪によって始まり、犯罪によって終わりを告げる。ラストは老刑事の哀愁をも感じさせて素晴らしい。一方、「ビッグ・ファット・キル」はギャング映画のようでラブ・ストーリーの面白みはない。しかし、これだけ奥の深いストーリーを扱っていながら、娯楽映画としても非常に完成度が高いのが本作の憎いところである。ある意味、オタク監督ロドリゲスでなければ撮れなかっただろう。ストーリーはもちろん、1カット、1カットまで原作に(タラのパートですら)忠実に作られており、フィルム・ノワールの影響を受けた原作の雰囲気は十二分に再現できていると言っていい(ラストはオリジナル)。とくにオープニングとそれに続く原画の流れるタイトル・クレジットだけでもゾクゾクするようなスタイリッシュさだ。オタク監督は個性派俳優を使わせるとベテラン監督以上にその個性を引き出せるのだ。本作では各エピソードの主役のM・ロークは粗野、C・オーウェンはとにかくクール、B・ウィリスは渋く、頼れるキャラを好演し、J・アルバは妖艶、B・デル・トロ、E・ウッドはまさに怪演である。エピソードの配置は「パルプ・フィクション」を髣髴とさせ、これまた絶妙だ。「ビッグ・ファット・キル」は、まさにサービス満載で、そういった意味ではこれがR・ロドリゲス監督の本領発揮であり、一番映画化に適したエピソードだったのかもしれない。つまり、娯楽要素はB・F・K>H・G>Y・Bなのだが、ドラマでは逆になっているのである。ドラマにおいては「パルプ・フィクション」のような娯楽面を押し出した映画とは一線を画している。本作は間違いなくロドリゲスの最高傑作だろう。これからはハードボイルドな雰囲気、登場人物には「F・ミラー的」という言葉を使いたい。ちなみに、初見はスタイリッシュさに酔いしれ、2度目はストーリーに注目する、という見方をお勧めする。続編にも期待したい。本当はもっと書きたいが、字数制限が