1.あれは85年頃だったか、普段はポルノ映画を上映してる薄暗い小さな映画館で、モッズファンの友達に誘われ、石井監督のこの映画を見た。石井監督の特集上映だったのか、同時上映は「爆裂都市」だった。ともかく後にも先にも、この映画を観たのは一度きりだったのに、あの時の、心が何かにギュッと鷲掴みにされたような抑揚感を邦画に感じたことはない。今まで洋画ばかり観てきた自分にとってカルチャー・ショックが走った。画面から伝わる荒々しさと生々しさが、この映画には確かにあった。あれから時が経ち、宝の箱に詰められたようなあの時の気持ちを今、感じられるのか、いささか怖いようにも思う、忘れ難いあの映画館での燃えるような空気。今だ特別な1本です。