1.江波杏子があまり好きではなかったのだが映画が始まってすぐの雨の中の佇まいにいきなり惚れた。まあ映し方もうまいんだろう。雨は笠で江波を隠すために降っているのだろう。で、その顔が映されるときに一種の高揚が得られるようになっている。ついでというわけではないが、天知茂の病床の女房役の松平純子って人は全然知らなかったんだけど、惚れた。病床なのにあの艶っぽさといったら! 私が惚れっぽいわけじゃない。本作と同じく蒸気機関車を超間近ローアングルでとらえた画を持つ『花と龍 青雲篇・愛憎篇・怒濤篇』ではやはりそれまで意識することもなかった香山美子に惚れ、『車夫遊侠伝 喧嘩辰』では怒った顔のアップばかりの桜町弘子に惚れたわけだから、たぶん加藤泰の仕業である。そんな凛とした江波に惚れるのは私ばかりではない。江波の一途で仁義に熱い生き様に惚れたことを証明する天知が発する「姐さん」という呼び方にゾクーーっとした。最後の一人に落とし前をつけるその場所に登場するシーンにゾクゾクーーっとした。そのかっこいい女が生まれるためには前半のみ出演の松方弘樹がどこまでもかっこいい男でなきゃいけないわけだが、そこは流石、風格が漂ってます。