5.「え?え?何するの?何するのーッ!?」てな感じの主人公のクライマックスでの“アクション”で、この映画のリアリティーラインは確定される。
そのライン設定は想定外ではあったが、それならそれで楽しい映画だったと言えよう。
同時期に公開された「ザ・レッジ -12時の死刑台-」という映画があり、その映画も一人の男がビルの縁に立つということから端を発するサスペンスだった。
着想は極めて類似しているが、描き出されたテイストは大いに異なっており、比較してみると結構ユニークだ。
「ザ・レッジ」は、色香に溢れた人妻役のリブ・タイラーを巡る色情濃サスペンスで、これはこれで想定外な映画世界に見応えがあった。
そして今作はというと、これまた想定外の“ケイパーもの”。繰広げられる強奪計画はフレッシュで充分な娯楽性を備えていたと思う。
勿論、手放しには褒められない粗はある。
ルパン三世ばりの綿密な強奪計画を、一介の刑事だった男が考えたというのはちょっと無理がある。
ただそこで冒頭に記したリアリティーラインが効いてくる。
こういうリアリティの映画であれば、少々無理目な強奪計画もまかり通るというもの。
強奪計画の実行犯を請け負う主人公の弟とその彼女のキャラクターも良く、それぞれが受け持つコメディ要素とセクシー要素は、この映画の娯楽性において意外な程に重要なものになり得ている。
底の浅い悪役にキャスティングされているエド・ハリスは勿体なかったが、全体的にはバランスの良いお手軽なエンターテイメントだと思う。