2.'60の安保闘争に始まり、東大・安田講堂での攻防、連合赤軍の浅間山荘事件を経て、丸の内ビル爆破事件へ・・・といった、それぞれの時代を象徴する出来事を、当時のニュース・フィルムを挿入しながら、この激動の時代を奔放に生きた、ひとりの女性の姿を切り取ったのが本作。ただひたすら堕ちていくしかない、その知華という女の体を時代が駆け抜けていく。彼女の生きざまに日本の戦後史を重ね合わせるというドラマツルギーは、いかにも日本という国家に拘り続けている原一男らしさに満ち溢れていて、これが初の劇映画とは言え、やはりどこまでもドキュメンタリー作家なのである。前述のシンボリックな時代背景が、彼が過ごした青春時代とも重なることを見ても、これらの時代をテーマにした事は至極当然なのである。だからなのであろうか、作品世界が60~70年代のATG映画そのものの肌ざわりなのである。個々のエピソードは男と女のドラマとして面白みもあるが、ただ戦後歩んできた日本の時代背景との関わり合いという点では、とりたてて深い意味合いは感じられなかった。また、知華を四人の女優に演じさせるというのは、それぞれの個性の競演という試みとしての面白さはあるが、ただそれだけに留まっていて、そこからさらに一歩弾けるような展開がみられなかったのは、まことに残念である。