1.山口百恵が芸能生活を生きてゆく上で参考になったのは芦川いづみのあり方だったそうだ。と週刊文春の座談会(おすぎ・大林宣彦等)で話が出ていた。なるほど確かに両者とも結婚引退し以降マスコミに顔を出さなかった事など共通点はあるにはある。ただ決定的に違っていたのは芦川いづみは「アイドル」ではない、女優としての力量を存分に発揮する前に消えていったという点ではなかったか。そんな彼女のベストは川島雄三「風船」であるのは『芦川いづみ会(なんじゃそりゃ)』の満場一致意見であるのだろうが、最良の一本としてはこの作品をあげたい。彼女はこの作品上のヒロインを演じ、純粋な美しさとはかなさで「道」のジェルソミーナに肩を並べた。話としては納得のいきかねるところがあるかもしれない(ありすぎだ!と友達はのたもうとる)。だがこの場合はアイ・ジョージと宍戸錠、芦川の傷ついたぼろ雑巾三人組の旅の成り行きを黙って見守るしかないのでは無いか。あと南田洋子の演技も特筆すべき。ちなみにこの映画、大林監督もベスト邦画30本の中に選んでおられます。