1.いや素晴らしい。この映画に減点要素があるとしたら、鶴田浩二の髪型が何となく変、ってことくらいじゃないでしょうか。
任侠映画の嚆矢とも言われる作品ですが、東映時代劇路線からの橋渡しのような作品でもあり、趣きがあります。暗めの映像、雨や雪、岩に砕ける波。そして随所で用いられるクレーン撮影、画面がビシっとキマります。
さらには何と言っても印象的な、鶴田浩二の横顔。やっぱり髪型が何となく変。ってのはどうでもよくって、耐える男の横顔が、いい。
健さんが若い。後の作品のような寡黙な役どころではなく、一本気の若者を熱演して、健さんらしからぬあんなことまで・・・。
月形龍之介がまた、いいんです。元・侠客の吉良常。定年後のサラリーマンみたいですが。飛車角の漢気に惚れる彼もまた、充分に惚れられる存在となっています。
ラストの坂は、任侠映画屈指の名シーンでもあり、任侠映画の型がまだなかった初期作品ならでは、とも言えそうです。