4.スパイもの特有の張りつめた空気や緊張感はあまり無く、
終盤明らかになる、探している人物が誰かについても、かなり早い段階で察しが付く。
ヒッチコックお得意の、恋に落ちる2人と敵のテンポの良い追いつ追われつがあったりする訳でもない。
しかしこの時代きっての怪優ピーター・ローレが非常にいい味を出していたり、
ジョン・ギールグッドの戦時中の将校らしい雰囲気を醸しながらも英国紳士然とした佇まいも絵になっており、
ヒロインのマデリーン・キャロルも含め主要キャスト3人が十分に楽しませてくれます。
同時期の作品である「第3逃亡者」でも見られる、ダンスホールなど多くの人でごったがえす中に
対象人物を絞っていく見せ方、小道具の使い方など、本作でもヒッチらしい技巧は随所に感じさせてくれます。