2.ぐるぐるさんの熱弁に惹かれて、観てみました。自分のルーツとして、父母にあった悲しい過去を知る旅を通し、再生していく中年男性の物語。企画、キャスティング、丁寧な映像づくりがとてもいいです。少し残念だったのは、悲劇の後の展開がやけに駆け足だったこと。ラストをあまり説明的にしたくなかったりお涙頂戴にしたくない、といった演出意図があったのかもしれませんが、悲劇に対して一緒に心を痛めている観客への配慮として、あとほんの少しでいいから、もう少し強いカタルシスがほしかった。一緒に行った甥の淡い、でも自由な恋について主人公がどんなふうに捉えたかの後日談とか、帰国してから自分の生徒たちに教室でどんな話をしたかの1~2エピソードくらいあってもよかったのでは?と思いました。冒頭、主人公が母の出身地アイルランドへ行くまでの描き方がすごく丁寧でしかし展開がのろかったと思うので、もっとアップテンポにして、終盤にむしろもう少し重点を置いたらよかったのでは? と。あと、不満の1つはまた邦題。内容を反映していないどころか侮辱すらしている配給会社に、怒りが湧いてきます。配給会社の社員は、「THIS IS MY FATHER」という題名に泣かなかったのか? 信じられない。「これは母フィオナの物語でない」とは言わないけど、視点は一貫して父を探す息子のそれ。なのに、映画のヒットを左右するのは女性客だ、というこだわりなんでしょうか? 男性ものとしてじゃ女性客には受けない、女性には甘そうな恋物語として売ったほうがいい、という発想なんでしょうか? 客が少しでも入ればいい、というやり方がまったくもって不誠実です。息子役が誰かと言えば、男くささがプンプンしているジェームズ・カーンですよ。『フィオナ・・』云々というナヨナヨしたイメージとはあまりに違います。ほんとに配給会社って何考えてんでしょ!