63.《ネタバレ》 見た後で色々と考えさせられる映画だが掛け値なしで面白かった。
ストーリーと複線を再構築すると色々な仕掛けがあることがわかる。
2度見ると1度目とはまた違った解釈で正反対の感想を持つ方が多くいると思います。
そういう意味でやはりこの映画はミステリーに分類されるべきなのだろう。
【若さゆえの狂気】
日常の中の些細な不満はゆるやかに狂気へと加速してゆきやがて集団狂気へと昇華する。
そしてその中で生きろと強制している学級制度がさらなる悲劇を生む。
若さが老いを見て見ぬ振りをするように、狂気もまた懺悔する事は無い。
そして若さは狂気と表裏一体。
【人生半ばゆえの倫理観】
純粋無垢な少女も、少年法で守られている中学生達も、教師も親も同じ人間。
いつか通った道でありいつか行く道である。
教師として母としてやりたい事と出来る事は違う。
願えども適わず、されど人間として願わずにはいられない。
社会システムと個の感情との狭間で出した答えが「復習」だった。
そして達観していた主人公が最後にたどり着いた涙と笑顔の境地とは?
【総評】
トータルは9点。その内訳が、ダークな学園ドラマとしては8点、
ミステリーとしては9点、ストーリーテリングの手法が10点、
生徒のキャスティングが6点、松たか子が10点、映像と音楽が7点で、
良輝がゲーテのウェルテルのように純粋に良くがんばったので平均点に+1点。
映像はその世代毎に持つ怠惰的な虚無感や偽善的な日常感や暴力的な透明感に溢れており、
すばらしいのですが若干疲れます。
しかし登場人物に感情移入し過ぎない程度の時間と視点が絶妙。
特に事件の発端となる少女の描き方が必要最小限である事とその告白が無いことにより、
見る者は逆に絶対的な弱者である少女に対する必要十分なだけの儚さと悲しみを覚え、
その存在感を印象付けている点は特筆すべきだろう。
霧の中に見える細い糸を手繰り寄せるとひとつの真実が現れては
また次の糸が現れるように、1つの事件に関係する者が交互に告白する度に
事件の全貌が明らかになり、そしてまた新たな悲劇が生まれる。
しかしその告白の中には観客をミスリードする嘘も織り交ぜられているから少し厄介だ。
真実と嘘が交錯し、何処までが真実で何処からが嘘なのか?
最後にあえて問いたい、先生そんなことして無いですよね?嘘ですよね?
・・・なーんてね。