41.《ネタバレ》 是枝監督らしく、言葉の一つ一つや細かい表情に拘って
丁寧に作り上げたのが良く分かります。特に劇中では重盛
と三隅が面会室のアクリル板を真ん中にして話し合うシーン
が何度も繰り返されたのに対して、最後の面会ではアクリル
板に反射させて二人をダブらせたショットは中々考えたなと
感心しました。
殺人の動機が娘に性的暴行を繰り返したというのは、
月並みで、もう少し他の理由を考えて欲しかったとは
思いましたが、致し方なかったのでしょうか。
土壇場で三隅が殺人を否認したのは咲江の証言をやめさせる
為というのがみそなのでしょうが、あくまで三隅を救いた
い咲江が、証言で「殺したのは自分です」と叫んでしまう
リスクがあったのではないかと思います。
色々な問題がこの映画にこめられていると思いますが、その
一つが現状司法制度への問題提起だったのではないでしょうか。
被告の自白以外にさしたる物証がない場合は、自白の信憑性を
幾重にも固めるのが昨今の裁判ではなかったかと思っていました。
もしこれで三隅が死刑になってしまうのであれば、被告自身
が最初から極刑を望んで無実の罪をかぶって自白することで、
被告自身が容易に自ら判決を操作できてしまうことになり、
司法制度自体が無意味になってしまうのではないかと思うの
ですが。