6.観光名所の絵葉書ショットも題材も、海外マーケット狙いの思惑が見え透いて辛い。
そうなると、赤いワンポイント小道具や、上白石萌音と富司純子が正座しての
正対切り返しや、そこでの富司の台詞中に挟まれる6つの空ショットといった
周防監督の小津趣味も、海外への目配せと勘ぐってもしまう。
常連組の馴れ合いじみた箇所も余計に感じるし、ミュージカル部分も各役者に無理に
割り当てていないか。この作品なら二時間を切るのが妥当と思う。
オープンセットではないだろうが、長谷川博己と上白石が連れ立って歩く橋の横手の柳
が風にそよいでいたり、水遣りのあとか、雨のあとか、石畳が湿って
光を反射していたりといった細やかな仕事は基本に忠実である。
草刈民代が上白石に化粧を施し、竹中直人が初お披露目に同伴するシーンの
厳かな美しさも良いが、何より富司純子のショットには常に敬意が払われている
のも美点だ。