4.《ネタバレ》 同タイトルだけにどうしても2013年版と比較してしまうが、主人公の来歴をオーソドクスに追いかけたあちらの平凡さに対して、
後出しとはいえアーロン・ソーキンのシナリオの卓越が際立っている。
三度の製品発表会、その開幕直前の慌ただしい舞台裏を映画の場とする、挿話の取捨選択・構成が大胆である。
人物は舞台裏をアクティブに動き回り、緩急自在のカット割りと会話劇の中から人物像を炙り出していく。
過去のフラッシュバックは申訳程度に短く挟まれるのみで、映画は現在進行形を貫くが、
1984年、1988年、1998年と、画面のシャープネスを微妙に変化させているような印象もあって、時代と人物の変化を視覚化する工夫がみられる。
2013年版では単に顛末の説明としてある取締役会での解任シーンが、こちらでは窓外の土砂降りの雨が強烈な視覚イメージとして
残るといった具合に、実録性よりも印象的な画作りに優位を置くスタンスも窺がえる。
ラスト、舞台袖に立つ娘と主人公の切返しショットがなかなか良い。