342.《ネタバレ》 巨匠の凄みとボケが同時に味わえる名作中の迷作。いや言わんとすることはなんとなくわかるんですよ。
この映画は確かにスピルバーグの911に対するアンサーだ。文字通り青天の霹靂のカタストロフ。無情に蹂躙される人々。
「あいつらをぶっ殺したいんだよ、行かせてくれよ」と戦いにはやる息子、「気持ちは分かる、だがやめろ」と必死に引きとめる父親。あるいは監督自身。
そして、お互いボロボロに憔悴しつつも、生還した息子と父親は最後に肩を抱きあう。
まァなんとなくわかる。そこまでは。
が、しかし、なぜ例の長男はあんなアホで狂ってらっしゃるんですか。
基本的に彼は(父親と違い)人助けのために動ける性格であり、義憤のために宇宙人に立ち向かおうとするのだが、
ことごとく「今それ言わんでもええやん…?」としか思えないタイミングで興奮し始めるため、ジャージャービンクスよりもうざいのだ。
戦場の真っただ中に裸一貫で突撃した彼は、一体何がしたかったんでしょう。(モブが一斉に戦火に向かって走ってるのも不可解)
これに比べりゃ宇宙人がお腹壊して死んだことなんて微々たる問題ですよ。一応SF的決着だし。
かといって駄作かというと、そうとも言い切れない面もあって。
全編に渦巻く、無邪気ともいえるような旺盛な破壊欲は、ちょっと認めざるをエナイ。
すなわち、スピルバーグの「怪獣映画作りてェ」という欲望が一気に開放されたのがこの映画であると。
恐竜やトラックでは出来なかった大量破壊に,911を踏まえたリアリティを加え人間どもを蹂躙しまくりなわけだから、なかなか良い意味でタチが悪い。
長男の延長線上のキャラと思われるレッドネックっぽいおっちゃんを、主人公が××してしまうシーンも、黒いスピルバーグの面目躍如でした。そこまで手を汚すか!
個人的に中盤から終盤にかけての方が悪夢的でおもしろかった。 が、突然の尻すぼみ感はやはり否めないか。トライポッドもけっこう脆いしもうひと味何か足りない。
初視聴のときは、腰が砕けるようなハッピーエンドと、俺の中でジャージャーをも超えた愚息の衝撃に2度と見るかと思いましたが、再見したら評価上がりました。
次回作を考えると、スピルバーグはちょっとヤバい時期だったかもしれない。しかしやはりこのゴミはもう少し評価されるべきだ。