2.《ネタバレ》 テマティスム的には、色の主題なり、視線劇の充実が語られるのだろう。
デジタル・シャープネスが指向される今時に、この軟調画面の肌理と艶だけとっても「映画」を見た満足感を与えてくれる。
雨滴の乱反射や、窓ガラスの曇り、紫煙などがさらに画面を滲ませて一層味わい深さを増している。
リビングから玄関ドアに向けたカメラポジションが、奥の空間でやり取りする人物をさらに壁ラインでフレーミングする。
屋外からの望遠による二つの窓と、その間を移動しているだろう人物の見えない動き。
それら人物の見え隠れ具合が、こちらの視線を空間の中に自然と引き込んでいく。
こうした絶妙の構図取りもまた素晴らしい。
数ある視線のドラマの中でも、とりわけ極上というべきラストのケイト・ブランシェットの視線と表情は何と形容すべきだろう。
これはもう一度観に行きたい。