11.《ネタバレ》 安っぽい言葉になってしまうが、終演後体が震えた。暫く動悸が激しいままだった。
私は凡人ですが、フレッチャーの考えは良く分かり、また、凡人だからこそ、フレッチャーの生き方が羨ましく思えた。
フレッチャーのやっている事は、現代では「異常」である。それがフレッチャーの言う「現代は甘くなった」という事なのかもしれない。
フレッチャーは音楽に全てを捧げ、高みを目指し続けて来た。次世代の名プレイヤーを育てる事に人生を捧げて来た。
そこにニーマンが現れた。ニーマンは最初、どこにでも居る、現代の大学生そのものであった。
でもフレッチャーは、そんなニーマンに「何か」を感じたのだろうか。そうだとしても、それが何かは分からない。
ニーマンはフレッチャーの与えた課題を次々乗り越えて行く。
しかし、フレッチャーはやり過ぎてしまい、ニーマンは壊れてしまった。
その結果、フレッチャーは大学を追放されてしまう。自分の大事な居場所を奪われたフレッチャー。
フレッチャーは手負いの獣の様に、異常さを増していたのだろう。ニーマンに復讐をする。簡単に叩き潰せると思っていたのだろう。
しかし、皮肉にもニーマンは覚醒してしまった。フレッチャーが求めていた高みへと登り詰めた。
ラスト近く、二人の目が合う。微笑を浮かべている。ニーマンもフレッチャー側の人間になったのだろう。
演奏終了後の事は語られていない。
決して歓喜で手を握り合ったり、抱き合ったりはしないはずである。
何故か、そうであって欲しくないと思ってしまった。