1.《ネタバレ》 コメディということになっているようだが特に笑うところはない。舞台劇のような映画は他にも見たことがあるのでそれ自体はいいとして、この映画に関してはことごとく噛み合わせを外したような展開が非常に苛立たしく、観客に対して答えを迫るような態度も煩わしい。執拗な相対化によって既成秩序をなし崩しに崩壊させていたのは常識に内在する価値を再認識させる意図なのか、あるいは崩壊自体を喜ぶ愉快犯のようなものか。
世界の不幸を放っておいて自分らだけが幸せになっていいのか、というのは、真面目に取れば一つの問いかけかも知れないが、一般論として自分の幸せを犠牲にしてまで不特定多数の他人を幸せにしようなどと考える人間はいない。幸せになれる人間をまず確実に幸せにした上で、その他の部分に対しては「愛は地球を救う」程度にしておくのが現実的であって、既存の枠組みを破壊してしまっては世界が崩壊して終わりである。
最後は完全に羽目を外したパニックホラーになっており、それまで市中に潜伏していたバケモノが正体を露わにして周囲の人間を襲い、被害が郊外から大都市へと拡大していく見通しを示していた。しかし被害者がまた被害者を生むゾンビパターンではなく発生源は一人のため、橋の向こうで鎮圧されて終わりになるのは目に見えている。こういうドタバタのようなものをどこまで真面目に見ればいいのかわからないが、とりあえず堅実に生きようとしている人間には馴染めない世界のようだった。
ちなみにこれを見た動機は題名のインパクト及び黒川芽以である。自分としては黒川芽以が出ていれば何でも見るわけではないが、黒川芽衣が主演だったからこそ見る気になった面もあり、今回は見てあまり得した感じではなかったが、引き続き黒川芽衣には期待していきたい。