11.《ネタバレ》 導入部では、中々スタイリッシュな犯罪ドラマになりそうだと期待させられたのですが……どうもノリ切れない内容でした。
とてつもなくクオリティが低いという訳ではないと思うのですが、何かチグハグなんですよね。
例えば、カーチェイスをCGで描くシーンとか「おっ、これはそういう悪ふざけ演出で楽しませてくれる映画なのか?」と期待したのに、以降はそういうノリがあまり感じられないせいで(あれは意図的な演出ではなく、予算の都合でCGにしただけだったんだなぁ……)と、観ていて落胆させられちゃう訳です。
また、主役のギャング達には特殊な能力があり、ルックスも良くてと、魅力的に描こうとしているのは伝わるのですが、そのやり方が「周りの人間を恰好悪く描いて、相対的に恰好良く見せようとしている」ように思えてしまい、違和感が大きかったですね。
冒頭の警官をからかう件とか、自分達以外を見下している空気が伝わって来て、彼らが単なる「嫌な奴ら」にしか思えないという形。
その結果、馬鹿にされている警官やら他の強盗やらの方が「みっともないけど、必死に頑張っている」感じが伝わって来て応援したくなるものだから、主人公達が見事に強盗を成功させても、観客としては、ちっともカタルシスを得られない。
恐らくは黒幕を徹底的に嫌な奴として描く事で、主人公達を応援させようとしていたとは思うのですが「同じ犯罪者なのに、何で片方だけがさも善人であるかのように扱われているの?」と白けてしまったくらいです。
同監督の「極道めし」は結構楽しめただけに、非常に残念。
恐らく、この監督さんはスタイリッシュな犯罪アクション物などよりも、コメディ、人情物の方が得意なのでは? と思えましたね。
本作においても「象を冷蔵庫に入れる為に必要な、三つの条件は?」というクイズを、シュールに映像化させてしまうセンスなどは良かったです。
劇中で「映画の終わり方に関する演説」が始まると共にスタッフロールを流し、これで終わったと見せかけて、ちょっとだけ続けてみせる辺りも好み。
クイズの答えを伏せたまま終わるような意地悪をせず、最後の最後に、きちんと答え合わせしてくれた事からも、作り手の誠実さが伝わってきました。
一応は仲間であったはずの地道こそが、黒幕の神崎であると本性を曝け出す場面にて口にする
「神崎なんて存在しなかった。いや、地道が存在しなかったのかな?」
という台詞なんかも、あぁ「真実の行方」が元ネタなんだと分かって、ちょっと微笑ましかったですね。
オシャレな恰好良さ、というものは感じられなかったけど、オシャレな面白さの断片のようなものは窺えた一品でした。