1.《ネタバレ》 邦題からドンパチだけの安い戦争映画を予想していたが、違った。パットンの人となりを描く伝記映画だった。粗野だが情誼に厚い根っからの武人が、戦場では幾度も鮮やかな勝利を収めながら、政治的理由で冷遇されて去ってゆく。全体の流れは源義経や木曽義仲の伝承譚にそっくり。この筋書きには、古今東西、人々に訴える何かがあるらしい。だから、淡々とした撮り方で単純な物語をあっさり見せているのに、長さを感じさせない。これがアカデミー賞を取った1970年は、アメリカがベトナム戦争にはまりこんで進退きわまっていた頃。熱帯アジアの泥田で米兵が死んでゆくニュース映像がアメリカのテレビで流れていた時代だ。あるいは『イージーライダー』や『真夜中のカーボーイ』や『ソルジャー・ブルー』といったアメリカンニューシネマの時代。それを思うと、この古くさい映画がどんなニーズに応えたのか分かる。アメリカ大衆の無意識は、ヨーロッパの平原を苦難に耐えつつアメリカ機械化部隊が進撃してナチに占領された都市を解放する、っていう映像を切望していたに違いない。今観ると、古めかしい偉人伝の良さが無くもないが、戦争を扱った現代映画として完全に問題外。