1.《ネタバレ》 17世紀、オランダ。そこでは東洋から持ち込まれた美しい花、チューリップの球根を巡り、富める者も貧しい者も投機に熱中していた。買ってから数日も経てば倍以上の値が付くとあって、皆が全財産をつぎ込むほどの熱狂ぶり。小さな球根は人々の剥き出しの欲望によって、どんどんと危険な水域にまで値を釣り上げていた――。アムステルダムにある小さな孤児院で貧しい生活を送っていたソフィアは、持って生まれた美貌から一回り以上も歳の離れた豪商に見染められ、彼の元に嫁ぐことに。それまでの貧しい生活は一変、彼女は何不自由ない暮らしを手に入れる。だが、そこには愛だけが足りなかった。子供を求める夫の欲求に応えることが出来ず、次第にギクシャクしてゆく夫婦。そんな折、彼女の肖像画を描くためにヤンという若く貧しい画家が雇われる。自分の絵を描いてもらううちに、その情熱的な目をしたヤンという男にソフィアは次第に惹かれてゆく。やがて、二人はとうとう一線を越えてしまうのだった。ソフィアとの新たな生活を夢見るヤンは、資金を稼ぐためにチューリップ投資に目を付ける。そんななか、家の召使の予期せぬ妊娠を知ったソフィアは、とある計画を思いつく……。世界初の経済バブルと言われるオランダのチューリップ投機を背景に、交錯する愛憎の果てに破滅へと向かってゆく男女の姿を描いた歴史ラブ・ロマンス。ディン・デハーンをはじめとする何気に豪華な役者陣共演に惹かれ、今回鑑賞してみました。しっかりとした時代考証に基づいているであろう映像は終始美しく、まるでフェルメールの絵画の世界に入り込んだかのような世界観は見応え充分でした。許されぬ恋に身を焦がすヒロインもその画の力に負けず劣らず美しく、ディン・デハーンとの大胆なラブシーンも官能的でとてもいい。そんな美しい世界と対照をなすかのように描かれる闇の部分――チューリップ熱で身を滅ぼしてゆく人々の浅ましい姿もより画の美しさを強調させることに成功しています。ただ、全体的に演出に雑な部分が散見されるのが本作の残念なところ。細かいところに「?」な部分が多すぎて、いまいち物語に入り込めないのです。チューリップ熱、若く貧しい画家との不倫、召使の赤ちゃんを自分が産んだように画策しようとする主人公、その召使の恋人の失踪、これらの要素が最後までうまく纏まっていきません。なんだかいろいろ詰め込み過ぎて物語の焦点がぼやけてしまっているように感じました。物語の語り手をその召使にしている意義も、正直見出すことが出来ませんでした。映像的にはすこぶる良かっただけに、お話の方がなんとも残念な作品でありました。