1.天職と思い打ち込んでいた仕事。かつて愛していた妻。美しく優しく、理知的な恋人。かけがえのない生き甲斐でありながら、同時に重荷でもあるように感じる幼い息子。それらの間に、主人公ラスは揺れ動く・・。実に、リアルな描写だ。監督は3児の父であり、子育ての苦労も喜びも知っているから描けた、という。産みの親より育ての親、を地でいっていて先が読めてしまうのだが、それでも目を離せないドラマだった。ただ、気になるのは、結局最後まで、なぜ妻が家出をしたのかが、ハッキリしないことである。ラスに責任のない、単なる妻の我侭だけが、幼子を苦しめた原因となると、妻ケイトにまったく共感の余地がない。子供はオモチャじゃないのだ。そのぶん、ベスの魅力がひきたっていたが。ベス役のジョーイ・ローレン・アダムスのいい女っぷりと、子役のボビー・モートに100点あまり日本で話題に上らなかった理由は、やはり、リアルすぎて、「物語」としての華に欠けるところだろうか。ジョン・N・スミス監督は、もともとドキュメンタリータッチな作風の人だからなぁ。