2.《ネタバレ》 「いいお話」では、あると思う。子供たちや脇役の演技も良かった。しかし肝心の主役であるはずの機関車先生。彼は剣道の試合の事故で声を失い、教職から去ろうと考えている。また、臨時教員として赴任した島は、両親が家出のように飛び出した場所でもある、筈なのに、その彼の苦悩とか葛藤とかが映像からほとんど伝わってこない(一応ナレーションや台詞で“説明”はされるけど)。そもそも「口がきけない人間」が主人公であるというのは、往年のサイレント映画でなされたような「微妙な表情やしぐさで心情を表現する」という手法が存分に発揮できるということで、映画作家にとってはいわばチャンスである筈。なのに、この作品ではそうした試みがほとんど見られないどころか、肝心な所で坂口憲二の表情を捉えていないし(一番象徴的なのは主人公が島の若者に因縁をつけられるシーン。ここでは若者に「何ニヤニヤしてんだよ」という台詞を言わせているが、映像は後ろ姿、しかも引いた絵なのだ)、主人公が身振りでコミュニケーションするシーンでは、わざわざ周りの人物に彼の言葉を「解説」させている。これは、坂口憲二の演技があまりにも○○だったのか、それとも監督にあまりやる気がなかったのか、それとも両方か?最後に主人公が子供たちに残す手紙の言葉に「言葉では伝えられない勇気」を貰った、みたいなのがあったけど、「言葉で伝えられないもの」を映像で表現するのが「映画」なんじゃねえのかい!と、思わず画面にツッ込んでしまった。ホントにもお、頼みますよ。