7.《ネタバレ》 時代は不明だが、アメリカン航空という会社がまだ存続している未来である。
設定としては地上の自然環境が全て失われてしまった世界のようで、これは昔の未来予想画で描かれていたように、地球全体が都市化されて地表が人工物で覆われたイメージと思われる。ただ2022年現在の感覚でいえば、今はやりのSDGsにも関連項目があるからにはそうなることは当面ない。
ファンタジックな印象のあるSFだが、見た目としては特に宇宙船のデザインが秀逸で、90年代に現実化した人工生態系「バイオスフィア2」を思わせる複数のドームが、軸線の周囲に別角度で設置されている(6個を6角形に)のがいい。こういうものは日本には作れない。
なお技術的な設定はわからないがエネルギー源は原子力だったのか。最後に設置した電球はいつまで保つのかと思うが、これは永遠だと思うのが観客に期待された鑑賞態度と思っておく。
主人公の思いとして、当初は自分が「森」を守る使命を負った特別な存在と思っていたが、結局は自分もその他人類と同類でしかないことを思い知らされたのではないか。同僚を死なせた罪悪感からか、苛立ってカートを暴走させて腐葉土?をぶちまけてしまったり、最後は大事な「森」の面倒さえ見なくなって荒らしてしまい、僚船から連絡があった時点では一瞬ほっとしたのではと思ったりする。またDroneと言われていた連中にとってもいい仲間とはいえず、主人公にとっての同僚3人と似たようなものだったかも知れない。そのような不完全な生物に「森」を任せられないというのは本人も自覚していたと思われる。
最終的な決断としては、地球緑化計画が実現不可能ならもう主人公の役目は終わっているが、次善の策として「森」を無期限で保存するために、いわば最後の責務として1号に後を託した形と思われる。主人公は海に流す瓶に例えていたが、本当に地球の生態系が完全に失われる間際になれば、こういう方舟的なものを残そうとする人間がいても変でないとは思った(共感可能)。
なお主人公の最後の行動には、同僚に対する贖罪の意味も当然あったと思われる。こうならなくて済むように、現実の地球では自然との共生に向けた努力が現に行われているわけである。結果的にはラピュタ風の終幕(こっちが先)と、今となっては古臭く聞こえるテーマ曲もけっこう心に染みたので悪い点はつけられない。