1.《ネタバレ》 オリジナルは153分だが、フィルム劣化のため119分に編集されてのDVD化。ソ連軍に侵攻されたかつての南樺太や真岡郵便電信局の様子を歴史的視点で描くことより、集団自決した九人の電話交換手に同情する気持ちが強いため、かなりの脚色がある。昭和20年8月20日真岡電信局に勤務した交換手は12名。10名が睡眠薬と青酸カリによる服毒自殺を図り、9名が亡くなった。生存者がいた。遺体は勤務時の姿勢のまま、ヘッドフォンをして電話台に俯せになっていたという。青酸カリの入手経路は不明だが、机の上に置いてあったのを飲んだという証言がある。生存者の中にも所持していたという人もいるので、さほど入手困難なものではなかったようだ。映画では、全員自主的に残留するが、局長に残留要員選定命令が出ていたとする証言もある。劇中、疎開船3隻が留萌沖で国籍不明の潜水艦の攻撃を受け、沈没したと通信を受ける場面があるが、これは22日発生の出来事で明らかな脚色。ソ連の立場はほとんど描かれていない。1945年2月のヤルタ会談で、ドイツ敗戦後90日後(つまり8月9日)のソ連の対日参戦と終戦後の日本の領土・植民地の処理が決定され、南樺太は戦勝権益としてソ連領となると決まった。日本は8月15日に無条件降伏したが、ソ連軍は「8月25日までに南樺太を占領せよ」との命令を受けていて、少なくとも9月2日の降伏調印式までに終了させたい思惑があった。樺太全土を占領できたのは25日。民間の犠牲者は約3,700人。ソ連関係者がこのソ連軍鬼畜映像を見て、激怒したのはむべなること。ソ連関係者から配給会社に横槍が入り、公開は延期、最終的に別の配給会社から当初より大幅に興行規模を縮小しての公開となった。「早すぎる死」と悼む声が多い。街中に艦砲射撃され、上陸したソ連兵から電話交換室にも銃弾が撃ち込まれる状況では逃げ場はなく、ソ連軍から恥ずかしめを受けるといった恐れもあり、いさぎよい死を選んだのは無理からぬことともいえる。日本人には自殺文化、自殺の美学があり、自殺により名誉を守る、責任を果たすといった倫理規範が存在した。お粗末な特撮、ソ連の戦車は自衛隊のものを流用するなど戦闘シーンは迫力がない。砲弾の中、悠然とうどんを食べる少年がいて、頼もしく思っていたが頓死した。逆にきっと食われると予想したうさぎは生き残った。戦争において生と死は紙一重だ。