1.《ネタバレ》 ①叶わなかった「想い」を片時も忘れずに、老女となった今、胸の奥に秘めながら静かに人生の幕を閉じる。というモチーフと、■②「現実と虚構」そして「現在と過去」が錯綜しつつラストを迎える。という大好きなモチーフが2つもありました。■①の「遂げられなかった想い」は「シザーハンズ」や「タイタニック」にも見られるものです。「若さ」「美しさ」というプラスのベクトルの中で輝やかしき瞬間を持ち、それ故に他人の心を揺さぶり、ドラマが生じる。様々な要因によって想いは遂げられず、不本意で永い人生を歩むことになる。いつしか「老い」「衰え」という負のベクトルの中で、その終着点である「死」を迎える。死に逝く彼女の胸に去来するものは、「若さ」「美しさ」に恵まれながらも、「想い」を遂げられなかった運命への悔恨..。しかしこの死の到来によって彼女達は時間や肉体をも超越した“回帰”という方法で「想い」を遂げていくのです。「タイタニック」では舞踏会で彼と再会をし、この映画では黒頭巾によって救出されるのです。ここにおいて「死」は気が遠くなるほどの永い“消化試合”であったこの人生から放たれて、本来あるべき人生を生きるための、「崇高なる儀式」となるのです。■②の「現実と虚構の融合」というモチーフは、「田園に死す」や「陽炎座」、「マトリックス」や「ダークシティ」に共通します。知的な迷宮に身を任す快感と映画の構造的な解を得たときの高揚感は、映像という媒体でこそ得られるものと信じます。■さて本題の「夢みるように眠りたい」は、やっと終了10分前にして「現実と虚構」の急接近で映画が動き始めます。桔梗を探索するうちに、50年前の未完の映画の結末を演じていた、いや、演じさせられていた!という構造的な解に刺激を受け、「虚構・過去」である黒頭巾が探偵によって実体を成し、時空を超えてラストシーンを構築していく。そんな静的なスペクタルに魅せられたのです。「夢みるように眠る = 穏やかな死 → マイナスのベクトルからの開放 → プラスのベクトルを持つ桔梗への“回帰”」の図式の中で、現実において自らの「人生の終焉」を迎え、虚構では「映画の人生を成就」させていくのです。「現実」からも「虚構」からも独立した、映像ならではのラストシーンは、「想い」が叶い、「現実と虚構」「現在と過去」が渾然となった映像的エクスタシーに満ちたものでした。