1.《ネタバレ》 「レオン('94)」には大した感想はなかったものの、作中にこのMGMミュージカルが使われてるのを見て、監督リュック・ベッソンの趣味の良さに感心した記憶がある。そう、最良のジーン・ケリーが見れるという点で後世に残る一本。アスリート的なパワフルなダンスを身上としてる彼、「雨に唄えば('52)」でいえば有名なタイトル・チューンより、机/椅子の上でダンスをする「Moses Supposes(軽〜いドナルド・オコーナーとの対比含めて)」の方が個人的にはよい。そんな彼のアクロバティックなダンスの頂点が、ジャン・レノが目キラッキラさせて見てた「I Like Myself」。後年のダンス文化への影響という意味において、もっともっと評価されるべきなんじゃないのか。シド・チャリシーも良い。もともとバレリーナだったので前作「ブリガドーン('54)」の方が水に合ってるし、アステアと共演した「バンド・ワゴン('53)」も良いけど、彼女個人のパフォーマンスはこっちかな。以上パフォーマンスはYouTubeの「Warner Archive」で観れるから見て頂戴。でね、ここからなんすよ、私の強調したい事は。それは「幸福感の稀薄なミュージカルは作品としての魅力に欠ける」つまりこの作品、個々のパフォーマンスは素晴らしいのだけど流れる雰囲気がもう「ミュージカル、古臭くね」感がありありなんですな。「雨に唄えば」から3年でこの変化はなんなんだろ。冷戦状況下の社会的影響・新興のエンタメ/テレビの隆盛・何よりロックンロール(ビル・ヘイリー「ロック・アラウンド・ザ・クロック」は55年、エルヴィス登場は56年)の出現。時代の趨勢に呑みこまれてしまって抗えない、廃り感を感じさせてしまう点がこの映画の印象を薄くしちゃってんですよね。...だいたいなんで「巴里のアメリカ人('51)」「ブリガドーン」はソフト化されてるのに、この作品は無いのだ、おかしいでしょ。結局アメリカアマゾンでソフト購入しちゃったよ...。話が脱線しましたが、ミュージカル映画における幸福感ってのは結構重要で、最近でもデミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド(2016)」だってS.S.ラージャマウリ「RRR(2022)」にもちゃんとある。観客がダンスの世界に引き込まれるだけの雰囲気作りは大切。 今回レビューの点数は私の想い出補正と個々のダンスに関して、ってことで。長文失礼しました。