2.《ネタバレ》 監督しているのは、デヴィッド・クローネンバーグの息子ブランドン。最近は老いて枯れてきた風のある親父とは違って往年の親父を凌駕するようなグロい作風で、変態の性癖というのは遺伝するとは知らなんだ(笑)。この映画で見せられる殺人シーンのどれもエグいこと言ったらもう、とくにショーン・ビーンのやられ方なんて鉄杭みたいな棒を口に突っ込まれて…(以下自粛)、でもあれで死ななかったというのが信じ難い、人間という生物は思ったよりも頑丈なんですね。“マーダーinc”みたいな殺人請負企業で活躍するヒット・ウーマンがアンドレア・ライズブロー、第三者の脳に寄生するような形で操ってターゲットを仕留めたのちに操られた者を自殺させてオフィスの自分の肉体に戻ってきて任務完了、このシステム自体は『マトリックス』なんかで散々見せられてきた感じで斬新さはない。でもこんな反社企業が活動しているのが独特な世界線なんですね。時代は現代でターゲットが経営しているのはソフト制作企業みたいなんだけど、なんかレトロな雰囲気なんだよな。劇中でスマホもガラケーも誰も使っていない(ワンカットだけ携帯が鳴ったけど)、ヒロインが会社に連絡するのも自宅にある固定電話なんです。現代が舞台の映画でスマホやSNSが登場しないとここまで違和感があるとは、驚かされました。シメントリーを意識した映像や凝ったセットなどは印象に残ります。そして、ヒロインと操られた男の意識が混濁してゆくところのグロさは、これぞクローネンバーグ・ワールド!ヒロインが殺しにやたらと刃物を使って血まみれになるのが、これまたエグいんです。 ラストの展開は、私には正直?でしたが、けっこう印象に残る作品でした。ブランドン君、この調子を貫いて親父を越えていってくれ!