5.《ネタバレ》 此度、日本映画専門チャンネルの伊丹十三監督作品10作品上映の企画で、一通りの作品群を鑑賞(もしくは再鑑賞)する機会を得たのだが、それもいよいよ今作で最後となった。
なんせ亡くなってしまったからね、監督は。
今作はとある宗教団体の関わった殺人現場を目撃した女優(マルタイ)の証言台に立つまでのストーリー。
実際『ミンボーの女』の際、自身がマルタイになった経験からヒントを得た作品のようで、社会問題を取り上げ続けた氏の遺作(…となってしまったテーマ)としてはそれも必然というか、避けては通れないテーマだったのであろう。
とかく日本の社会はタブーみたいなものが厳然と存在し、それに対してマスコミはなんとも機能していない状態で、社会問題として気づきさえしないこともしばしばです。
そんな中、伊丹監督の作品には、エンタテインメント性を保ちつつ根深い諸問題について触れられています。
無難なテーマを扱うことにくらべたら、その労力たるやいかほどのものか想像に難くありません。
しかも今回はカルト教団がテーマともなっており、劇中にもありましたが、その無軌道、無慈悲、身勝手な暴力には辟易とさせられるものがありました。
おそらく夢であろう(そう願います)津川さんのシーンは鮮烈で、無軌道な暴力に対する確固たる信念を感じました。
しかし全10作を観て、どれも本当におもしろかった。
監督ご自身の出した結論の是非はわかりませんが、いちファンとしては新作が観られないことが残念でなりません。