1.《ネタバレ》 シナトラが本当にダメダメなろくでなしを演じています。何度となく「お前はろくでなしだ」という台詞が出てくるのですが、そのたびに大きくうなずき「んだんだ、ほんまもんのろくでなしだべ」と何やら画面に向かって語りかけてしまいます。マイアミに小さなホテルを持っているシナトラは、事業が火の車というのにキャデラックを乗り回し、女の人とウピウピして、ウソと見栄とはったりで固められた人生を歩くダメダメちゃん。いつも借金を作っては地道に商売をしている兄ちゃんに泣きついている。そんな彼には意外なことに最愛の一人息子がいるんだけれど、こいつがまたお父ちゃん大好きのしっかり者。こう書くと、ダメダメ父ちゃんがちゃんと立ち直っていく人情物語なのかと思うでしょ?キャプラだし。それがね、、、シナトラ父ちゃんは自分の行動を反省はしても、どうも立ち直っているとは思えないのですよ。せっかく面白かったのに、ラストのラストで「えっ? 具体的には何も解決されてないじゃん! これで良かったの? うーむ、おさまるところにおさまったとはいえなくないかなぁ」という、中途半端さ。富や名誉、忙しい時間を捨ててゆとりと心の豊かさを取り戻そうというメッセージはキャプラっぽいんだけれど、どうも私には合わない。たぶん一般にきちんとした生活を送って、きちんと計画的な人生を送っている人が見ると心打たれるのでしょうが、私は「そんなもんじゃないでしょう」と、ついつい反発してしまいたくなってしまいます。というわけで、『我が家の楽園』とか『素晴らしき哉、人生』とかで受けたのと同系統の心のもやもやを感じてしまったのでした。また個人的に、セルマ・リッター節があんまり聞けなかったのがちょっと残念でした。