1.《ネタバレ》 ファウスト役のエスタ・エクマンという人は初めてお目にかかりましたが、自分が今まで観てきた映画の出演者の中でも、間違いなく一番のハマリ役というほどの風貌で、この映画に出るためだけに生まれてきたんじゃないかとまで思えてきます。
ストーリーは、悪魔に魂を売り若さを手に入れたファウストが多難の末に元の老人の姿に戻る展開ですが、悪魔に魂を売るきっかけというのが自己満足などではなく世を救いたいという理由からであり、また、若さを手に入れたことによって、ファウストではなく自分が愛した相手に不幸が訪れるというダブルの不条理劇が、一筋縄ではいかない面白さが出ていて良かったと思いました。
前半のあたりで、書物を燃やすシーンやメフィストとの絡みのシーンは非常に迫力に満ちていて見応えがありましたが、それ以降はややトーンが下り調子になってしまったのが今一つといった感じがありましたし、最後のシーンも、出てくる言葉が読めてしまい、ストレートで普遍性のあるストーリーが好きな自分でも、さすがにここだけはクサいなぁと思ってしまいました。〔柳下美恵さんの伴奏付きで鑑賞〕