6.《ネタバレ》 記憶上はオリジナルと同一のクローン人間に感情移入させ、最後に消失することで喪失感を与える脚本だった。
途中まではクローンじゃなくて改造されただけだと思っていたので素直に驚いたのと
最後にクローンが死ぬときは感動した。
感動(=喪失感)を与えるために、視聴者の心の中にクローンの存在感を大きくする必要があり
クローン変化後に家族が戸惑い、受け入れ、家族に尽くすまでの描写に時間を多く費やしていた。
(家族に認められるという欲求以外の)自分の利益を顧みず、子供の危機を救い、家事をする献身性に
みさえが心を打たれたが、同時に視聴者も心を打たれたと言える(みさえは視聴者に近い立ち回りだろうか)
喪失感を与えるプロットが十分に練られている一方で、黒幕の「父親の復権を目論む」というシナリオがかなりおざなりになっており
社会に参画する組織として怪し過ぎたり、事故を起こしたロボット施設への大人からの言及がなかったり
公園で父親と主婦が対立する問題も、最終的に会釈をして済ませていたが和解やお互いの内省を描写する演出が欠けていた。
警視が黒幕で頑固親父ロボットを操るというネタは裏をついていたが
警視の美への拘りと家庭で蔑ろにされたトラウマの関連性が弱かったし
何よりこの問題に野原家もロボとーちゃんも関与せず、黒幕への回答も「かっこ悪い」とピーマンを進んで食べることで済ませていた。
このテーマに本質的に言及するなら、父親側の代弁者と母親側の代弁者を用意して、歩み寄りをする必要があり
それはたとえ子供相手の作品であったとしても、難解な表現にならないよう気を付けなければならないというだけで
両側の代弁者が必要という本質は変わらないはず。
たとえば、サブキャラの段々腹(新米女性警官)に、公園で父親を退ける主婦側の役割を持たせて
当初はやや傲慢な主張をさせながらも主婦側の傲慢さや父親の頑張りに気づき内省する機会を与え
最終決戦でその経験を踏まえた歩み寄った主張をして相手を説得することで「父親の復権を目論む」というテーマを前面に出せる。
さらに、ロボとーちゃんの働きに感化され父親側の頑張りに気付くというシナリオにすることで
野原家やロボとーちゃんとテーマの紐付きが強固なものになる
父親復権を目論む黒幕と父親を蔑ろにする段々腹
→黒幕側の復権計画の発端として家族の繋がりを絶つためにひろしをロボ化
→ロボになっても家族に尽くしたいという家族愛の顕在化として、ロボとーちゃんの家事への励み・救出
→ロボとーちゃんを通じて父親には深い苦労と家族愛があり尊重しなければならないと内省し学ぶ段々腹
→その学びを通じて黒幕を説き伏せる段々腹と、自らの計画が発端となり巡り巡って反発する形で帰ってきた黒幕
もっと踏み込むと、敵幹部の女は「結婚できない嫉妬から子連れ主婦を憎悪いている」する設定にして段々腹と対立するが
ひまわりを守るみえさの姿を通じて反省し段々腹と和解、最終的に黒幕を説得する側に回ると話が収束するし野原家とテーマの関わりが強くできると思った。
問題は97分に収まるかという点と子供も理解できる表現にできるかだが、不可能ではないはず。
子供向けとして笑いを取る場面は数多くあり、
しんのすけが我慢してピーマンを食べるという描写により教育教材的側面を兼ねてた点は良い。