7.《ネタバレ》 ラストにドーンとその題が現れるともう、言葉をなくしてしまいます。
なにかが足りませんので題材の説得力が伝わってこないのです。
それは何かと考えました。
悪い奴・・もっと掘り下げて描いてもよかったのでは?
「天国と地獄」の犯人のような時代の必要悪の否定や理由のない反抗の怖い環境の哀れさ。
そういったある意味犯人=悪人の過去や人間性が足らなかったように思います。
これを観ると政治家や建設業がみんな悪く見えてくる(笑)
もちろんそれは一部であることは承知ですが、親玉の描写が足りない。
過去に心の傷を負うとかトラウマですね、そういうのを絡めるとステレオタイプになる。
けれどそれにしても主役の西秘書の家庭環境や身の上は細かいのに、
影の主役である義父役をこんな時代劇の悪役のような描写だと憎しみが薄い。
観客も感情移入して悪い奴は悪く思いたいのですが・・
途中まで逆に西秘書の方が悪い奴か?と首を傾げたくなるくらい粘着質です。
この主役・・またまた黒澤映画には不可欠な三船さんでしたが、
全く今回は気がつかなかったです。
メガネをかけてすごく若く見え私にはG・ペック日本人版か(苦笑)と見え、
三船さんはセリフが少ないほうが存在感があるなぁと妙なところで感心。
しかし脚本は良く出来ており昔見た「砂の器」とか思い出しました。
復讐は美学とも言われていますがそれはマフィアとかの世界で、
こういう現代サスペンスになると美学とは言えません。
復讐とはノウノウと行き続ける悪を本当に眠らせること。
だからこの映画の後味は悪くちょっと考えます(重い本を読み終えたような)
それでその手の作品を見たあとはしばらくはその気分にひたるのですが、
現実的に気味が悪いのでいいほうに考えたり映画の世界だと忘れようとします。
「天国と地獄」「悪い奴ほどよく眠る」このふたつは外国の監督でいうと、
白黒のときのシドニー・ルメット(十二人の怒れる男の監督)の社会派の世界です。
黒澤監督は本当に白黒映画がうまいと思う。