1.《ネタバレ》 映画を見終った後の観客のそれぞれの足取りが重かったことがこの映画を言い表している。
映画を見た後なのに近くにいたカップルなんて一言もしゃべらずただだまって歩いていただけだし。
陳腐な言い方だが、後味のワルさと何とも言い切れない憂鬱感だけはアカデミー賞級の映画。
一体何を感じ取れば良いのかちょっと整理はつかないけど、骨太で重厚な創りと、俳優陣の演技、映像の綺麗さは誉めることができる。特にラヴシーンの綺麗さは良かった。
あんな警官とのラブシーンにあそこまで綺麗に取る必要があるかはよく分からないが。
個人的に思ったことであるが、ファーストカットとファイナルカットがかぶっている創りにする意味が良く分からん。
あんなファーストカットはほとんど意味がなく、むしろ撮るものは他にあったと思われる。
キングスレーとジェニファーの二人が取り戻したかったモノは何か?
そう考えれば、キングスレーにとっては家族の幸せであり、父親としての威厳とプライドだろう。
一方、ジェニファーにとっては父と兄と暮らした幸せが詰まった想い出である。
その結果からすると、冒頭にはジェニファーの幼少期、父と遊ぶ、幸せな想い出を入れ、キングスレーには訳が分からん木を倒すシーンよりも、イラン時代の家族が幸せで自分の威厳があったシーンを入れるべきではないだろうか。その際はあの家と少し雰囲気が似ている家の必要はあるが。
その方が何故あの二人が必死になる必要があるのかがより明確になると思う。
家族への偽りの人生が招いた悲劇、その結果失ったものは、キングスレーと警官の二つの家族と一つの家…。
家族の幸せは、砂のようにもろく、霧のように掴みづらいものなんだろうか。