1.グレン・グールドというととにかく変人というイメージがあったが、ちょっとそのイメージが変わった。いや、確かに風変わりなんだけど、「変わっている自分が好き」で、わざとそうふるまっていた部分もあったんだなあ、と。それは理解できるし、とても人間らしいと思う。また、人間嫌いで演奏会をやめたと聞いていたが、その前知識も不正確だったようだ。彼が演奏会をやめたのは偶発性や失敗を極端に嫌ったからで、観客が嫌いだからではなかった。集団で目の前にいる聴衆が苦手だっただけで、むしろ美しい音楽を聴き手に届けるためにあえてレコーディングという手段を選んでいた。単なる奇行ではなく、優れた知性で方法論を突き詰め、自らの美意識に忠実であろうとした結果の行動だったのだ。そこにあるのは狂気ではなく、芸術家の情熱だ。グールドは人間離れしていたが、それはけっして非人間的だからではない。その人間性のすべてを音楽に傾けていたからだ。 (ところでこれ、映画ですか? 短すぎてもの足りなくて、それが点数に反映してます)