1.《ネタバレ》 さすがエラリー・クイーン、さすが野村芳太郎と言わざるを得ない。この映画は米国屈指の推理小説家と日本の社会派を代表する監督の二人の出会いから生まれた。
サスペンス要素とともに、愛する男性を巡っての二人の女性の心理描写が見事である。結婚を目前に男に逃げられたにも関わらず、3年経ってもなお愛し続ける女性栗原小巻、男を追いかけ妹になりすました女性松坂慶子、どちらも大変好演である。しかし、私は栗原小巻を褒めたい、彼女が演じた女性の妻紀子は、大詰めで解き明かされるように命をかけた大芝居をうったわけだが、それを彼女は見事なまでにやってのけたと思っている。
この映画では小川真由美や松坂慶子が日本アカデミー賞の候補にあがったらしいが、私は栗原小巻の名前がなぜ候補にもあがらなかったのか、不思議でならない。
不思議といえばもうひとつ、私はアガサ・クリスティの推理小説にはまる前に、エラリー・クイーンにはまったのだが、アガサのの小説がいくつも映画化されているのに、エラリー・クイーンの小説が映画化されないのも不思議でたまらない。
この映画はエラリー・クイーンの小説で、日本で映画化された唯一のもの、それだけに貴重である。
この映画は、映画館、ビデオ、DVDと3回目の鑑賞だったが、何度見てもすばらしい。初めて映画を見たときは、唐突に神崎愛がフルートを演奏したことにびっくりしたが、あとで聞いてみたら本職のフルート演奏家だったとのこと、今だから言える初心者の恥。ついでにもう一つ、この邦題もすばらしい。この邦題ゆえにこの映画がある。