1.森崎東監督の第3作。主演は渥美清でストーリー自体も長い間旅に出ていた主人公が久しぶりに実家に帰ってきて騒動を起こすという完全に「男はつらいよ」シリーズのパターンと似通っており、脇の出演者も「男はつらいよ」シリーズの面々が何人か出ている(太宰久雄、佐藤蛾次郎)が、森崎監督らしいパワフルな(「破壊的な」と言う方が正しいかも。)演出やバイタリティーあふれる癖のある登場人物たちのおかげで「男はつらいよ」シリーズの一作のようでありながらそれとは一味違う映画になっている。森崎監督がこのひとつ前に手がけた「男はつらいよ フーテンの寅」も従来のシリーズとは一味違う映画であったが、ダンプが家に突っ込むシーンの過激さや、独特の下品さなど、本作はより森崎監督らしさが出ていて「フーテンの寅」よりも面白かったし、森崎監督のこういう作風はけっこう好きだったりする。出演者の中ではなんといっても主演の渥美清がすごくイキイキとしているのが嬉しい。やはりこの渥美清という俳優は「ああ声なき友」のようなシリアスすぎる役柄よりもこういう威勢のいい元気な役のほうが似合っているし、こういった喜劇でこそ本来の魅力を最大限に発揮できる俳優なのだと思う。そんな喜劇を演じる渥美清が好きだし、さっき書いたようにこの映画は「男はつらいよ」シリーズとは一味違うのだけれど、それでも渥美清が好きなら、寅さんが好きなら一度は見ておいて損はない映画だと言っておきたい。それにしてもこんなにイキイキとした渥美清を見るのは本当に久しぶりな気がする。渥美清というのは本当に魅力的な喜劇俳優だと改めて思った。